☆本編の補足、トォニィ視点からのサイドストーリーです。
時間軸は多分戻らずに事象、事件を追ってゆくと思います。
「君と僕の行く未来」 3
大戦から約二年後
「彼らの謎を探ろう」
と言ったセルジュはペセトラに戻って行った。
ジョミーを連れてキースもペセトラやノアへ向かったので僕にはセルジュの報告を待つ日々になった。
シャングリラで行こうかと思ったりもしたけど、今のシャングリラはミュウ達の家と化していた。
もう一年以上この船は飛んでいない。
飛ばす必要が無かったので船の修理も進んでいなかった。
他の戦艦も同じような物だったが、あの三隻はジョミーが早々と修理をさせて、ノアとアタラクシアの仲間の元に向かっていた。
飛ばせられない理由は終戦した事だけではなかった。
今、このシャングリラには各星域からミュウが集まって来ていた。
彼らは戦前戦中の成人検査でミュウと判断された者達、そして、ミュウ因子を持つと判断された者達だった。
もう、ミュウと言っても人類は敵として見てはいけないと言われていたが、それでもそうレッテルを貼られてしまった者達はソルジャーの居るここを目指して集まって来ていた。
「ミュウ化した者だけを受け入れるしかない」
「その通りだ、この船は大きいけれど限度がある」
「ミュウ因子があってもそうならない者も多いんだ」
「では、ここに集まって来た者たちをどうするのか?」
「帰ってもらうしかない」
「戦後の混乱期にここまで来れたのも奇跡に近いんですよ」
「帰る場所の無い者もいます」
「それでも、我々にはそうしかできない」
「今までもミュウ化しない者は切り捨ててきたじゃないか」
こんな議論が毎日だった。
「だから、僕達は船を降りるべきなんだ」
ジョミーはそう言って反発された。
「ソルジャーの意見は無茶です。そんな事出来るはずもない」
「降りたら。殺されてしまいます」
一年前の、幽閉されるきっかけになったジョミーの言葉はちょっと酷かった。
「ずっとここに居るつもりですか?僕達は人間を皆殺しするつもりでここまで来たのか?それとも、人間と共存するつもりで来たのか?どっちなんです?」
この言葉は、戦中ずっと人間を殺してきた僕らにも辛い言葉だった。
僕はジョミーが殺したくないと思いつつ戦っていたのを知っている。
彼の最終的な目的は、ミュウと人間との理解と共存だ。
だけど、いきなりは無理だった。
殺しあっていたんだ。
だって、僕らはタイプブルーだから…。
戦うことしか出来ない。
「彼らはわかってはきているんだ。人間が僕らを全く理解せずに居たら、僕らはとっくに殺されている。戦争は終わったが、まだ問題が沢山残っている。これは僕らが始めた戦いだ。もう逃げ隠れは出来ないよ」
「それと、いつまで、僕を頼るのですか?人間が怖いなら怖いと言えばいいじゃないですか?何を気にしているんだ」
そう、ミュウの皆だって、このままじゃいけない事はわかっている。
だから、共生用の保護施設が出来た都市に行く者も居たし、積極的に人間と関り人間の中で暮らす者も出てきていた。
それでも、暴力的な事件はかなり起きていた。
人間がミュウを怖いと思うように、ミュウは人間が怖いんだ。
やっぱり、僕らと人間は違うんだという意見まで出てきていた。
惑星移住計画も出ていた。
違うと言い張るのなら、他の星へ行って暮らせばいいという意見には今度はジョミーが反対した。
「そういう意味で移住先を探してくれている訳じゃない」
「この宇宙で人が住める星はそうない。それを探すのも容易じゃない。彼らは住めるようにした星を僕らにくれるんだ。どこかに行けと言ってるんじゃない」
「もう、彼らを怖がるのは止めないか?」
「ソルジャー。それは、反対じゃないですか?彼らが我々を怖がっているんだ」
