雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

映画と小説「小川の辺」・決然として生きる①

2011-08-09 22:18:32 | 映画と小説

 

  豊かな自然を背景に、淡々と描かれる映像が美しい。

前作「山桜」もまた、美しい日本の風景の中で、

若い男女のほのかな心の移ろいを描いて見事である。

 さらに、監督は異なるが「花のあと」(監督・中西健二)も同じような視点で、快い余韻が残る作品である。

 これらは皆、藤沢周平の短編小説の映画化であるが、

「山桜」「花のあと」は若く美しい女性が主人公である。

 

 さて、「山桜」も「小川の辺」も東山紀之を起用しての映画であるが、

端正な顔立ちの中に、どこか凛とした気品を漂わせ、

劇中多くを語らず、表情も抑え気味の演出が、

作品の質を高めているようです。

 

 藩命とはいえ、

朔之助(東山)が妹・田鶴の夫であり剣の盟友でもある、

佐久間森衛を討たなければならない心情は心苦しい。

 だが映画ではこのへんの朔之助の辛い思いも極力抑え、さらりと流す。

 妻をともなって脱藩した森衛であるが、郷村役人として、

藩の悪政を糾弾し、政道を正すために、疲弊する農民の窮状を、

重臣を飛び越え、藩公に上訴するという非常手段に訴える。

御法度の規則破りである。

 

 信念を曲げず、真っすぐにしか生きられない不器用な男は、

謹慎処分中に「脱藩」。

藩命に逆らう、これは重罪である。

 

 「藩命」により森衛を討つ。

朔之助に課せられた命題もまた重く、苛酷である。

                                (つづく)

 

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