君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 二話「トォニィ」

2012-10-10 01:21:49 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 二話「トォニィ」

 ペセトラで戦艦ゼルにベルーガを積み込みメサイアへと向かった。
 僕がメサイアへ戻って来る事は皆には知らせていなかったので、メサイアでの検査の後は、何をする訳もなく、軌道上の空港でシャングリラへと乗り換えるだけだった。
 僕はここでトォニィと会う時間を持った。

  メサイア上空の空港 
「カリナは元気?」
「最近は風邪もひかなくなったよ」
 そんな会話で始まった。
「ここでの検査はどうだったの?」
「ん、異常無しだったよ」
「だったら、成長を止めているのは、やっぱりジョミー自身になるね」
「そうなる…ね」
「体調を普通の状態にするのに一年以上かかったから、成長はその後でいいと思ってるんじゃない?」
「かもしれないね。体力的な事を考えても、成長させるのに問題が出そうなくらいの体力しかないし…」
「前は成長を止めて、今は成長させようと思っても…成長しない…」
「そう…」
 心と身体がちぐはぐなんだね、とトォニィが言った。
 それは昔、身体を無理やり成長させたトォニィが経験してきた事だった。
 身体の成長に心が付いて来れなくて、彼は苦労していた。
 生まれてから戦う事しかしてこなかった彼が自分も「心」があるんだと自覚したのも戦いの中だった。
「ナスカで僕が自分を成長させて、その後、心も変わってきたと思ったのはアルテラの死だった…それと、ジョナ・マツカを殺した時も心が動いた…」
「……」
「…こんな…体験じゃ助言にならないね…」
「ううん。トォニィ。僕らは何かを代償にした状態でソルジャーの力を持ったのかもしれない。それを君は取り戻したんだ。辛いけど、そのきっかけが悲しみだっただけ、僕はそんな形ではなくてもっと素敵な物を君に見せてあげられたら良かったのにと思う」
「ジョミーにはいっぱいもらったから…僕をソルジャーにしてくれたのも僕を成長させた」
「そうか…」
「でも、ジョミーは成長する事が怖いの?」
「わからない」
「十四歳になるのが怖いんじゃない?」
「……」
「成人検査が怖い?」
「SD体制はもう無いよ」
「じゃ、大人になるのが怖いの?」
「それもわからない…。子供のままで居たいと思ってはいないはずなのに…もしかした、そう思っているのかもしれないね」
「やっぱりさ。戻ってからキースの所に居たのが良くなかったんだよ。だから何度もメサイアに来るように言ったのに」
 トォニィがちょっと怒ったような顔をした。
 今の言葉は冗談が半分と本気が半分なのだろう。
「トォニィ…。僕が今から言う事は君を傷つけるかもしれない…」
 僕がそう切り出すとトォニィも真面目にそれに答えた。
「…いいよ。キースの事?もう大丈夫だから言って。ジョミー」
「二年前、僕はマザーの策略で戻れない場所まで行った。そこから戻るのはブルーが残した、たった一つの想いだけだった。それは生きたいと願う事。死の先へ行ってしまった僕がそう思うのはとても困難だったんだ。生きたいと思っても生きられないのなら、そんな思いなんか無いほうがいい。無様に行き足掻きたくはないと思っていたんだ。でも、何も知らないのに、僕にずっと「自分を生きろ」と言ってくれていたのがキースだった。あまりにも僕が不安定だったから、彼は俺と生きろと、俺を好きになれ。僕にそう言ったんだ」
「……」
