蝿一匹

2013年08月20日 | 映画

 

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車を運転中は、車内にいる例えば蝿一匹、あるいは蚊一匹が命取りになりかねません。<o:p></o:p>

 

18日に起きた長野県でのマイクロバス転落事故は、携帯ラジオが原因だということです。運転手が運転中に床に落ちた携帯ラジオが気になって運転が疎かになり、わき見運転でハンドル操作を誤り、マイクロバスはカーブを曲がり切れずに崖下に転落したとのことでした。<o:p></o:p>

 

この事故で一人の方が亡くなられました。<o:p></o:p>

 

何ということか! 携帯ラジオが原因で命を殺(と)られたのではたまりません。<o:p></o:p>

 

しかし、携帯ラジオに限らず、車を運転中に、例えば個人の生死というようなものとは全く無関係のように存在する一匹の蝿、一匹の蚊といったような小さな存在、あるいはほんの些細な事象に気を取られた結果、ハンドル操作を誤って事故を起こして亡くなった人もあろうし、なおむごいことに、その巻き添えをくらって命を殺られた人も、おそらく多数おられることでしょう。<o:p></o:p>

 

蝿一匹が原因で命を殺られたのでは、たまったものではありません。<o:p></o:p>

 

横光利一という作家の小説に『蠅』というのがあります。<o:p></o:p>

 

その小説には一匹の蠅が登場します。その蠅は今回の長野県でのマイクロバス転落事故の事故原因であるといわれている携帯ラジオのように、小説の中で起こる馬車の転落事故の原因となっているわけではありませんが、転落直前まで乗り合わせた人たちと同じように馬車に揺られていたのです。が、転落の瞬間に飛び上がっていた蠅は、さまざまな事情を抱えた人たちを乗せた馬車が崖の下に転落したあと、『ただひとり、悠々と青空の中を飛んでいった』のです。<o:p></o:p>

 

この蠅の目には、人間の生死はどう映っていただろうか、と考えます。<o:p></o:p>

 

同様に、携帯ラジオは人間の生死についてどう思っただろうか、と考えてみます。<o:p></o:p>

 

横光利一『蠅』。短い小説です。一度読んでみて下さい。<o:p></o:p>

 

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水遣り

2013年08月14日 | 日記・エッセイ・コラム

 

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昨年までさつき園はお盆の3日間(8月13・14・15日)、通所を休んでいましたが、今年は休まずに通所を実施することにしました。<o:p></o:p>

 

先週末のことです。お盆の期間中に休みをとる職員から、<o:p></o:p>

 

「園長、ゴーヤの水遣りを忘れずにお願いします」と、園長室の窓の外においてある3つの鉢植えのゴーヤの水遣りを頼まれました。<o:p></o:p>

 

「おー、了解!」<o:p></o:p>

 

と返事はしたものの、忘れっぽいので、忘れてはたいへんと『ゴーヤに水』と紙に書いて、よく目につくように園長室のドアの取っ手近くの壁に貼り出しておきました。<o:p></o:p>

 

すると、今週月曜日のこと。園長室に入って来た職員諸氏がそれを見つけて、<o:p></o:p>

 

「園長もたいへんですね」とか、「園長、ゴーヤに水ですよ!」とか、「もう水遣り済んだんですか?」などと、朝からそれぞれ激励とも嫌味とも言えない言葉を残して部屋を出て行きます。<o:p></o:p>

 

でも、その温かい励ましのお陰(?)で、何とか今日も忘れずに水遣りを終えることが出来ました。あと1日、与えられた職務を立派に果たすべく、気合を入れて頑張りたいと思います!?<o:p></o:p>

 

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兄弟

2013年08月13日 | 日記・エッセイ・コラム

 

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○○さんはさつき園の利用者です。そしてさつき園グループホームの入居者でもあります。現在52歳。3人兄弟の長男です。<o:p></o:p>

 

一家5人のうち、現在ご健勝なのは遠くで暮らす三男である弟さんと本人の2人だけとなっています。幼くして父親を亡くし、母親は○○さんが20歳代前半の頃に病に倒れ、以降、長期入院中です。すぐ下の二男の方は○○さんが30歳代半ばの頃に病気で亡くなっておられます。<o:p></o:p>

 