「ええ、そう。人は僕らを怖がっている。それなら、僕らが自分達で怖がらせないようにすればいい。だから、そこを理解しあう為にまず降りよう」
「簡単に言わないで下さい。あなたの様にはいきません」
ジョミーは人類との会議に良く出ていた。
人類の上層部が少しずつ彼を認め始めた。
それも、反発をよんだ一因だったのじゃないかと思う。
ジョミーのカリスマ性が薄れたのではなく、皆が我侭になったんだ。
彼がどんどんと先に行ってしまうのが、置いて行かれるのが怖かったんだ。
何故、そんな何も見ないように僕らはなってしまったのだろう。
地球へ辿り着いた。
それで満足してしまって、その先を考えようとしなかった。
こんな矛盾した気持ちになるなら、もういっそ、人間を力で押さえつけてしまおうという意見が再燃した。
それは、やがてジョミーを幽閉する形になった。
「グランパ、あなたがそこから自分で出ないと言うなら、僕が壊す」
「それは、しないでいて」
「だけど」
「大丈夫だから、心配しなくていい」
僕の抗議でやっとジョミーを解放できた時には、ジョミーの気持ちは固まっていた。
「僕が船を降りよう」
「人類の中へ行って、もっとちゃんと皆が生きていけるように話を進ませる。時間はかかるかもしれないが、暫く我慢をしていて欲しい」
「ジョミー。だめ。降りちゃいけない」
「もう決めたんだ」
「ジョミーは僕らを見捨てるの?」
「…ううん。何かあればすぐ来るし、いつでも呼んでいいよ」
「どこに行こうとしているの?」
「キース・アニアンに会って来ようと思っている」
「キース。あいつに?」
「人類に僕の話がわかりそうなのが他に居ないからね」
「わかりそう?あいつが?有り得ないよ。あいつはブルーを殺しているんだ。ジョミー。殺されるよ」
「今は、戦時中じゃないから、僕を殺して彼らの得になる所はないよ」
「せ、洗脳とかされちゃったらどうするのさ」
「あはは。もう僕には出来ないと思うけどね。もし、そうなったら君が僕を殺してくれ」
と笑った。
「……」
「トォニィ。そうはならないと思うけど、もし、何かあって本当に助けが欲しい時には、君を呼ぶから。必ず呼ぶからね」
と、微笑んだ。
「ジョミー、行かないで」
「もう、決めたんだ。トォニィ、僕の事を、君には君だけには解っていて欲しい。僕はミュウの皆の未来の為に降りるんだ。戦争は終わった。だけどまだ続いている。まだ終わっちゃいないんだ。僕らが始めた戦いだ。僕はそれを本当に終わらせなければならない。人類と生きるこれが僕のやり方だ。君には君のやり方、生きる道があるだろう。ここは君がするべき事がある。ミュウの皆を頼む。それは君にしか出来ない」
「ジョミー、あなたが視る未来は…それだけ?」
「…ん、戦後まだ一年…急ぎすぎていると思う?でもね、こうしてても、ミュウは生まれているんだ。それを知りませんでしたと見過ごせないだろう?僕らは止まってちゃいけないんだ」
「なら、人類と一緒に生きたい者だけでいいじゃない?そしたら、いつかは増えていくんじゃない?」
「今でも…迫害は続いているんだよ…トォニィ。一人では人類に押されてしまう。僕らは団結していかないといけないんだ。僕らの力は一人一人ではない。協力しあって初めて意味を持つ物なんだ」
協力しないといけないと言いながら、ジョミーは一人で降りると言う…。
ジョミーには遠い星で苦しむ仲間達の声が聞こえているのだろうか?
その声が聞こえない僕は、ソルジャーの資質が無いのだろうか?
僕は、ジョミーが船を降りる事を許可した。
あなたが見る先には何が見えているのか?
僕にそれを教えて欲しい。
その先に…。
何かがあるのなら…、
僕は同じ未来を見て、一緒に歩いてはいけないのだろうか?
何かが起こると言うのなら、
僕はそれからあなたを守る事は出来ないのだろうか?
もう、僕らは一緒にいられないのだろうか?
僕は何をすれば良かったのだろう?
