社会との緊張関係の中で

2014年08月29日 | 日記・エッセイ・コラム

 

 社会福祉の仕事は、例えばさつき園の場合、重要なことは支援の対象となる知的障害者一人ひとりの人生(過去・現在・将来)を鑑みて、その固有の生い立ちや生活歴、障害の状況に適した支援を提供することです。そして一人ひとりにきちんと向き合い、その理解力に合わせて納得してもらえるように説明し、支援することです。決して利用者全体をひとくくりにした支援で良しとしてはなりません。

 

他人の支援がなくては自分の人生を解放することが出来ない人たちの人生に関わることは、常に社会との緊張関係を強いられます。社会の大半は知的障害者との固有の関わりを持つ前に、既に様々な誤解や先入観に晒されているからです。しかもその誤解や先入観の連鎖の壁は厚く高いと感じます。

 

今、社会福祉を使命とする社会福祉法人は非課税問題、内部留保問題、地域貢献推進、財務・運営状況の公開等に関して、社会からその在り方の見直しを迫られています。

 

 これらの問題が生じる背景には、他人の支援なしには己の人生を解放することが出来ない人たちの人生に関わる社会福祉事業に対する、社会の誤解や先入観があると思われます。

 

 

 

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空よ

2014年08月26日 | 日記・エッセイ・コラム

 

 最近、よく空に話しかける。(疲れているのか?)心の中で。時に声にも出して。

 

私の心がこの夏の異常気象に反応している、ということなのだろうか。

 

「おい、しっかりしてくれよ」とか、

 

「おい、今日はどうだい」とか、

 

「根性ないなあ」とか……。

 

各地での大雨による土砂災害の報道を見聞きすると、胸が痛む。

 

昨日までは一般市民だった人が、一夜あけると被災者と呼ばれる現実。

 

この先も、昨日までの生活が、たいへんだけど滞りなく続いていくものと思っていたのに……。

 

しかし、もう誰も、例えば自宅でテレビを見ながら「あの人たちはたいへんじゃろうのうー」と安閑としておられる状況にはない、と知るべし。もはや、他人事ではない。

 

今、個人的な理由で空に関心を持つ私は、また別の思いで空を見上げている。

 

「おい、根性ないなあ。たまには根性見せてくれよ」

 

空という自然に向かって、人間が話しかけることに、どういう意味があるのだろうか。

 

これが高じると、祈りとなるのか。

 

私たちにできることは、これまでも、今も、そしてこれからも、自然に向かって祈ることしかない。

 

昨日の昼休み、園の玄関先で遠くの山や近くの田を眺めていたら、

 

「園長さん、今日も暑いね」と、○○さんが話しかけて来た。

 

「おー、蒸し暑いなぁ」と、私。

 

「広島は大丈夫かねぇ」

 

利用者も心配している。

 

空よ、根性を見せてくれよ。

 

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「園長、頑張りすぎ!」

2014年08月21日 | 日記・エッセイ・コラム

 

 先週の水曜日(8月13日)、午後6時過ぎ頃だったでしょうか、いつものように園長室で仕事をしていて、車の中の荷物を取りに外に出た時、さつき園の玄関先で偶然、ご近所のご主人の犬の散歩に出会いました。

 

 「園長、いつも夜遅くまで仕事しよるねー」

 

園長室は園の前を通る道路に面して窓があるので、遅くまで明かりが点いているのが分かるのです。

 

「いや、仕事が遅いんで、なかなか終わらんのですよ」と私。

 

すると、ご主人、笑いながら、

 

「いや、そんなことはないじゃろー。園長、頑張りすぎよ! 頑張りすぎ!」

 

そう言いながら、いつもの犬の散歩コースにしておられる園の前に広がる田を巡る道を、犬のひもを引きながら歩いて行かれました。

 

地域の人はちゃんと見ているなぁ、と改めて実感しました。

 

でも、だからと言って、仕事を切り上げて帰ることは出来ません。今日のことは今日のことに。明日の準備も今日のことに。明日は明日で、また、あれやこれやと忙しいのです。

 

そう言えば、忙しさにかまけて、このところ利用者とあまり話をしていないなぁと、その時反省したしだいです。

 

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壮観なり!

2014年08月11日 | 日記・エッセイ・コラム

 

 先週末、台風11号の中国地方への接近が土曜・日曜に予想された金曜日のことです。

 

午前の作業の一つは各作業班が協力しての、お隣りの大島中学校前にある、町内の方のご厚意でお借りしている畑の草取り・草刈り作業でした。

 

 台風の影響か、風の吹いてくる方向がいつもとは違い、北東からの風です。その風に吹かれながら、利用者・職員の20人ほどが草取り・草刈りに挑んでいます。私は園の玄関に出て、帽子はかぶっているかタオルは持っているか、と気にしながら、しばし作業の様子を見遣っていました。

 

 座って鎌を使って草を刈っている人。座ったままでじっと動かない人。かと思えば立ったままでじっと畑を見つめている人。鎌は手にしているものの座ったままの人。園長が園の玄関からこちらを見ていることに気が付くと、いそいそと作業の態勢に入る人……。

 