両親を亡くしたのちの彼の人生は、同じ地元におられた彼の叔父にあたる方のお世話によって支えられていました。10数年前、さつき園にもその叔父さんが○○さんと一緒に面接に来られたのを記憶しています。けれど、その叔父さんも昨年の夏に亡くなられました。<o:p></o:p>

 

その一周忌に故郷に帰って来られた弟さんが、昨日、10数年ぶりにさつき園にお見えになりました。<o:p></o:p>

 

「前々から、気にはなっていたのですが、この機会にと思いまして……」と、兄である○○さんのこれからのことについての相談をしたいとのことでした。<o:p></o:p>

 

弟さんから、○○さんの今後についての心配事や弟さんご自身の思いをお聞きしました。さつき園からは障害福祉サービス事業所としてのさつき園の事業内容、そして福祉施設としての役割やその使命についてご説明し、利用できる諸制度などについてご紹介し、また私なりの○○さんの今後についての思いも話させていただきました。<o:p></o:p>

 

話も一段落したころ、○○さんにも同席してもらうために本人を呼んで来てもらいました。<o:p></o:p>

 

「○○さん、こっちに入りんさい。この人だれか分かるかねぇー?」<o:p></o:p>

 

「□□!」<o:p></o:p>

 

「おー、よう分かったねぇ!」<o:p></o:p>

 

10数年ぶりに会った弟さんの名前を、彼は何の途惑いもなく呼びました。<o:p></o:p>

 

ここ数年、彼の身体の動きや言葉のやり取りに以前ほどのスムーズさが無くなってきたと感じていた私たちは、弟さんを見て彼が何と言うだろうか、果たして覚えているだろうか、などと心ひそかに心配していたのです。しかしそれは全くの杞憂でした。「□□!」と、弟さんの名前を呼んだ時の彼はうれしそうな笑顔でした。弟さんの顔も紅潮していました。<o:p></o:p>

 

あとで分かり合ったことですが、○○さんが「□□!」と弟さんの名前を少し声高に、しかしはっきりと口にした時、同席していた私と支援主任とグループホームのサービス管理責任者である職員はそれぞれ目頭を熱くしていたのでした。胸にジーンとくる、兄弟の再会でした。<o:p></o:p>

 

弟さん曰く、「もう、兄の心配をするのは私しかいません。さつき園にもご迷惑をおかけしますが、どうか末長くよろしくお願いいたしますー」それは、兄弟としての切実な心情だと思います。<o:p></o:p>

 

障害の子の親も辛いが、その兄弟姉妹はかくも辛く、切なく、そして厳しいものと今更ながら思い知らされました。<o:p></o:p>

 

戦後68年。昭和40年代以降の国による福祉施設・福祉施策拡充の時代を経て、今、障害者の保護者は親の世代から兄弟姉妹の世代に確実に移っているのです。<o:p></o:p>

 

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親よりも先に死にたい

2013年08月07日 | 日記・エッセイ・コラム

 

今年の4月、一体となって障害者福祉を推進するために、そして社会の障害者福祉への相互理解と相互協力をより進めるために、全国的にも他に例を見ない、障害種別の枠を超えて障害福祉関係施設・事業所を一元化して設立された『山口県障害福祉サービス協議会』。その設立記念セミナーが8月3日(土)4日(日)の2日間、山口市で開催されました。<o:p></o:p>

 

その初日の後半に、障害者ご本人の発表がありました。知的障害、身体障害、精神障害、発達障害、難病の方々が、それぞれご自身のことについて、そして胸に秘めた日頃の思いについて発表されました。<o:p></o:p>

 

その中で、私にとって特に衝撃的だった発達障害の女性の方の発言を私のメモからご紹介します。<o:p></o:p>

 

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 25歳。10代の頃から不安定になってきた。が、それを我慢し、ため込んでいた。自傷行為があり、過食嘔吐などもあった。解離(解離性障害)もあり、記憶がないこともあった。<o:p></o:p>

 

でも、勉強して準看護師の資格も取ったし、介護福祉士の資格も取った。<o:p></o:p>

 

就職したが、職場の人事異動には慣れることができなかった。人が一人異動しただけでもまったくの別世界と感じた。<o:p></o:p>

 

今は自分のつまずきの原因が分かるようになってきたが、当時はボロボロだった。23歳で退職した。アスペルガー症候群と診断された。冗談が理解できない。2つのことを同時に出来ない。痛みには鈍感。急なことには対応ができない、などなどが症状としてある。相談支援センターに相談した。共感できる仲間がいた。

