高校1年生の障害者施設実習

2011年07月29日 | 日記・エッセイ・コラム

 今週の月曜日・火曜日・水曜日と、今年も周防大島高校福祉科の1年生31人が3班に分かれて、それぞれ一日ずつさつき園に付き合ってくれました。午前と午後で異なる作業班に入って、利用者と一緒に作業に取り組みました。

 三日間とも、「せっかくの機会ですから、利用者とたくさん話をして下さい。名前を言ったり、名前を聞いたり、『暑いですね』とか『家はどこですか』とか、きっかけは何でもいいですからどんどん話をして下さい」と、最初に園長からお願いしました。

 その、さつき園での施設実習の感想文が今日、周防大島高校から届きました。

 それを読むと、実習前、彼らは障害者に対して、暗い、怖い、などの先入観をもっていたようでした。でも、短かったけれど今回の実習で利用者と同じ時間と空間を共有する中で、彼らは「利用者の方が話しかけて下さってうれしかった」「話ができて楽しかった」など、一生懸命に利用者と話をしようと努力し、会話を楽しんでくれていました。

感想文には「さつき園の利用者の方は集中力がすごい。明るい。元気がいい。人一倍頑張っている」などの感想が異口同音に書かれていました。そして、その中には「僕はこの実習で知的障害者のイメージが変わったような気がします」と書いた人もいました。

 その3日間が過ぎて、利用者の○○さんが言います。「今度はいつ来るんかねぇー」

 利用者も楽しかったようです。

 高校生諸君、是非、また来てください! みんなが待ってます!

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メッセンジャー

2011年07月22日 | 日記・エッセイ・コラム

 例年この時期、全国高校野球選手権大会いわゆる「夏の甲子園」の地区大会が開かれている時、利用者の中には作業の休憩時間にテレビで知ったのか、試合の途中経過を知らせてくれる人が何人かいます。

 その中の一人、○○さんが午後2時の休憩時間に意気込んで園長室にやってきました。

 「あのね、今ね、2対1よ、2対1」

 「オー、そうかね。どことどこがやりよるんかね?」

 「うーん、えーとね、えーとね、柳井か……」

 「柳井とどこかね」「うーん、徳山か……」

 「そうかね。で、今は何回かね?」「うーん、4回か7回か……」

せっかく知らせてくれたので、私も何とか『ありがとう』と言いたいのですが、なかなかそれが言える流れになりません。

「暑いのに高校生もよう頑張っちょるねー」「うん、ヒット打っちょったよ」

「オー、そうかね。あんたらも作業頑張ってよ!!」「うーん」

「教えてくれてありがとね」「うん!!」

やっと、ありがとうが言えました。

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休園しました

2011年07月20日 | 日記・エッセイ・コラム

昨日は台風6号の北上による山口県への接近が懸念されたので、朝になって、急きょ、さつき園を休園としました。

自宅を出た時は予定通り山口市のセミナーパークでの研修に行くつもりで車を運転していたのですが、台風接近でどうにもさつき園が気になったので、途中の交差点で右折すべきところを直進し、さつき園に出勤しました。そして、職員の様子や頻繁に利用者の家庭から欠席の連絡が入るのを見て、やや遅くはありましたが「今日は休園にします」と職員に通知し、各家庭への休園連絡を指示しました。

だから、昨日は一日、利用者は誰一人さつき園には来ませんでした。当たり前です。

ところが、いるべき時間に利用者がいないさつき園の、何とまあ、さびしいこと。さつき園の作業室や作業棟の建物がいつになくガランとして無機質に感じられるのです。いつもなら、うるさいくらいに(失礼!?)響いている利用者の声もなく、わざとバタバタと音をさせて廊下を歩くあの足音も、ドアを必要以上に力を入れて開け閉めするあのバタンバタンという音もせず、定番となっている園長室での利用者とのやり取りもなく……。思わず知らず、「あー、何か落ち着かんなあー」と独り言を言っている私がいます。

やっぱり、さつき園は利用者がいないとつまらんですなあ。

もちろん、職員は思いがけなく与えられたまとまった時間を使って、それぞれのすべき仕事をしていたのですが、私はいつもの調子(どんな?)が出ないまま、一日が終わってしまいました。

ずっと昔のコマーシャルで『クリープを入れないコーヒーなんて』というのがありましたが(いやー古くて恐縮です)、全くその通りです。

『利用者のいないさつき園なんて!!』なのです。私たちがどんなに頑張ったって、利用者には勝てません。

だから、「はい! これからも利用者と職員と一緒に頑張ります!!」と、心の中で呟いて、不言実行です。

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すでに起こった未来

2011年07月15日 | 日記・エッセイ・コラム

これまで私たちは、見て見ぬ振りをしてきたことはなかったでしょうか。「これくらいは大したことはない」と高をくくってきたことはなかったでしょうか。あるいは、目先の利害や損得を優先させてきたことはなかったでしょうか。

連日の大津波災害や原発事故の報道を見聞きするたびに、「もしもあの時、こうしていたら、ああしていたら……」と、過去の私たちのありようを虚しく後悔し反省するものです。

そんなとき、こんな言葉に出くわしました。

「現在とは、すでに起こった未来である」(P.F.ドラッカー)

現在とは、すでに起こった未来……。逆説的な言い回しですが、「福祉の現在とは、すでに起こった福祉の未来である」と言い換えると、この言葉の意味する重さが理解できます。

私たちが明日の未来にかけるのなら、今日の現在を真摯に生きなければ、後悔や反省の連鎖が虚しく続くばかりでしょう。

今を生きるのは今のため。そして、今を生きるのは未来のため。

私たちは未来の知らない誰かのために生きるのです。それが私たちの使命と思います。

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一枚の写真

2011年07月09日 | 日記・エッセイ・コラム

先週の木曜日から金曜日にかけて、さつき園は1泊2日の園旅行で鳥取県に出かけてきました。利用者・保護者・職員、総勢68名のバス2台の旅です。

週明け、私は携帯電話でその時撮った『とっとり花回廊』の緑の木立と、その遥かな先に、頂上付近に白い雲をたなびかせた雄大な大山の写真をA4のコピー用紙に印刷してきて、園長室の壁に貼りました。

その壁にはカレンダーや今年開かれる山口国体関係のいくつかのパンフレットやチラシ、そしてエコキャップの資料や周防大島町の地図など、何やらかにやらを適当に貼っています。だからちょっと見には、いったい何が貼ってあるのか、他の人にはすぐには分かりません。

ところが、今日に至るまでそこにその写真が貼ってあることに、園長室に出入りする利用者、職員の誰も気が付かないらしいのに、たった一人、利用者の○○さんだけは何と私が貼ったその日の朝、いつものように園長室に顔を出すと、すぐにそれに気が付いたのです。

「あっ、これ、この前行ったところじゃね。暑かったよねえー」

写真を指差しながら、うれしそうにそう言います。

あんなにチラシやパンフレットや地図などがごちゃごちゃ貼ってあるのに、そこに新しく1枚の写真が貼り足されているその変化に気づく○○さんの感覚の鋭さに、今更ながらビックリさせられました。

それは私が、利用者と私たちとは明らかにこの世界の見え方、感じ方が違うと思わせられる瞬間です。

そしてそれは、私たちがどれだけ努力すれば彼らの感性に近づくことができ、どれだけ努力すれば彼らを理解することができるようになるのだろうかと、呆然と立ち尽くす瞬間でもあります。

                                                                     

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