誰か…それを教えて。
ジョミーが船を降りてから半年…
僕は眠れない日々だった。
そんな時、セルジュから連絡が入った。
「ジョミーはメティスに帰ってないですよね?」
「帰ってないよ。何かあったのか?」
「まだ、僕とキースと同僚の数人しか知りませんが…行方不明なんです。彼だけの極秘任務がある時があるので、それかと思ってたのですが…」
「何か…起きたんだ…」
お願いだ。
僕を呼んで。
ジョミー。
時間軸は多分戻らずに事象、事件を追ってゆくと思います。
「君と僕の行く未来」 3
大戦から約二年後
「彼らの謎を探ろう」
と言ったセルジュはペセトラに戻って行った。
ジョミーを連れてキースもペセトラやノアへ向かったので僕にはセルジュの報告を待つ日々になった。
シャングリラで行こうかと思ったりもしたけど、今のシャングリラはミュウ達の家と化していた。
もう一年以上この船は飛んでいない。
飛ばす必要が無かったので船の修理も進んでいなかった。
他の戦艦も同じような物だったが、あの三隻はジョミーが早々と修理をさせて、ノアとアタラクシアの仲間の元に向かっていた。
飛ばせられない理由は終戦した事だけではなかった。
今、このシャングリラには各星域からミュウが集まって来ていた。
彼らは戦前戦中の成人検査でミュウと判断された者達、そして、ミュウ因子を持つと判断された者達だった。
もう、ミュウと言っても人類は敵として見てはいけないと言われていたが、それでもそうレッテルを貼られてしまった者達はソルジャーの居るここを目指して集まって来ていた。
「ミュウ化した者だけを受け入れるしかない」
「その通りだ、この船は大きいけれど限度がある」
「ミュウ因子があってもそうならない者も多いんだ」
「では、ここに集まって来た者たちをどうするのか?」
「帰ってもらうしかない」
「戦後の混乱期にここまで来れたのも奇跡に近いんですよ」
「帰る場所の無い者もいます」
「それでも、我々にはそうしかできない」
「今までもミュウ化しない者は切り捨ててきたじゃないか」
こんな議論が毎日だった。
「だから、僕達は船を降りるべきなんだ」
ジョミーはそう言って反発された。
「ソルジャーの意見は無茶です。そんな事出来るはずもない」
「降りたら。殺されてしまいます」
一年前の、幽閉されるきっかけになったジョミーの言葉はちょっと酷かった。
「ずっとここに居るつもりですか?僕達は人間を皆殺しするつもりでここまで来たのか?それとも、人間と共存するつもりで来たのか?どっちなんです?」
この言葉は、戦中ずっと人間を殺してきた僕らにも辛い言葉だった。
僕はジョミーが殺したくないと思いつつ戦っていたのを知っている。
彼の最終的な目的は、ミュウと人間との理解と共存だ。
だけど、いきなりは無理だった。
殺しあっていたんだ。
だって、僕らはタイプブルーだから…。
戦うことしか出来ない。
「彼らはわかってはきているんだ。人間が僕らを全く理解せずに居たら、僕らはとっくに殺されている。戦争は終わったが、まだ問題が沢山残っている。これは僕らが始めた戦いだ。もう逃げ隠れは出来ないよ」
「それと、いつまで、僕を頼るのですか?人間が怖いなら怖いと言えばいいじゃないですか?何を気にしているんだ」
そう、ミュウの皆だって、このままじゃいけない事はわかっている。
だから、共生用の保護施設が出来た都市に行く者も居たし、積極的に人間と関り人間の中で暮らす者も出てきていた。
それでも、暴力的な事件はかなり起きていた。
人間がミュウを怖いと思うように、ミュウは人間が怖いんだ。
やっぱり、僕らと人間は違うんだという意見まで出てきていた。
惑星移住計画も出ていた。
違うと言い張るのなら、他の星へ行って暮らせばいいという意見には今度はジョミーが反対した。
「そういう意味で移住先を探してくれている訳じゃない」
「この宇宙で人が住める星はそうない。それを探すのも容易じゃない。彼らは住めるようにした星を僕らにくれるんだ。どこかに行けと言ってるんじゃない」
「もう、彼らを怖がるのは止めないか?」
「ソルジャー。それは、反対じゃないですか?彼らが我々を怖がっているんだ」
「ええ、そう。人は僕らを怖がっている。それなら、僕らが自分達で怖がらせないようにすればいい。だから、そこを理解しあう為にまず降りよう」