「それで、一人では出来ない事も二人でなら、彼となら出来るかもしれないと僕は思い始めていった。僕の願いはミュウと人が共に生きる事。その願いが叶い始めてきて、それを最後まで見ないで何処へ行くんだ?とそう言った。だから、僕は彼の許に戻った。だから、戻れて幸せだった…」
「それで何かあったの?」
「ううん。何も…。キースはとても優しかったし、本当にとても…。でもね、僕は、僕の心は段々と僕が戻ったのは打算だったんじゃないかと思ってしまったんだ。彼の許ならば生きられる…そう思ったら、僕の何もかもが汚く思えてきて…でも、そう思う事も生きているって事なんだろうけど…それでも…」
「計算や打算なんて誰でもしてるじゃない?」
「それでも、そう思ってしまったんだ」
「それで、キースの側に居られなくなったんだね…前にシドに訳を聞いてって言われていたけど」
「キースと話し合えってよく言われる」
「会えば会うだけ気後れしちゃうのでしょ?」
「…そう…。ミュウじゃないソルジャーじゃない僕がそのままで居られるようにと色々してくれるけど…それが…辛いんだ。身体が全然動かない頃はそれだけで一生懸命で、そんな事は考えなかった。でも、動けるようになって、本当に僕はここに居ていいのだろうか?と、彼の重荷にしかなっていないんじゃないか?ってね…そう思えてきたら…余計に自分が嫌になってしまったんだ」
「ジョミー。それは考えすぎだよ」
「自分に全然自信が持てないってどんな感じだと思う?」
「ジョミー。あなたらしくない事を言わないで欲しい」
「僕らしい?僕は、もう居ないんだ」
「居ない?」
「僕は…百以上に分けられて、僕は僕から弾き出された一人でしかないんだ」
「それは…」
「強がりを言えば、何個に分けられても同じって言える。だけど、実際は怖くて仕方が無い…力と共に何もかもが僕から消えていったんだ」
「だったら…力が戻れば、ジョミーは自信を取り戻せるの?」
「多分、それはない。ああ、物理的な部分では戦う自信は戻るだろうな…でも、僕はそれを望まない。力だけが戻っても仕方が無い」
「前にクローンの彼らと心が成長するには何が足りないのか?と話した事があったけど、今度はそれより難しいね。ねぇ、ジョミー。今度の「月」行きに彼らも同行させたらどうだろう?」
「今度は彼らと話せと?」
「うん。あの子達も心配しているだろうし、教育ステーションでもこういう話をしていないんでしょ?」
「そうだね。月に行くのは良い機会かもしれないね」
「ところで、あのさ、ジョミー。えっと、シドが言うにはなんだけど…その…キースと…」
「トォニィ。シドが言いたい事はわかってるよ。僕が彼と身体の関係を持てばいいと言ってるんだろ?」
「うん。そう…」
「それは…さ…。僕も考えたよ。子供が大人になるって、その言葉通りの事をしたら簡単にいくんじゃないかってね…」
「……」
「実際、そうしようとした事もあった、でも、出来なかった。そう、してしまえば、楽なのかもしれないと…身体だけがそうしたいと疼く時もあった。でも…どこか頑固で意地っ張りな僕はダメだったんだ…。そんな方法では僕は彼の隣に立てない。もしそうしたら、どんどん心が卑屈になってしまう。僕はどんな顔をしていればいいんだ?」
「ジョミー…」
「ただ側で笑っていればいいのか?ずっと甘えていればいいのか?そんなんじゃ僕は…彼の隣には立てない…」
「答えは誰にも出せないね…」
「うん。わかっているのは答えは僕が出さないといけない。簡単に答えは出ないかもしれないけど、きっかけを探しに僕は月へ行く。それと、もう何も無いけど木星にも行くつもり…」
「地球は?」
「降りられそうなら…行きたいと思っている」
「了解。ジョミー。気を付けて」

