効率性

2007年05月31日 | 日記・エッセイ・コラム

悲しいことに、昨年4月の障害者自立支援法施行以降、通所してくる利用者を金勘定するようになってしまっているのに気がつきます。利用者はお金(報酬)を運んでくるサービスの消費者、というわけです。

すると、私たちサービスを提供する事業者には、いかに苦労少なくより多くの収益を上げるかという、効率性を求める心理が微妙に働き始めます。そのうちの一つが、いわゆるムダをなくそう、ムダを省こうという心理です。そのこと自体は結構なことなのですが、それが高じると、現場ではもたもたしている利用者は排除され、誰からも相手にされなくなるのです。

企業や世間が、「安全・安心が第一」と言っているうちはいいのですが、声高に「効率性」を言い始めると危険です。福祉の世界でそれを言い始めると、危ない。特に知的障害者の世界では危ない。そこに彼らの生きる場はありません。

知的障害者には時間こそが友達なのです。そして障害者自立支援法にはそういう思想がないのです。

 

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知的障害者とは何か

2007年05月26日 | 日記・エッセイ・コラム

あることで、知的障害者と呼ばれる人たちのことを一般の人々に理解してもらうことが、いかに大変なことかを実感させられました。

知的障害者には子どもに言うようにやさしく話して聞かせれば分かるものだ、とか、ていねいに何度でもやって見せればそのうち覚えるものだ、とかいった、私たちがこれまでの自分の人生で身につけ、あるいは覚えてきた、物事を教えることの「いろは」を尽くせば何とかなるように思っている人たちがなんと多いことか。もしも私たちにそう思える場面があったとしても、それは彼らがこちらに一生懸命に合わせてくれているだけのことです。

そんなことは通用しません。私たちが長年生きてきて身につけてきた常識や理屈の届かない、はるか上空で、彼らは生きているのです。彼らにとって、これをこうすれば次はこうなる、そしてその次はこう、などという段取りや手順や予想などくそ食らえ(失礼!)なのです。

彼らの自由な発想と自由な行動の発露を邪魔し、歪めてきたのは、私たちが価値あるとしている常識や理屈です。彼らがまだ幼い頃から、私たちは彼らを寄ってたかっていじくり回して、とうとう彼らを私たちから見ての<知的障害者>にしてしまったのです。

彼らは、私たちが何かを教える対象ではなく、私たちが何かを学ぶ対象なのです。

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町の10年後

2007年05月26日 | 日記・エッセイ・コラム

最近、周防大島町の広報誌「すおう大島」5月号を見ました。それによると、町の人口はこの5月1日現在で2万1207人となっています。ということは、私のメモでは町の人口は、昨年4月からこの1年間で495人ほど減っていることになります。

また同じ広報には、今、町内に9校ある中学校を平成21年4月には5校に、10年後の平成29年4月にはなんと1校に統廃合するとの答申が出された、と書いてありました。

両方の数字を無理無理関係づけて考えると、10年後には中学校は町内のどこかに1校だけとなり、そのときの町の人口は500人×10年=5千人の減で、およそ1万6千人ということになります。

はたして10年後、町の風景や町の息遣いはどうなっているのでしょうか。皆さんのところはどうなると想像されるでしょうか?私がさつき園に勤めるようになってもうすぐ丸11年を迎えます。10年なんて、あっという間です。

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洗濯物

2007年05月24日 | 日記・エッセイ・コラム

夕方、「○○の家の者ですけど」と○○さんのお母さんから電話です。

「今週はうちの娘が当番らしいんですが、今日洗濯したタオルを外に干したままで取り込むのを忘れたかもしれない、とさっきから本人が気にしてるもんですから」「えっ、それはそれは」電話に出た私は、びっくりです。

見に行くと、確かにタオルが5枚、外に干したままになっていました。「はい、そうですね。干したままになっていました。取り込んでおきましょう」「よろしくおねがいします」「はい、わかりました」

そのあと、心底、びっくりし感心した私は思わず電話口で、「うちの職員よりすごいですね」とつぶやいていました。おい、諸君!しっかりしようぜ!

利用者には日々、教えられることばかりです。

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あるつぶやき

2007年05月24日 | 日記・エッセイ・コラム

県社会福祉協議会等のご配慮でサーカス観覧のご招待があり、さつき園では先日、利用者・保護者・職員81名で、楽しいひと時を過ごしてきました。

その、みんなで並んでサーカス会場への入場の順番を待っていた時のことです。私のそばで並んでいたある保護者が「私に○○(お子さんの名前)がいなかったら、私だって障害者のことなんか関係ない、と思っとったんじゃろうねぇー。一般の人が障害者にそんなに関心がないのはしょうがないよねー」と、ふっともらされました。家族連れや親子連れなど大勢の人たちが楽しそうに並んで入場を待っている様子を見て、思わず知らずもれた言葉だと思います。

 残念ながら、人の社会とはそういう風に出来上がっているのです。障害のこの子を抱えて、私はこんなに苦労し、頑張っているのに、世間は少しも目を向けてくれない。世間はなんて非情だ……、と嘆いてみたところで、何も解決しません。ちょっとしたきっかけの違いで、私もあの人と同じように無関心だったかもしれない、と思うところに、人と人の関係が広がり、心が通い合う契機があるのです。

