1日早い年頭所感 「小さなひっかかりを共有しよう」

2015年12月31日 | 日記・エッセイ・コラム

謹んで新年のお慶びを申し上げます
 人はだれでも社会とのつながりを求めています。社会に役立つとか立たないとかのずっと手前で、社会の中に自分の居場所を無意識の内に求めています。私たちはさつき園で利用者にそれを保障するのです。それがさつき園の使命の一つと思います。虐待などもってのほかです。
 だから私たちは利用者を毎日よく見て、利用者の小さな変化、小さな動きに注意するのです。
「あっ、昨日と何か違う」「ん、いつもの○○さんの雰囲気ではないぞ」「どことなく表情が硬いように思うが……」
 その、私たちの小さなひっかかりを、「まあいいか」と投げ捨てるのではなく、障害者支援のプロとして、職員間で共有し、「何故だろうか」「どう思いますか」と、お互い同士で問うことが、支援の基本と思います。そのためには日ごろの利用者をよく知っておくことが大切です。そして、その努力が利用者に「ここは自分の居場所だ」という安心感をもたらすのです。
 目の前の利用者から私たちが学ぶことはたくさんあります。利用者よりも学説や論文や○○法なる技術を後生大事にしていては、利用者の心は見えません。今年の課題です。


― お知らせ ―
 不具合のため、一部の方々からのアクセスが不通になっておりまして、長くご迷惑をおかけ致しておりましたさつき園のホームページの改修をこのたびようやく終えました。この手のことは全く不得手ですので、すこぶる往生しました。
 アクセス方法は以下の2通りです。お試しください。
  1)さつき園 障害福祉サービス事業所 周防大島町 山口県 ⇒ 検索 
  2)satukisatuki1987.com ⇒ 検索

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天真爛漫の人生

2015年12月24日 | 日記・エッセイ・コラム

 以前、○○さんはさつき園に通所していました。
 その後、10数年前に近隣に入所の施設が出来たのを機にそちらに移っていきました。
 先日、その○○さんが亡くなったとの知らせがありました。
 さつき園に通っていたころ、お父さんが不慮の事故で亡くなられ、その後はお母さんと二人暮らしで、元気にさつき園に通ってくれていました。
 お母さんはとても控えめで、いつも穏やかな話しぶりの方でした。
 ○○さんは、
「おまえは家はどこかぁー」「わしゃ、□□(地区の名称)ど」
と、会う人ごとにそう聞いて回るのが癖でした。私もさつき園に勤め始めたころにそう聞かれた記憶があります。
 女性でも小柄なほうの○○さんは夏でもいつもモコモコとたくさんの着物を重ね着していました。
 ある日のことです。
 たった今、さつき園が終わって送迎便で家まで送っていったのにもうさつき園に戻って来ている、ということがありました。
「ありゃ、○○さん、あんたぁどうしたんかね。またさつき園に来たんかね」と職員が問うと、
「おー、わしゃー歩いて来たんど」と平気な顔で言うのです。
 いやいや、そんなに簡単に歩いて来られるような距離ではありません。職員みな、びっくりしたことを思い出します。
 小雨降る中、車で○○さんのお通夜に行きました。
 お母さんも亡くなられており、○○さんには兄弟姉妹もおられないので、親戚の方が成年後見人をされておられ、ご葬儀のお世話もされているということでした。
 祭壇の○○さんの遺影は、白い帽子(ハット)をかぶった○○さんが少し微笑み加減に右手でVサインをしています。今にも、「「おまえは家はどこかぁー」「わしゃ、□□(地区の名称)ど」と言いそうな表情です。
 読経のあと、○○さんをよく知るそのご住職は、
 「欲もなく、怒りもなく、愚痴も言わず。○○さんはそんな方でした」と、初めて○○さんの家を訪れた時の話をされます。
 ○○さんにまつわるご住職のお話をお聞きしながら、私は、
 「まったくその通り。○○さんは茶目っ気たっぷりで、周りの人みんなに愛され、可愛がられ、人を困らせることはなく、恩着せがましくもなく、お母さんを慕い、『あはは、あはは』と笑う人だった。この世に生まれて、欲なく、怒りなく、愚痴もなく。これぞ正真正銘の天真爛漫の人生なのだ」と得心していました。
 欲なく、怒りなく、愚痴もなく、○○さん67歳。
 「○○さん、さようなら。ありがとうございました。私たちは本当はあなたのように生きたいのですよ」と、遺影に語りかけます。
 通夜の始まる前に棺の中の○○さんにお会いしました。やっぱり「おまえは家はどこかぁー」「わしゃ、□□(地区の名称)ど」と、今にも笑いかけながら言い出しそうな○○さんでした。
 天真爛漫の人生。この世に生まれたことそのことが、意味のある、また価値のある人生なのです。
 通夜に参列した私の心は涙で濡れることはなく、「○○さん、あっぱれですね」と晴れやかでありました。 