 調整が終わり乗船許可が出たシャングリラへと僕らは移った。
「ねぇ。ジョミー。シャングリラがあったかいんだよ」
 唐突にトォニィが言い出した。
 それは昔、僕が彼に言った言葉だった。
「ああ、暖かいな。さっき、おかえりって言われた気がしたよ」
「それじゃ、言ってあげないと…」
 トォニィは子供みたいに笑った。
「うん。そうだね…シャングリラ。僕はやっと戻りました。僕はここから逃げたけど、ここは僕の家だ…。でも、僕はまた初めて来た時と…同じように今また力(ミュウ)を受け入れきれていない。こんなに中途半端な僕なのに…シャングリラは…迎え入れてくれるんだね。本当にここが僕の家だと思えるよ。本当に心から…ありがとう。ただいま帰りました」
「ジョミー。キスしていい?」
「え?」
「おかえりのキスかな?」
「いいよ。トォニィ」
 僕の横に立つトォニィが少しかがんでキスをした。
「ねぇ、ジョミー」
「ん、何?」
「何で僕に許したの?」
「…今の…キス?」
「ううん。前に木星からメサイアに旅立つ時に、何で僕に抱かれたの?」
「え、ああ、あれは…」
「……」
「もう、会えないかと思っていた…それに…」
「それに、僕をちゃんと大人扱いしたかっただけでしょ?」
「…そう…」
 ジョミーはここでため息をつき、言葉を続けた。
「…でも、あれは間違いだったのかもしれないと思っている」
「僕との事が間違い?」
「トォニィ。君とそうなった事、その事を、その時の気持ちを間違いだとは思っていない。でも、その行為を選んだ僕が。僕の考えが間違っていたかもしれないと思って…」
「その言い方は変だよ」
「うん。わかっているよ…。後悔はしていないが、僕の独りよがりになってはいなかったか?」
「独りよがり?」
「うん」
「一人でイッてないよね?あの時」
「ち、違う。そういう意味っ…じゃ…」
「わかってる。冗談だって」
 トォニィが笑う。
「…トォニィ…」
「自分が居なくなる未来を感じて…離れてゆく僕に残せるものが自分との愛し合う行為だと思ってそうしたのなら…それは、全然、独りよがりじゃないと思うよ。ジョミー」
「そうか…良かった。そうした事で君が思い悩むような事になってしまったんじゃないかと、ずっと…あれは自分勝手な思いだけだったんじゃ無いかと…気になっていたんだ」
「ジョミー。それじゃあ、今度は僕があなたを抱けば、おあいこになるね」
「…それは…ならないよ」
「えー。そう?」
「前に僕が君を抱いていたなら、そうかもしれないけどね」
「そっか、じゃ、僕を抱く?」
「いや…抱かない。だって…トォニィ、無理でしょ?」
「んー、わからない」
「…この話は止めよう」
「ジョミー。やってみないとわからないって」
「やらないから…」
「やってみてよ」
「やらないよ」
「何で?」
「何でって言われても出来ないっ…」
「どうして?僕だってそれくらいの覚悟はある」
「覚悟の問題じゃないって…」
「でも、何でジョミーは…」
「?僕は何?」
「受けも攻めも出来るの?」
「そ…それは……」
 僕らは、しばらくこの押し問答を続けた。

