蝉の感触

2022年07月24日 | 日記・エッセイ・コラム

 午前中から陽射しの強い日。

 お使いに行こうとして玄関のドアを開けたのです。

 すると、玄関先にアブラゼミが白っぽいお腹を見せてひっくり返っていました。目にした瞬間、「あー、この毎日の異常な暑さにやられて、蝉もまいったか」と思ったことでした。

 動物はあまり得意ではないのです。虫もそうなのです。でも、小さい頃から慣れ親しんだせいか、トンボと蝉は例外的に触れます。

 なので、蝉はひっくり返って動かないので、もう死んでいると思い庭のどこかに埋めてやろうと、右手の親指と人差し指で蝉を挟み込むようにして摘まもうとしました。

 するとその瞬間、蝉のあの細い足が数本、弱々しく動いて人差し指に絡まってきたのです。

 驚いて、「おっ、生きとるじゃー」と独りごちると同時に、蝉は激しく羽ばたき、道路を隔てた斜向かいの家の庭に育つ背の低い木に向かって、まっすぐに飛んで行きました。まるで最後の力を振り絞って、というように。

 蝉は向かって行った先の、その木の枝か何かに留まるかして、「ジィー」とひと声鳴きました。

 ………。

 もしも、あのタイミングで玄関のドアを開けなかったら。そして、もしも手に取ろうとしなかったら、あの蝉はどうなっていたのでしょうか。

 「遅かれ早かれ……」と思いもしますが、あの時の指に残るわずかな感触が、今でも私にあの蝉を愛おしくさせるのです。

 午前中から暑い陽射しの日のことでした。

 

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ある疑問

2022年07月10日 | 日記・エッセイ・コラム

 安倍(晋三)さんの死は驚きです。しかも、それはあっという間に、全世界に知れ渡りました。もうそれが当たり前の時代なんですね。それにしても警備は緩かったですね。

 しかし、どうして一発目のドンという爆発音のあと、安倍さんは驚いてしゃがむなり、身を守ろうとする姿勢を取らなかったのか、と疑問が残ります。

 「あってはならない」とか「民主主義を封殺することは赦されない」などという言葉が飛び交っているようですが、これまでのテレビや新聞、ラジオ、ネットなどの報道では、政治家や評論家、報道関係者や一般人等の誰一人からも、「安倍さんの死は私たちにも責任がある」といった認識や思いを込めた発言は聞かれません。安倍さんが死に至ったのは、私たちとは無関係の他人事なのか?

 そういう思いもあって、私には、あの瞬間の安倍さんの行動が悔やまれるのです。

 

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