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異論 金子みすゞ

2015年12月14日 | 日記・エッセイ・コラム

 金子みすゞの詩の『わたしと小鳥と鈴と』についての異論。
 みなさんすでにご存知の通り、その詩で金子みすゞは「みんなちがってみんないい」と詠っています。  
 けれど、『わたしと小鳥と鈴と』の中で感情を持っているのは「わたし」(人間)だけです。
 小鳥や鈴にとって、「みんなちがってみんないい」などの言語表現は意味のないこと。乱暴に言えば、そんなことなどどうでもいいことです。知性、感性がないのですから。
 感情を持たない小鳥や鈴と、感情を持つ人間を一緒に見ることは出来ないでしょう。
 それを、障害者問題に当てはめて、したり顔で「みんなちがってみんないい」と言い募るの人たちがいますが、いかがなものでしょうか。人は、どんなに障害があろうが、なかろうが、それぞれに固有の価値があって、違っていてもいいんだよ……。
 果たして、そんなことで障害者問題は、そして差別や偏見の問題は、解決に向かうのでしょうか。
 そこには、見た目や言動の違いが偏見や差別を生んでいるのが私たちの人間社会だ、という視力と感度がありません。 
 私たち人類は多重の、そして多面の感情を持っているために、その長い歴史の中でお互いに対する差別や偏見を不可避的に抱え込んできました。人間は自分と他人を比べて、他人が自分よりもわずかなりとも劣っていると思われるところを探し出し、陰に陽に蔑み、憐れみ、自分の方が優れている、この社会での価値がある、と思いたいのです。そうせざるを得ないところで精神の安定を図っているのです。私たちは己の心の中をよく見るがいいのです。
 人間の感情には、根深く、他人に対する優越感と劣等感が混在しています。そうした感情の複雑な動きが、私たち人類の価値観を形成してきました。そのことから目を逸らすことなく、問題は提起されねばなりません。
 自分と他人とを比較した時、見た目や言動に違いや差を見つけ、そこにわずかなりとも他人に対する優越感が持てないと、己を屹立させられないのが私たち人間、私たち人類。しかし、それによって傷つき、倒れていく「みんな」の中に入れない人間、人類もいるのです。また「みんな」と同じになりたい、と必死に努力している人間もいるのです。「みんな」に近づくために、その違いや差を埋めるために、人知れず悔し涙を流しながら明日を夢見る人間もいます。けれど、差別や偏見は<個>の力では解決出来ません。 
 人類が長年にわたって形成し、保持してきた価値観。その既成の価値観を転換して、新しい価値観を創造することは、人間・人類に感情というものが形成されてきた膨大な時の積み重なりへの挑戦です。
 それは福祉の命題。それが福祉の命題なのです。ことに障害者福祉の命題なのです。
 この詩の「みんなちがってみんないい」は人口に膾炙されているような意味を持つのではないのではないか。作者金子みすゞがここで詠いたかったことはもっと別のことだったのではないのか、という思いもします。
 私たちの人類社会において「みんなちがってみんないい」という表現は、いかに「詩」としての表現であっても、わずかなりといえども障害者福祉に携わる者としては、「そうですね」と言って受け容れるには、あまりに無防備と思える表現なのです。
 みなさんのご意見をお聞かせいただければ有り難いです。