 僕とトォニィはシャングリラの中のトォニィの部屋に居た。
 彼の部屋は大きな窓があり、眼下にはメサイアの夜景が拡がっていた。




  続く






『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 一話「心の中は…」

2012-10-06 01:49:24 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン 今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 一話「心の中は…」

 ステーションの修復工事の間、生徒達は惑星アルテメシアに居た。
 ソルジャーズの二人もアルテメシアに戻って来た。
 久しぶりに暴れたブルーは積もる恨みを晴らせたと豪語していたが、そうも気分の良いものではなかったようだ。
 アルテメシアで僕らはダールトンの一族に世話になっていた。
 その間に、ある一人の青年が眠ったままになっている話を聞いて、深層に潜って原因を探ってみる事になった。
 シドが補佐で、僕が潜ったのだが、それが、何故か異常な事態になってしまった。
 僕と彼が眠ったままになったのだ。

 僕は深層でキースと出会った。
「何故?キースがここに?」
「お前の深層に潜るのは二度目だな」
「…何か…起きてる?」
「俺が東部を視察中なのは知っているな。俺はスウェナからお前が眠ったままになっていると知らせを受けた」
「眠ったまま?…まだ…」
「もう一週間だそうだ。この間、栄養も受け付けないと皆が慌てている」
「…そんな…まさか…」
「これは、お前がした事だろう?」
「え?いや…僕は何もしていない。そんなに時間が経っているとも思っていなかった」
「とにかく、その男だけでも戻せ。俺が居るから…」
「…わかった」
 僕はキースにそう答えたが、強制的に排除するのはしにくかった。
「……どうした?」
「どうやれば…」
「追い出せばいいんだ。こう、出て行け!と」
 青年の姿が消えていった。
「キースの方が慣れてるね…」
「俺達の間にあいつが邪魔だと思っただけだ…」
「……」
「しかし…なんて姿なんだ?」
「…え?何?」
 ここで初めて僕は自分の姿を眺めて見た。
「…!!…」
「な、何これ?何で僕が…そんな…何で女の身体になっている?」
 僕は大人の女の身体になっていた。
「心を閉ざしたあいつに何を望まれた?」
「助けて欲しいって…」
 僕の服は教育ステーションの制服だったが全体的に細くなった所為でブカブカだった。思わず胸がある事を触って確かめている僕にキースが一つ咳払いをした。
「で、何をした?」
「あ…か、彼は色々な問題を抱え過ぎてしまっただけだから…簡単な催眠操作で十分だった。だから、簡単だと思っていた。すぐに戻るつもりで…それで…」
「何かを言われた?」
「僕達が生まれ変われたなら、女になって結婚して欲しいって言った…」
「それで、その要求を受け入れて女になっているのか?」
「ち、ちがう。生まれ変わるなんて、そんなの。第一、今まで僕がこんなになっているって知らなかったんだ」
「…お前はこの前の女装といい、女になりたいのか?」
「なりたいなんて、思っていない」
「前に俺の子が産んでみたいと言ったな」
「あれは違う。言葉のそのままの意味じゃない」
「しかし、俺は何故、お前が他のヤツとベッドにいるのを見なきゃいけないんだ?」
 そう、さっきキースが現れるまで、その言葉通りに僕は彼とこの大きな白いベッドの中に居たのだ。
 それは紛れも無い事実で、それの言い訳は出来なかった。
「多分…何もしていない…」
 僕はキースから目を逸らして答えた。
「何もしなければ同じベッドで寝ていいのか?」
「でも、男同士だし…」
「今は、女だろ?」
「そうだけど、それでも、何もしていない!」
「ジョミー…では、ついでだから、女の感覚を味わってみるか?」
「ついでって…!」
 トンと肩が押される。
 そのまま、後ろに下がるとベッドに仰向けに倒れた。
 慌てて逃げようと起き上がると、後ろから羽交い絞めにされてしまった。
「キース!冗談は止め…ろ」
「冗談にするつもりはない」
「嫌だ」
「嫌じゃないはずだ。俺がこうして脅しているのに何故男に戻らないんだ?」
「知らないって…」
「お人よしのお前はあいつの希望をきいて女になった」
「そんなのは…何故だかわからない」
「なら、女として満足しないと、やるだけやらないと戻れないとかか?」
「な…!」
 そんな会話の間にもキースは胸に手を伸ばしていた。
「さ…触るな」
 逃げようとしても逃げられない。
 それは体力の差ではなく、本気で逃げようとしていない感じがあった。
 心のどこかで僕は望んでいるのかもしれないと…何かが言っていた。
「で、でも、ダメだ。これは僕じゃない…僕は…」
「ジョミー」
 キースが耳元で囁いた。
「…あっ…いやだ…」
 否定する言葉を言いながらも、頬が紅潮するのがわかった。
 身体の芯が疼く、腰が浮く気がした…。
 これが…欲望…肉欲か…。
「キース…僕は…この身体は君を望んでいる…ようだ」
「心の中なのに、心と身体が別に思うのか?」
「だって…心地が良いんだ。男も女も関係なく僕は君の腕の中が一番気持ちが良いんだ」