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ホームページ

2007年05月18日 | 日記・エッセイ・コラム

先日、

山口市
に出張した折、そこで久しぶりに会ったある人から「園長さん、さつき園のホームページに接続できません。ホームページ止めたんですか」と声をかけられました。「えっ、そんなことはないじゃろう。昨日の夜に更新して、それを確認したときはちゃんと開いとったよー」「えー、でも~」「そりゃあ、あなたのパソコンだけじゃろう。ほかのパソコンなら開くんじゃないの」……といつもの憎まれ口を利く私。

用がすんで、夕方、さつき園にもどって確認すると、まこと、さつき園のホームページが見当りません。どこに行っちゃったんでしょうか?あれこれあれこれキーを操作して、何とか力ずくで(?)復旧させました。

なにせ職員が独力で作ってくれたホームページですので、大事にしなくてはいけません。ただ、その分、ときたま不具合が起こるのです。が、それも愛嬌です。これからも続けていきますので、みなさんもさつき園のホームページとよろしくお付き合い下さい。

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アイリンピック報告

2007年05月14日 | 日記・エッセイ・コラム

今回のアイリンピックではさつき園にとって歴史的なことが起こりました。なんと、「施設対抗でかパンむかでリレー」の第4組(6施設が出場)に出場したさつき園がその組で1着になったのです。1枚のでかいパンツを男性利用者2人ではく「でかパン」→職員5人の「むかで」→女性利用者2人の「でかパン」→利用者5人の「むかで」の順番のリレーで、4百メートルのトラックを1周する競技です。

号砲一発、スタートした最初の男性利用者のでかパンでは、なんとなんとさつき園チームが1番で走って来ます。しかし、次の職員5人のむかで(私も参加)は、辛うじてこけはしませんでしたが、情けないことに2組に抜かれました。ところが女性利用者のでかパンが1組を抜き返し、利用者5人のむかでが最後の最後、ゴールテープまであと1メートルもないと思われるところで先頭を奪い返し、そのままゴールしたのです。

練習ではどうなることかと不安だらけでしたが、利用者の本番での集中力には脱帽です。職員の力不足を利用者にカバーしてもらった格好です。まぁ、そのあとの利用者の喜びようといったら……。仲間のいる席に戻って「おめでとう」の拍手をたくさんもらいました。たまにはさつき園にもこんなことがあってもいいんじゃないでしょうかね。さつき園の歴史に残る1コマでありました。

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アイリンピック

2007年05月09日 | 日記・エッセイ・コラム

県内の児童施設・知的障害施設利用者の年に一度の大体育大会

(運動会)がこの12日の土曜日に山口県維新百年記念公園陸上競技場で開かれます。さつき園も遠く周防大島から自前のマイクロやバン4台を仕立てて、利用者・保護者・職員の総勢58名で参加します。

行く途中途中で利用者を乗せ、トイレ休憩も取り、などしてくると片道3時間、往復で6時間もかかるのです。ほんとに遠く感じます。おまけにこの時期、晴れると暑い!県内の仲間たちとの交流もたいへんなのです。参加を取り止めた施設もいくつかあります。

利用者と職員が玉入れ、大玉転がし、スプーンレース、ロードレース、でかパンむかで、施設対抗リレーなどに参加します。いい年をした園長は今年は参加しなくてすむかと期待していたら、ちゃんと『でかパンむかで競争』のむかでのメンバーに入れられていました。それでなくても、もう走ると足がもつれるのに、5人の足を結んだむかでで走るとなおのこと、気ばっかりあせって、つんのめってこけちゃいます。

しかし、そんなこんなでも、さつき園は毎年参加しています。なぜか?それは、利用者が楽しそうだからです。だから今年も、熱中症などに注意しながらも参加するのです。

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工賃倍増計画

2007年05月02日 | 日記・エッセイ・コラム

国あるいは厚生労働省のほうでは、障害者の自立の中身がいつの間にか経済的な自立に変わってきているようです。

先月末の「工賃倍増計画支援事業に関する説明会」という県主催の会に職員が出席したときの報告と当日の資料を見ました。それを読むと、コンサルタント導入、市場調査、商品開発、市場開拓……と、従来の授産施設、新体系での就労継続支援事業所など就労に関係する施設・事業所はしっかり発破をかけられています。

その中には、実際に工賃倍増、あるいはそれ以上の工賃を実現した施設・事業所の例もいくつか挙げられていました。なんだかあおられっぱなしです。

『……。まず保護者に、人が働く意味を真に考えてもらう必要がある。……』という文章もあります。障害者の保護者の大半は諦めているのか本人が働くことにあまり熱心ではない、という意見の後にその文章が続いているのです。

障害者本人はもちろん、保護者、そしてなおさらに施設職員はたいへんです。障害者が働いて経済的自立を実現しないと、保護者も職員も肩身がぐっと狭くなりますぞ。

「さてさて、では、さつき園はどうしたものだろうか?」と首をひねった私は、人が働く意味とはいったいなんだろう、と改めて考えてみるのです。

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