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マエケン

2015年12月08日 | 日記・エッセイ・コラム

 たいへんです。朝から○○さんが荒れています。
 荒れたまま園長室に顔を出したかと思うと、興奮した大きな声で、
「マエケン イクナ イカンホウガ エエ!」
「イクナ イクナ マエケン イカンホウガ エエ!」と、繰り返します。
 今年の夏、一年振りにさつき園に会いに来てくれた東海地方に住むお兄さんから、大ファンのプロ野球広島東洋カープのエース前田健太投手・背番号18のユニフォームをプレゼントされた○○さん。その時のうれしそうな顔は職員みんなが知っています。
 その大ファンのマエケン(前田健太・マエダケンタ)が以前から希望していたアメリカ大リーグへの挑戦をカープ球団が了承したのです。
 大好きなマエケンがカープを出てアメリカに行くことに反対する○○さん。
 両の目を大きく見開いて、興奮のあまりに声は少し震えています。
「えーじゃー。マエケンも黒田(博樹・広島カープ投手)みたいにアメリカに行って活躍したいんよ。応援しちゃれよ」と私。
「イケン。イカンホウガ エエ。マエケン イクナ」もう、止まりません。
 廊下に出ても、繰り返すマエケンへの思い。
 久しぶりに気合の入った○○さんを見ました。
 マエケンよ。頼むから頑張ってくれよ。君の知らない所で、君の熱烈なファンは君のことを本当に心配しているよ。
 おーい、マエケンよ。聞こえているか―。この春、日本球界に復帰してくれた黒田のように、君もアメリカで大活躍してくれよー!!
 ○○さんの気持ちに押されて、マエケンの行く大リーグの球団がどこになろうとも、さつき園も応援するぞ。

 ★ 11月16日(月)のブログで皆さん出しましたなぞなぞの答えをお知らせするのを忘れておりました。
   なぞなぞ 孫とおじいさんがするあそびはなぁーに?
   こたえ  ソフトボール(祖父とボール)
   なあーんだ、ってか!?


 具合のため、一部の方々からのアクセスが不通になっておりまして、長くご迷惑をおかけ致しておりましたさつき園のホームページの改修をこのたびようやく終えました。この手のことは全く不得手ですので、すこぶる往生しました。
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第27回山口県知的障がい施設福祉振興大会 会長あいさつ

2015年12月04日 | 日記・エッセイ・コラム

 今回は私がその団体の責任者(会長)をさせていただいております一般財団法人山口県知的障害者福祉協会主催の標記の振興大会(平成27年11月20日・金 山口県光市 光市民ホール)での冒頭の会長あいさつを掲載します。
 今年5月末に発覚した私たちの会員事業所での利用者虐待事件。それに対し、人権・倫理委員会立ち上げ、事件の検証、会員施設事業所の全職員に対するアンケート調査等々、今日まで私たちが取り組んできて感じたこと、思ったことをストレートにその挨拶に込めました。
 年末のお忙しい折ではありますが、お読みいただければ幸甚です。よろしくお願いします。


『第27回山口県知的障がい施設福祉振興大会 会長あいさつ』                          
 みなさん、おはようございます。福祉協会会長の古川と申します。本日はようこそご参加いただきました。

 みなさん、どうして施設職員は利用者を虐待するのでしょうか。「どうしたって虐待はなくならないよ」という声もありますが、みなさんはどう思われますか。施設職員による利用者虐待はなくなりませんか。どうして、利用者虐待はなくならないと思われますか。