 それは身体が勝手に望んだ事を言葉にした感じだった。
 それをきっかけに僕は僕の身体に戻っていった。
 僕は目覚めた。


 戻ってから何故か涙腺が弱くなったのか、めそめそしている僕に青年は思いっきり謝ってきた。
 彼は確かに僕に無謀な願いをしてきたけど、それは、心の中の事で彼に罪は無い。
 僕が馬鹿な事をしただけだ。
 何故そんな状態になってしまったのかはわからなかった。
 僕はキースに礼を言いたかったが、僕がまだ寝ている間にここを離れてしまっていた。
 僕らは答えを出す時期が来たのかもしれない。
 やがて、修復工事が終わり生徒達はステーションに戻った。
 そして一年後、僕は飛び級をして三年に進んだ。
 僕は休学願いを出してシドとメサイアへ戻る事になった。
「一年で戻るなんて、早いホームシックだね」
 ソルジャーズやキリアン達にからかわれたが、一年しても僕の身体は成長していかないのだから、一から身体を見直す必要があった。
「何がどう僕を縛っているのだろう」
「体と心のバランスが上手くいっていないだけでしょ」
 とシドは答えた。
 ミュウとして若い体のままでいる事に何も問題は無かった。
 今、戻った時とそう変わりない子供のような僕の体、成長を望んでも成長しないのは、僕がそれを望んでいない事になる。
 心の中では大人の女にもなれたのに…。
 成長を望んでいない。
 それが答えなのか?
 それがそうなのか?
 本当に?
 僕は何を望み、何を否定しているのだろうか?
 その本質を探さないといけなかった。
「もう一度、キースに会えば結果が出ると思いますよ」
 シドはそう言ったが、まだ僕はキースには会えなかった。
「今のままだと前と同じ事の繰り返しにしかならないよ」
「難しく考えなくてもいいと思いますよ…」
「気難しくて悪かったね」
「そうは言ってないですよ」
「シドはミアとは上手くいってるの?」
「え、何で知ってるんですか?」
「僕とミアはステディだったんだもん。聞いているよ」
「はぁ…」
 と、シドはため息をついた。
「ペセトラからはゼルで移動だから、シドはミアの居るペセトラに居てもいいよ」
「いえ、いいえ。メサイアからはシャングリラで月でしょ?」
「メサイアで時間があるから、追いついてくればいい」
「速度的に無理です」
「んー、なら、ミアをメサイアに連れてくれば?」
「まだ、そういう段階じゃないですって…」
 シドは照れ笑いを浮かべた。
 その顔はとても良い顔だった。
 やっぱりそういう顔は良い。

 僕が「希望」とか「ヒカリ」と思える能力へと変化していたとしても、僕自身が幸せじゃないとそれは、きっとただの偽装でしかない。
 幸せを探す?
 それはとても困難だった。
 僕が本当に幸せを望むには、僕は僕を見つけなければいけなかった。
 その方法は前の自分と今の自分、そして、僕の過去を見なおす旅になるだろう。



  続く




『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 十一話「ミュウと人とソルジャー・シン」

2012-10-02 01:06:27 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 十一話「ミュウと人とソルジャー・シン」

「落とさない?」
「力を?」
 そんな事どうしたら、僕達に何が出来る。
 僕達は人なんだ。
 と生徒達は口々にざわめき始めた。
 その様子を少しだけじっと眺めてからジョミーは静かに話し出した。
「僕はミュウだ。それもとても特殊なミュウなんだ。僕はさっき爆風をここにいるミュウの彼らと防いだように、皆の力を集める事が出来る。そして、それは、ミュウの力だけじゃない」
「ミュウの力だけじゃない?」
「除去した爆弾を集めてCブロックに仕掛け、その威力で上に上げる、惰性で軌道に戻す。だけど、それだけじゃ…ここがもたないかもしれない…。救援が来るまで僕らは僕らだけでここを守るんだ。ミュウの皆がさっきしたのは祈る事、願う事だけだ。彼らはバリアやシールドなんて使った事は無い普通の人だ。それを引き出し、強固なシールドへと変換したのは僕だ。それをここにいる全員で行えば、ここは守り抜ける」
 ざわざわと生徒がざわめく。
 この間にも不気味な振動は続いている。
 ジョミーには、支えきれなくなった海賊の船が離脱する知らせが入っている。
 生徒達を不安に陥れないように、ぎりぎりまで強攻策は取りたくないと思ってはいるが、時間は限られてきていた。
 それでも、ジョミーは説得を続けた。
「出来る。必ず。全員の力を集めれば、ステーションは守り抜ける」