「簡単に言わないで下さい。あなたの様にはいきません」
ジョミーは人類との会議に良く出ていた。
人類の上層部が少しずつ彼を認め始めた。
それも、反発をよんだ一因だったのじゃないかと思う。
ジョミーのカリスマ性が薄れたのではなく、皆が我侭になったんだ。
彼がどんどんと先に行ってしまうのが、置いて行かれるのが怖かったんだ。
何故、そんな何も見ないように僕らはなってしまったのだろう。
地球へ辿り着いた。
それで満足してしまって、その先を考えようとしなかった。
こんな矛盾した気持ちになるなら、もういっそ、人間を力で押さえつけてしまおうという意見が再燃した。
それは、やがてジョミーを幽閉する形になった。
「グランパ、あなたがそこから自分で出ないと言うなら、僕が壊す」
「それは、しないでいて」
「だけど」
「大丈夫だから、心配しなくていい」
僕の抗議でやっとジョミーを解放できた時には、ジョミーの気持ちは固まっていた。
「僕が船を降りよう」
「人類の中へ行って、もっとちゃんと皆が生きていけるように話を進ませる。時間はかかるかもしれないが、暫く我慢をしていて欲しい」
「ジョミー。だめ。降りちゃいけない」
「もう決めたんだ」
「ジョミーは僕らを見捨てるの?」
「…ううん。何かあればすぐ来るし、いつでも呼んでいいよ」
「どこに行こうとしているの?」
「キース・アニアンに会って来ようと思っている」
「キース。あいつに?」
「人類に僕の話がわかりそうなのが他に居ないからね」
「わかりそう?あいつが?有り得ないよ。あいつはブルーを殺しているんだ。ジョミー。殺されるよ」
「今は、戦時中じゃないから、僕を殺して彼らの得になる所はないよ」
「せ、洗脳とかされちゃったらどうするのさ」
「あはは。もう僕には出来ないと思うけどね。もし、そうなったら君が僕を殺してくれ」
と笑った。
「……」
「トォニィ。そうはならないと思うけど、もし、何かあって本当に助けが欲しい時には、君を呼ぶから。必ず呼ぶからね」
と、微笑んだ。
「ジョミー、行かないで」
「もう、決めたんだ。トォニィ、僕の事を、君には君だけには解っていて欲しい。僕はミュウの皆の未来の為に降りるんだ。戦争は終わった。だけどまだ続いている。まだ終わっちゃいないんだ。僕らが始めた戦いだ。僕はそれを本当に終わらせなければならない。人類と生きるこれが僕のやり方だ。君には君のやり方、生きる道があるだろう。ここは君がするべき事がある。ミュウの皆を頼む。それは君にしか出来ない」
「ジョミー、あなたが視る未来は…それだけ?」
「…ん、戦後まだ一年…急ぎすぎていると思う?でもね、こうしてても、ミュウは生まれているんだ。それを知りませんでしたと見過ごせないだろう?僕らは止まってちゃいけないんだ」
「なら、人類と一緒に生きたい者だけでいいじゃない?そしたら、いつかは増えていくんじゃない?」
「今でも…迫害は続いているんだよ…トォニィ。一人では人類に押されてしまう。僕らは団結していかないといけないんだ。僕らの力は一人一人ではない。協力しあって初めて意味を持つ物なんだ」
協力しないといけないと言いながら、ジョミーは一人で降りると言う…。
ジョミーには遠い星で苦しむ仲間達の声が聞こえているのだろうか?
その声が聞こえない僕は、ソルジャーの資質が無いのだろうか?
僕は、ジョミーが船を降りる事を許可した。
あなたが見る先には何が見えているのか?
僕にそれを教えて欲しい。
その先に…。
何かがあるのなら…、
僕は同じ未来を見て、一緒に歩いてはいけないのだろうか?
何かが起こると言うのなら、
僕はそれからあなたを守る事は出来ないのだろうか?
もう、僕らは一緒にいられないのだろうか?
僕は何をすれば良かったのだろう?
誰か…それを教えて。
ジョミーが船を降りてから半年…
僕は眠れない日々だった。
そんな時、セルジュから連絡が入った。
「ジョミーはメティスに帰ってないですよね?」
「帰ってないよ。何かあったのか?」
「まだ、僕とキースと同僚の数人しか知りませんが…行方不明なんです。彼だけの極秘任務がある時があるので、それかと思ってたのですが…」
「何か…起きたんだ…」
お願いだ。
僕を呼んで。
ジョミー。