 施設職員諸君。みなさんは利用者虐待は自分には関係のないことだ、と思ってはいませんか。あれは一部の職員のことだ、と自分をごまかしてはいませんか。私たちの社会には、虐待する人間と虐待しない人間の2種類の人間がいるわけではありません。その状況にはまれば、人は誰だって、私も、あなたも人を虐待してしまうのです。人間の関係性とはそういうものなのです。私たちは、他の人間のするどんなことからも免れていることはないのです。その状況にはまれば、ほかの人間がすることは、私たちもするのです。それは虐待も同じです。
 自分だけはそんなことはしない、と言う人は、人間の存在には「不可避な関係性」があると言うことが、見えていないのです。私たちは、人間の在り方とはそういうものだ、ということを認めることから始めなければなりません。
だから、虐待問題は、あなたがそして私が、主体的に受け止めるべきものなのです。
 そしてその時、私を押しとどめるものは何か。いったい何が、私の虐待行為を押しとどめるのか、と考える。それは私の経験か、知識か、性格か、あるいは利用者との信頼関係か、それとも使命感か、倫理観か、障害者観か、福祉観か。あるいは組織の力か、人間関係か、それとも誰かとの固い約束、でしょうか……。いったい何が、私から虐待を遠ざけ、虐待を押しとどめさせるのでしょうか。

 今年のこの振興大会は、ご案内のように障害者福祉の原点に触れ、今一度、私たちの在り方を顧みて、将来を目指す大会としました。はるばる滋賀県から齋藤昭さん(社会福祉法人大木会理事長)をお迎えし、「この子らを世の光に」の言葉を実践された糸賀一雄さんのお話をお聞きし、意見交換会へご出席をいただきます。私たちは先達に学び、今を見つめ直し、そして将来を目指したいと思います。
「何をいまさら、糸賀一雄か」と思われる向きもありましょう。しかし、そういう方にも是非、齋藤さんのお話をお聞きいただきたい。
 この場で多くは語れませんが、私ども山口県知的障害者福祉協会の人権・倫理委員会がこの8月に実施した、協会内の会員施設の職員全員を対象とした、利用者虐待に関するアンケート調査の自由記述回答欄には、たとえば、「こんなアンケートが、今更、何の役に立つのか」という声や、「施設長や上司やベテラン職員に意見が言えない職場環境です」という職員の声もあります。

 みんなで考えよう。そう、利用者への虐待防止・根絶に向けて、みんなで考えましょう。施設長以下、組織を挙げて、障害者福祉に携わる職員みんなで考えよう。保護者の方々も一緒に考えましょう。
 今日のこの振興大会は、そういう大会なのです。

 本日の大会には、県知事、光市長さんを始めとして多くのご来賓の方々にお越しいただいております。会場には600人を超える参加者(施設・事業所職員、その利用者、保護者の方々、ボランティアの方々、そして、地元の光市の県会議員の方々、市会議員の方々、市の福祉保健部長さん、市社会福祉協議会の理事の方々、市の各地区社会福祉協議会の方々、学校教育関係の方、防府市の社会福祉法人の方、障害福祉事業所の方々など、地元の福祉、教育を支える方々)にもご参加いただいております。
 みなさま、本日は誠にありがとうございます。ほんとにうれしいです。時間の許す限り、ご参加いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 また、この大会のために光市、及び光市社会福祉協議会からは貴重な助成金をいただいております。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。

 私どもの山口県知的障害者福祉協会は昭和41年2月に設立され、来年には創立50周年を迎えようとしております。そのような記念すべき年を目前にして、このような大会を開催することについては、会長として、私は内心忸怩たる思いがあります。しかし、それが私たちの試練ならば、私たちはその試練を、利用者の豊かな人生を実現するために、上も下もなく、力を併せて、一丸となって、乗り越えなければなりません。
 本日ご参加のみなさま、どうかお力をお貸しください。私たちは私たちに課せられた使命と、私たちの志を胸に、この試練を乗り越えたいと思います。
 みなさま、本日はこの振興大会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 今日一日、どうぞ、最後までよろしくお願いいたします。
 以上、福祉協会会長としてのごあいさつといたします。ありがとうございました。        <了>

 

    不具合のため、一部の方々からのアクセスが不通になっておりまして、長くご迷惑をおかけ致しておりましたさつき園のホームページの改修をこのたびようやく終えました。この手のことは全く不得手ですので、すこぶる往生しました。
 アクセス方法は以下の2通りです。お試しください。
  1)さつき園 障害福祉サービス事業所 周防大島町 山口県 ⇒ 検索 
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