「僕は君たちと同じなんだ。惑星アルテメシアは僕の故郷でもある。ここには、僕の両親と、愛する人がいる。そう、君たちと同じだ。ここには…。君達にも子供の頃の記憶があるのだろう。良い事も悪い事もあっただろう、嫌な事があったとしても、全てが悪い事ばかりじゃなかったはずだ。そんな子供時代を過ごした場所は永遠なんだ。もう戻らないし、戻れない。本当に大切な思い出なんだ。そこを壊していいのか?君たちはここで死んでいいのか?まだまだ君達にはやりたい事があって、大きな未来があるのだろう。それを諦めるな。逃げるな。立ち向かうんだ」
 そう、僕はこの星でブルーに会った。
「僕はそんな思い出の星を守りたい。ううん。皆で守ろう。信じて欲しい」

 やがて重力バランスが崩れ始める。
 振動と共に軋む音がする。
「時間がもう無い…」
 天井を見ていたジョミーがつぶやく。
 そして、ジョミーはミュウ達の前に歩み出た。
 ジョミーと同じように不安感が押し寄せていたミュウ達は、やっとジョミーが自分達の所へ来た事で、その不安が消えてゆくのを感じていた。
 きっと、出来る。
 そう信じれる。
 ジョミーとなら何も怖くない。
「僕達でやろう。もう一度頼む。力を貸してくれるね」
「やります」
「守り抜きましょう」
 ミュウ達がそういいながら各自祈り始める。
 ミュウ達のサイオンが静かに溢れ始めた。
 その前にジョミーがいる。
 彼はまだ何もしていない。
 ジョミーは振り返り、そして、静かに。
 そして、少し冷めた目で人々を見つめた。
 それは、自分達の命がかかっているのに何もしようとしない人たちへの諦めが感じられた。
 生徒達は、それに対して「人だから」と言う者もいたが、それにはジョミーが無言で「だから?何だと言うの?」と言われている気がしていた。
「出来もしない事をお願いしたりしないよ」
「君たちにも出来るんだ」
 そんな言葉が聞こえる気がした。
「ジョミー。俺達は信じる。どうしたらいいんだ?」
 と言ったのは、キリアンとマックス。そして、あの上級生だった。
「助かりたいと。落とさない。と祈り願えばいい。それが力になるんだ」
 キリアン達が祈りだす、それにつられるように他の生徒達も祈り始めた。
 やがて、生徒や教授陣、全員が祈っていた。

「そう。それでいい。その祈り…僕が後を引き継ぐから」
 そう言うと、ジョミーは優しく微笑み、青く光り始めた。
 その光りは大きくなりセンター全体を包み込んでいった。
 青い光がステーション全体まで拡がると、少しずつサイオンが変化してゆく。
 青からオレンジへ。そして、眩い陽の光りへと。

 時間になりCブロックの爆破が起きる。
 ジョミーは集めた光を維持しながら、爆破の威力を使いステーションを引き上げ始める。
 上へ ゆっくりと軌道へ
 そして、人の強さと優しさの源へ

 この光は僕だけのものじゃない…。
 人と人とが思いあう優しさ。
 誰かを守りたいと思う力。
 僕もこの光の一つなんだ。
 ミュウも人も…同じなんだ。
 ああ、暖かいな。
 僕はここへ。
 これを感じ為に還って来たんだ。

