会議に出るために、いつものように車で山口市に出張した。ところが、不覚にも途中で食べた昼食の弁当のおかずの魚の小骨がのどに刺さってしまった。ご飯を丸のみしてみたが取れない。指を突っ込んで取ろうとしたが無理。声を出すと痛み、首を右に曲げると痛み、つばを飲み込むと痛む。涙が出てくる。まいった!
とにかく車を走らせて会場に向かう。さつき園の関係する団体の事務局に病院を調べてもらった。悪いことに今日は木曜日。大概の病院は午後は休診だ。「ここなら」と紹介してもらった○○病院に行くと、何とそこも休診だった。やむなく、そのまま会議に臨んだ。発言すると痛い。お茶を飲んで何とかしようとしたが、効果なし。
話は、午後1時過ぎに入ったその○○病院でのこと。「申し訳ありません。本日の受け付けは終了いたしました。しかも当病院は本日は午後も休診です」と受付の女性。「えー、まいったなあー」と私。しかしその受付の女性は「少しお待ちください」と、すぐに背後の書棚にあるクリアブックを引き寄せて、調べ始めた。『耳鼻咽喉科』と背表紙に書いてある。その中のページをめくって、「この近辺で、本日午後診察をしている耳鼻咽喉科の病院はこの△△病院1か所だけです。それもあいにく午後の診察は3時からです」そう言って、その△△病院の場所や診察時間が印刷されたA4版の資料1枚を渡してくれた。彼女の手元のクリアブックのそのページを見ると、その同じ資料は何枚かコピーされてビニール様の袋の中に納められていた。
ふつうなら、元資料だけがファイルされていて、必要な時にそれをコピーして受付で配るところだろう。それがすでに何枚かがコピーされており、すぐに必要な人に渡せるようになっているのだ。その姿勢、心がけ、準備の良さに私は内心驚いた。受付を利用する人たちへの配慮が利いている。
午後4時前、会議が終了した。県庁への用を済ませ、すぐに△△病院へ向かったのは言うまでもない。「のどの奥の方だとここでは無理ですよ」と脅かされた。が、その若い院長先生が刺さっていた1㎝ほどの骨を取って見せてくれたときは、彼が神様に見えたことだった!?
利用する人への配慮を利かせること、それはセンスと想像力と修練の結果だ。1㎝ほどの魚の小骨1本がいろいろな体験をさせてくれた1日だった。