前の職場に戻りたいと思った。半年前に、私のことや私の特性について話す機会があった。カミングアウトした。周りの人も少しずつ私のことを理解し始めてくれた。5月から復職できた。私に合った方法が少しずつ分かってきた。相談支援センターの支援員に助けられた。感謝している。

 

「見た目は普通なのにね」と言われるのがとても辛い。(泣) 周りの人と自分とを比較してひどく落ち込んでいく。<o:p></o:p>

 

どんなに頑張っても私には出来ないことがある。だからいろんなことが出来る皆さんがうらやましい。(泣) でも、母を恨んではいない。(泣)<o:p></o:p>

 

感謝の気持ちを忘れずに、今を大切に生きている。<o:p></o:p>

 

私には出来ないことがあることを受け入れてくれる社会であってほしいと思う。私も努力はします。だけど出来ないことは出来る人にやってほしい。<o:p></o:p>

 

今、親に助けられて生活ができている。だから、親よりも先に死にたいと思う。(泣)

 

互いに理解し合い、支え合い、助け合う社会であってほしい……。<o:p></o:p>

 

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 泣きながら、あるいは泣くのを必死でこらえながら、彼女は話し切りました。<o:p></o:p>

 

 彼女は涙ながらに『親よりも先に死にたいと思う』と言います。<o:p></o:p>

 

 私はこれまで、障害の子を持つ親ごさんたちが『私はこの子より1分でも1秒でもいいから長生きがしたいです!』と言われるのを、何度か直接聞いたことはあります。しかし、当の障害者本人が『親よりも先に死にたい』と言うのを聞いたことはありませんでした。驚きました。ショックでした。<o:p></o:p>

 

 私たちの社会は、発達障害を生きる彼女に『親よりも先に死にたい』と言わせてしまう社会なのです。<o:p></o:p>

 

 彼女が親に頼らず『私も私らしく生きていけるぞ!』と、思えるような社会を創り上げることこそが、今ここで障害種別の枠を超えて一元化して起ち上がった私たちの目指すものと、肝に銘じます。<o:p></o:p>

 

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ネット依存

2013年08月02日 | 日記・エッセイ・コラム

 

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国際的な評価尺度に基づく8項目のうち5項目以上で該当し、「病的な使用」と判定されたインターネット依存の日常生活を送っている中高生が全国で約51.8万人いる、と推計される厚生労働省の研究班の調査結果が報道された。<o:p></o:p>

 

 メールやユーチューブ、フェイスブックやツイッター、そしてオンラインゲームなど、彼らにはもはやパソコンやスマートフォン、あるいは携帯電話が手放せないのだ。睡眠障害や精神面への悪影響も懸念されている。<o:p></o:p>

 

 しかし、ことは彼ら中高生だけの問題ではないと思う。<o:p></o:p>

 

 先日、県外の会議に出席してきたが、その会場にも「ちょっとどうなの?」と思わせる出席者たちがいた。しかも、席次でどこの誰だかがわかる会議にもかかわらず、だ。<o:p></o:p>

 

 ある人は、ひと言、発言したかと思ったら、あとは手元のスマートフォンに視線を落として、盛んに指先を動かしているばかり。またある人は、携帯電話がかかってくるたびに「はい、はい」と言いながら、おもむろに会場から出て行き、終わったら何食わぬ顔をして席に戻ってくるのを繰り返す。そしてある人は、持参したノートパソコンを机上に開くので積極的に会議に臨むのかと思えば、たまにキーボードに触れるだけで、会議の間中、何かを検索し続けているのかずっと画面を見つめている。<o:p></o:p>

 

 ○○○会議が聞いて呆れる。初めて参加した会議だったが、こんな人たちが私たちの福祉の仲間かと思うと、いろんな人間がいるものだと思う反面、なんだか悲しく、情けなくなってきた。<o:p></o:p>

 

「病的な使用」とまでは言わないけれど、会議の席にパソコンやスマートフォンや携帯電話を持ち込んで、それらの操作にいそしむついでに会議に出席しているようなことは止めてもらいたいものだ。そんな心根で福祉を語るのか!卑しくもそれぞれの組織の会長や副会長だというのに……。<o:p></o:p>

 

そんな人間とこれから付き合わねばならぬと思うだけで、私に睡眠障害や精神面に悪影響が出そうだ!?<o:p></o:p>

 

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