「シャングリラ。ワープアウト!」
「戦艦ゼウス。ワープアウト!」
「続いて、演習艦アルビオン。ワープアウト!」
 この他にも何隻もの船が救助に現れた。
 シャングリラから通信が入る。
 トォニィとミュウの仲間達がステーションに取り付いた。
 次々にアンカーが打ち込まれてゆく、ゼウスから小型艇が飛び立ちステーションに機材を運び込み少しずつ安定した軌道に戻っていった。

 センターの真ん中で、背中合わせで座り込んでいるジョミーとキリアンとマックス。
 生徒達ももうくたくたで皆座り込んでいた。
「人はどうだった?」
「人の力?」
「どうだ?」
「ここまで引き出せると思っていなかった。人って、スゴイよ」
「そうだろ?お前も俺達、人を助けたいと思っただけじゃなく信じてくれたんだな?」
 キリアンが言った。
「僕もそれ感じたよ」
 マックスが言う。
「ああ、信じ合わないとこんな事は成功しないさ」
 ジョミーがそう答えて、立ち上がり大きく背伸びをした。
 その背後が、騒がしくなった。
 生徒達の間に緊張が走っていった。
 誰が入って来たのか、僕には見なくてもわかった。
 振り返らず、ゆっくりと手を下ろした。
 小型機で乗り込んで来たのはミュウの長、ソルジャー・トォニィと、人類の最高位、キース・アニアンだった。
 この二人が連れ立って歩く図は国際会議でも滅多に見れなかった。
 不仲とかお互いが干渉しないとの不協和音が知られていたが、同じ歩調で歩いてくる二人にはそんな感じは一切しなかった。
「ジョミー」
 声をかけてきたのは、僕から一定の距離で止まった二人では無かった。
 僕は声の方に向き直った。
「エディ…」
 彼はキース達が入って来たのと別方向から来たので、この状況に慌ててしまっていた。
「エディ」
 駆け寄ったのはキリアンとマックスだった。
 彼らが再会を喜び合うのを横に見て、キースに敬礼し、トォニィに挨拶をしたセルジュが僕に声をかけてきた。
「ミア・マクレーンも無事です」
「ありがとう」
 僕は改めて、向きを変えてキース達を正面に捉えた。
 トォニィは僕を少し呆れた風に見てこう言った。
「ジョミーの行く所にはいつも問題ありだね」
 と笑った。
「それじゃあ、僕はまだ皆が宇宙(そと)にいるから、支援しないと燃料切れしちゃう」
 そう言って、トォニィはセンターを後にした。

