山口の風に……

2011年10月27日 | 日記・エッセイ・コラム

『おいでませ!山口国体』に続き、24日、『おいでませ!山口大会』(全国障害者スポーツ大会)が無事閉幕しました。

その山口大会ではキララ博記念公園内の会場でフライングディスク競技が行われました。私はそのディスタンス(いかに遠くまでディスクを飛ばすかを競う種目)の表彰式でのメダル授与の役を仰せつかった一人でした。

広い芝生のグラウンドで、全国各地からの参加選手が47組に分かれて(1組6人~8人)競技が行われます。身体障害、知的障害など多くの障害者が日頃の練習の成果を競います。

各組ごとに競技結果が集計されて、その組ごとに金・銀・銅が決まります。表彰式では3位までの記録がアナウンスされたあと、それぞれの選手の首にメダルをかけ、健闘をたたえ、記念品を渡すのです。

そのあと、各組ごとに金メダル選手へのインタビューが行われました。

何組目かの表彰式が終わった後、その組の金メダリストへのインタビューの時のことです。

「金メダルおめでとうございます。新記録が出ました。今のお気持ちをお聞かせ下さい」という質問に、金メダルを首にかけたその彼はこう答えたのです。

「山口の風に感謝します!」

その場にいて、その言葉を聞いた私たちは、皆一斉に「おー」と歓声を上げ、思わず大きな拍手を送っていました。

そこには、今回の全国障害者スポーツ大会の開催県である山口県へのお礼の気持ちがこもり、そして風という自然に対する畏敬の念を示し、金メダルを取っても自分の力を誇示せず、常に謙虚さを忘れないその人の姿勢が見事に表現されていると思えたのです。しかも、屋外で行われるフライングディスクという競技は風を巧みに利用することも大事な技術の一つです。そういうこともあって、これはフライングディスク競技ならではの感想でもあります。見事な言葉でした。

今、私を含めて私の周りに、今の自分の置かれた立場をしっかり踏まえて、これほどの自然認識と自己表現とができる人がいるでしょうか。常に周囲に感謝し、自然への畏敬の念をもち、自己を顕示することよりも謙虚にある精神。

「山口の風に感謝します!」

この一言で、私には忘れられない瞬間、忘れられない大会となりました。

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日常を取り戻すこと

2011年10月19日 | 日記・エッセイ・コラム

 お久しぶりです。

 ご無沙汰している間に「おいでませ!山口国体」も終わりました。(22日からは全国障害者スポーツ大会「おいでませ!山口大会」が始まります)

 3月11日からすでに7ヵ月が経ちました。

遅々として進まぬ被災地復興。そして繰り返し発せられる「被災地の方々に元気を与えたい!」というコメント。

被災された方々へー。

敢えて申し上げたい。「復興は自らが起ち上がることでしか成されない」そう覚悟を決められてはどうでしょうか、と。

また、日常を取り戻すことが依然として厳しい状況であるにもかかわらず、「被災地の方々に元気を与えたい!」という様々な形での押し付けに、「元気をいただきました」とやさしい笑顔でお応えいただくことに、胸が痛みます。

おのれの発言や行為が他人の辛抱強さとやさしさに寄りかかることで、辛うじて体をなしているのだと気づかないおこがましさはどうでしょう。その結果、被災された方々は二重に耐えることを強いられているのです。

こんなとき私たちにできることは、黙って私たち自身の日常を懸命に生きることしかありません。日常を取り戻そうとする者はおのれの日常を黙々と生きる者に無言のうちに共鳴し、元気と勇気を奮い立たせ、失った日常を取り戻すきつさや辛さを試練として乗り越えるのです。

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思わず笑ってしまった会話

2011年10月03日 | 日記・エッセイ・コラム

その1

先週のある日こと。朝、園長室に顔を出した○○さん。あいさつもそこそこに、「昨日の広島・中日はどうじゃった?」と聞いてきました。

「引き分け、引き分け」と私。

「引き分け!?」と聞き直す○○さん。

「うん、引き分け」と私。

「引き分けかぁー」と○○さん。

「うん、引き分けじゃー」と私。

すると○○さん、「どっちも引き分け?」と、きた。

「うっ!? そう、どっちも引き分けじゃー」

私、一瞬、返答に詰まってしまいそうになりました。

その2

先週の土曜日(10月1日)、島根県出雲市で第51回中国地区知的障害関係施設親善球技大会が開かれました。立場上、その大会に主催者側の一人として出かけてきました。

島根、鳥取、岡山、広島、そして山口の5県から選手が集まって、ソフトボール、フットベースボール、バドミントン、卓球、フライングディスク、そしてボウリングの6種類の競技を行います。

各競技を見て回っていたのですが、山口県代表と鳥取県代表が対戦しているフットベースボールを観戦していた時のことです。

試合は4回まで進んで、得点は11対6で山口県チームが負けていました。

ちょうど山口県チームのベンチのすぐ近くで応援しながら観戦していたので、ベンチでの会話がよく聞こえます。と、山口県チームの攻撃の時にベンチにいたある選手が隣りにいた選手にこうたずねました。

「あと何点取らんにゃいけんかねぇ?」

11対6ですので、聞かれた選手が引き算ができれば「あと5点取れば同点じゃ」と答えるだろうし、残念ながら、もし引き算ができなければ「よう分からん」とか何とか答えるだろうな、と思いながら、私もその返事を待つともなく待っていました。

ところが聞かれた彼の答えは予想したそのどちらでもなく、思わず「うまいっ!!」とうなってしまう、いい答えだったのです。

「あと何点取らんにゃいけんかねぇ?」と聞かれて、隣りの彼はこう答えたのです。

「いっぱい!!」

そうです。11対6で負けているので、いっぱい点を取らなくてはいけないのです。何という見事な答えでしょう。聞いた私は思わず息を殺して、一人、笑っていました。

出雲では神あり月の10月。その秋晴れの空の下での親善球技大会、万歳!!です。

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