テレビで春の選抜高校野球を見た。
対戦していたチームの名前は忘れたが、こんな場面があった。
得点は5対2。9回裏、1死ランナー2塁1塁。ホームランが出れば同点のチャンスだ。打席のバッターが1,2塁間を抜ける浅いライト前ヒットを打った。それは、2塁ランナーがホームを狙うには浅いと思われた打球だった。が、何と2塁ランナーは3塁を蹴ってホームを狙ったのだ。
えっ!? 最終回で、点差は3点。しかもヒットとはいえ、浅いライト前ヒットだ。ここはランナーを溜めて、相手ピッチャーやチームにプレッシャーをかける場面だろうに……。
案の定、2塁ランナーが3塁を回ったところでライトはゴロを捕球し、すでにバックホーム体勢に入っている。結果は、キャッチャーへの好返球でホームベースのかなり手前でタッチアウトである。
問題はこの時、3塁ベースコーチはどう判断し、どういう指示を2塁ランナーに与えたか、だ。
残念ながらテレビ画面にそれは映ってはいなかったが、おそらくホーム突入を指示していたのだろう。なぜなら、3塁に向かう2塁ランナーはライト前まで転がった打球の行方を最後まで確認しながら走ることなど出来ないから、ホームへ突っ込むかどうかの判断は3塁ベースコーチに任せるしかないからだ。
試合はその後、そのチームがチャンスをものにできずに5対2のままでゲームセットとなった。
高校野球とはいえ、3塁ベースコーチの責任は重い。
その一瞬の判断ミスがそのゲームの行方を左右する。控え選手の中の誰かがコーチスボックスに立っていればいいというものではない。
その日の風の向きや強さ、グラウンドの固さやその状態、相手チームの内外野手の守備力、足の速さや肩の強さの見極め。そして、目の前の局面の的確な状況把握と次に予想されるゲーム展開への準備。次打者と塁上のランナーへの監督の指示の伝達……。今はあまり見かけなくなったが、以前、プロ野球では監督自らが3塁のコ―チスボックスに立っていた例もあるくらいだ。それくらい3塁ベースコーチの責任は重いのだ。
刻々と変わる局面に応じて下す一瞬一瞬の判断には、その人の日頃の野球に対する取組みの姿勢が表出する。
果たして、私たちはおのれの世界や組織の中で、日頃からそういう修練を積んでいるだろうか?