 生徒や教授達は続々と大型艦のシャングリラへと移送されていた。
 エディもキリアン達と一緒に手を振って出て行った。
 エディにはまだ軍の兵士が付いていた。
 その護衛にヴィーが居るのに気付き、僕と彼は小さく挨拶をした。
 シャングリラは、ここの人を全て乗せるとアタラクシアへ降りる事になっていた。
 僕とキースは管制室へと向かった。
 様々なデータを出して僕はこの状況を説明した。
 キースはセルジュから報告は受けていたので、クラヴィス将軍の更迭を決めていた。
「ブルーも無事に助け出したようだ」
 僕がキースの顔を見上げると
「トォニィがそう伝えて欲しいと言ってきた」
「そうか…良かった」
「ここは?」
「さっき報告を受けたが、廃棄する程では無いようだ。ブロックごとの修理で済むだろう」
「そう。なら他に行かずに休みで済みそうだね…」
 ジョミーは離れてゆくシャングリラを眺めながら言った。
 それを横でじっと見つめた後、キースが聞いた。
「この事態をどう収拾しようと思っていた?」
「エディは逃がしたけど、避難が間に合わなくて、最初はやつらはここと一緒にエディやクリスティナを殺す気だとわかって…」
「それで?」
「それでも、ブルーを行かせた。それが、あの子達を守る最善な方法だと思ったから…」
「お前はまだ爆弾があると思っていたのだろう?」
「ああ、僕だけじゃない。管理室や教授もそう思って必死に探した」
「…予知は戻ったのか?」
「どうだろう?友人のキリアンとマックスが危ない目に遭うのはわからなかったな」
「戻りたいか?」
「こんな事が起きると力があった方が良いと思うけど…。でも、戻るのとは違う。僕はもっと違う何かが欲しい」
「そうか…」
 キースがゼウスへ戻る時間が近づいていた。
 二人は管制室を出た。
「身体は大丈夫か?」
「何とかね」
「……」
 キースは何も言わずに乱暴にジョミーの右腕を掴み上へ引き上げた。
 半分吊り上げられたような形になるジョミー。
「…痛っ…何を…」
 そのまま、キースはジョミーの頭を抱え込み、両腕で抱きしめた。
 ジョミーの顔にキースの髪がかかる。
「俺が…俺が、どれだけ心配したと思っているんだ…」
 キースのその言葉も肩も震えていた。
「……」
「お前のインカムにはシグナルがついていたんだ…」
「…ロスト…」
 それは僕が死んだとキースに知らせる信号だ。
「俺は何度お前を失えばいいんだ?」
「キース…ごめん」
「……」
「キース」
「俺は…」
 キースは言いかけた言葉を飲み込んだ。
「止めないでいいよ。僕を責めていい…」
「責めても同じだ…」
「ごめん。もう少し…まだ僕は…まだ君と進めない…」
 キースが僕を抱く腕に力を込める。
「俺もそれは理解しているつもりだ…」
「僕らは依存しちゃいけないんだ…お互いが立っていないと、成り立たない」
「ああ」
「まだ僕はそれを、その方法が見つけられない」
「ジョミー。それでも俺は…」
 キースが僕の頭を掴んだままキスをしてきた。
 想いが流れ込むような優しいものだった。

「俺との事は見えなくても、お前はもう何かを見つけているんじゃないか?」
「そうだね。僕は人とミュウの未来には希望があると信じているよ」
 
 離れてゆくゼウスを眺めてから、僕はアルビオンへ急いだ。



   Artemisia編 一章十二話 「過去 そして 次の時代へ」

 演習艦アルビオン
「シド。…セルジュは?」
「セルジュは、戦艦エンディミオンで東の星域へ行っています。ゼウスもそこへ?」
「将軍は見つかったのか?」
「はい」
「そうか、これで収まると良いけど…」
「ブルーがかなり派手にやったみたいで、あ、いえ、死傷者は少ないです…そうとう脅かしたみたいで…これで大人しくなるといいですね」
「そうか…僕はこのままアルテメシアに降りて生徒と合流するけど、ミアはどうするの?」
「一度、ペセトラに戻らないと…」
「シドは?」
「僕もベルーガを取って、戻ってきます」
「了解」
「ところで、クリスティナとは連絡取れる?」
「東の星域の戦闘が治まってきてるので、多分」
「会えないかな?」
「それは、少し難しいかと…通信なら」
「わかった」
 アルビオンはアルテメシアに降りた。
 僕はすぐにダールトンの通信網を使ってミディアンを探した。
 クリスティナとミディアンには面識があった。
 ミディアンとクラヴィス将軍との出会いが、ミディアンの兄グライムを軍を抜けさせ海賊へ向かわせたとクリスティナは誤解していたが、それはすぐに解けた。
 ミディアンとクラヴィス将軍は戦争中の混乱の中での別れだった。
 将軍が個人的な恨みで動いていたのでは無いのかもしれないが、それが全く無いとも言えなかった。
 僕は彼女達に謝罪する事しか出来なかった。
 戦争を起こした事、グライムを殺した事が、避けて通れなかった道だとしても、僕に何一つ過ちが無いとは言えないのだ。

 人は過ち進みゆくものなのかもしれない。
 それでも、全ての人を信じて僕らは進むしかなかった。

 




    終


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