 刈った草を決めてある捨て場所に投げ捨てようとしたけど、風向きを考えずに投げたので自分の方に草が戻ってきてしまっている人。何度も繰り返しています。

 

 コンテナを抱えて、さてどうしたものかと辺りを見回しますが、結局立ち尽くしたままの人。風向きのせいでしょうか、口だけはよく動く人の声が私の耳元まで届きます。「相変わらずじゃの―」と呟く私。

 

 職員が時折立ち上がっては、そうした利用者の様子を確認しています。作業もしながら利用者の様子を確認するのはなかなか神経を使うことなのです。日頃から利用者の行動に関心を持っていないと出来ません。利用者には各人それぞれ独特の行動があり、独特の事柄や物への反応があります。他の利用者との相性も知っていなければなりません。そして、当然、その日の体調や最近の様子なども頭に入れておかなくてはなりません。

 

 少し離れたところで草刈り機を操作している職員がいます。男性職員も女性職員も周囲の安全を確認しながら、右に左に草刈機を動かします。草刈機の音が心地よく辺りに響きます。

 

 少し蒸し暑さはあるものの、曇り空のもと、さわやかに風の吹く中で、利用者と職員が一緒になって畑の草取りをする風景を、園の玄関先から見ている園長の心持ちは「壮観なり!」といったところです。

 

 ちょうど11時の合図が鳴り、お茶飲み(水分補給)の時刻になりました。

 

私はそれを潮に園長室に戻り、また机に向かって、途中だったややこしい文章作りを再開したのでした。

 

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大雨・通行止め・道路冠水・車大渋滞

2014年08月06日 | 日記・エッセイ・コラム

 

 さつき園は毎朝夕、園に通所する利用者のために送迎便を走らせています。大島便、柳井便、岩国便、由宇・日積便・ホーム便の5便です。

 

 今朝もいつものように職員朝礼を終えて、それぞれの便に運転手と添乗職員が乗り込んで、朝の送迎を開始しました。 

 

 ところが、途中、岩国便の添乗職員から「大渋滞で由宇から少しも動きません。いつ動くのかまったく分かりません」との電話が入ってきました。大雨警報が出ていた岩国市は昨夜から降り続いている大雨が、夜が明けてもまだしばらくは止んでいなかったのです。

 

 そうこうしているうちに、岩国方面の保護者から電話が入ります。

 

 「待っているけど、さつき園の車がまだ来ません。どうすればいいでしょうか?」

 

 「家の近くの道路はすごい渋滞で、車が全く動いていませんよ」

 

 「道路が冠水しているところがあるようです」

 

 今度は由宇・日積便の添乗職員から電話が入ります。

 

 「さっきから動きません。動いてもノロノロもいいとこです」

 

 園にいて、それらの電話を受けていた職員が逐一報告してきます。そして、

 

 「園長、どうしましょう?」と指示を待っています。

 

 私は、大雨の影響で、山陽自動車道が広島県の五日市インターから山口県の玖珂インターまでの区間が通行止めになったのを通勤途中のカーラジオで聞いていましたので、その影響で車が国道2号線に溢れ、また主要道路が2ヵ所で冠水しているとの情報もあり、岩国市内の各道路で渋滞が発生しているものと予想しました。むー、岩国方面は今日の通所は難しかろう……。

 

 こんな時は決して無理をしません。結果オーライではいけないからです。

 

 「岩国方面の利用者は今日は休園とします。すぐ、関係の送迎便と家庭にその旨を連絡するように!」と指示を出します。

 

 ところが、まだ家にいた利用者にはすぐ連絡がついて良かったのですが、すでにいつもの待ち合わせの場所に向かっている利用者がいました。申し訳ありませんでしたがお母さんにお願いして、迎えに行っていただきました。仕事をされているお母さんも、幸か不幸か、この渋滞で仕事に行けずに家におられたので助かりました。また、中には「それなら、そこまで私が見に行ってあげよう」と、快く、利用者が待っているかもしれない送迎便の待ち合わせ場所まで行って下さったお母さんもおられました。何ともありがたいことです。

 

そんな中、○○さんは今日は園が休みと聞いて喜んでいたとか……。それを聞かされた園長としてはちょっと複雑な心境になりましたが、『まあ素直でよろしい』としましょう。

 

 岩国では平成17年9月6日の台風14号の襲来による豪雨で錦川の水位が上がり、今にも錦帯橋が流されるのではないかと恐怖した経験があります。今回の大雨もその時を思わせるものがありますが、私はまだ今日の岩国市内の状況は十分に把握出来ておりません。高速道路の通行止めは解除になっただろうか。道路の冠水個所の水は引いただろうか。そして何より、明日の岩国方面からの通所は大丈夫だろうか。

 

 こうした緊急時、今回もまた保護者の方々にさまざまにご協力をいただき、利用者の安全と安心を確保することが出来ました。その時その時のさつき園の状況を理解し、適切に協力、対応していただく保護者の方々の存在に、どんなにさつき園が助けられていることか。利用者と保護者と職員との日頃からのこまめな連携の大切さと、そこから生まれる信頼感の重要性を改めて感じた一日でした。

 

 

 

 

 

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