深夜、NHKテレビの『山古志 人が自然をいわたり 自然が人を癒す里山』と題したドキュメンタリー番組を見ました。
10年前の中越地震で甚大な被害を受けた新潟県山古志地区。
その山古志の農家の男性が言いますー。
「自然には勝てない……」
レンズを向けていたカメラマンが思わず呟きます。
「自然には勝てない?」
男性が答えます。
「自然には勝てない! 田の畔を水でやられたら、『やられた!』でおしまい。また、一からやり直すしかない。昔から百姓はそうしたもんだー」
この男性は、10年前のあの地震で息子さんを亡くしているのです。自然には勝てない……。
今、日本が迎えている急激な少子高齢の時代は、自然の一部である人類としての自然現象なのでしょうか。それは日本に限らず、遅かれ早かれ全世界に広がっていく自然現象なのでしょうか。もしもそれが自然のことだとすれば、私たちには勝ち目はないのでしょうか。自然には勝てない……。
Uターン、Iターン、町おこし、村おこし、地域の活性化、……、それは私たちには勝ち目のない戦いなのでしょうか。そして、人口急減、東京一極集中、過疎化、限界集落、地方消滅、……。果たして、私たちは遥かな昔に戻って、また一から、やり直すしかないのでしょうか。
御嶽山の噴火によって亡くなった方々。ほんの数分前までは自然を全身で満喫していたのに、わずか数分ののちにはその自然に命を持っていかれた方々。その無念さを思います。
自然には勝てない……。しかし、そうだとしても、私たちは自然からしてみれば卑小な存在ですが、自然をいたわり、そして自然に癒されて、営々と、これからも生きていくのです。
それはあたかも知的障害者とともに生きていくのと同じです。私たちは知的障害者に寄り添い、いたわり、そして知的障害者に癒されて、ともに営々と、これからも生きていくのです。それが私たちの命題なのです。