君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 一章「黄昏の海」十五話(Moon)

2011-07-07 01:08:34 | 『君がいる幸せ』(本編)一章「黄昏の海」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です

<用語>
木星軌道上の衛星メティス キースとジョミーがいる太陽系拠点
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム


   「君がいる幸せ」

   一章「黄昏の海」

  十五話(Moon)現在
 磁気嵐の無い時間を待って二人は戦艦との合流地点まで移動を開始した。
 ブルーの眠る「黄昏の海」が遠ざかってゆく。
 ゆっくりと進むバギーの助手席で、ぼうっと淡く青く光り続けているジョミー。
 話しかけると普通に受け答えている。キースは危惧していたような事態にならなかった事に少し安心していた。
 ジョミーは片足を上げて、その膝を抱えて座っていた。
 一時間程が過ぎ、合流地点が近づいた頃、今まで何も変化しなかった景色が揺らいで見えた。その時、ふいに思いついたように、急にジョミーが話し出した。
「キース、本当は僕は壊すつもりだった…。もう眠らせてあげようと。でもね、出来なかった…」
 その声はとても静かで、どこかへ誘われている気がした。
「本気で壊そうとしたのか?」
 キースが二年間見てきたジョミーなら、壊す事や、死を選ぶ事はしないだろうと信じ、ここを教えた。教える事に不安はあった。二年しか知らない。それ以前のジョミーは資料でしか知らなかった。心がざわつくのを感じた。それは、自分が未だミュウを敵として見るからなのか、もっと別の感情なのか、キースにはわからなかった。
 その考えが終わるのを待つかのように、ジョミーはキースを見つめていた。
「ちょっと止めて」
 そう言うとジョミーはドアを開ける事なくフロントガラスをすりぬけて外に出る。
 そして、キースのいるバギーの左側に立った。
 瞬時に移動するテレポートなら何度か見てきたキースだったが、物体を身体ごと通り抜けるのは見ていて気持ちの良いものでは無かった。
「ねえ、見て。あの赤い星を」
 通信を通さずにジョミーの声が聞こえてくる。
 外に出てきたキースの腕を取ると、二人はふわりと上へと浮かんだ。
 ジョミーが遠くを指をさす、赤い地球が見えた。
「あれじゃぁ、かわいそうだよね?」
 と静かに囁いた。
 この時のジョミーはミュウとも違うもっとずっと恐ろしく、人外なモノのような雰囲気をかもし出していて…キースは今まで感じた事の無い恐怖を感じた。
 これはブルーが作り出した怪物。
 あいつは、なんて物を残していったんだ。
 これを押さえていくのが俺の役目だと言うのか?
 そして、シロエがジョミーをピーターパンだと言ったのを想いだし、それが少し理解できた気がした。
 もしかしたら命令通りに動く『機械の申し子』であった方がずっと楽だったのかもしれないとさえ思えてくる。
 人間の感情とは変な物だなと思ってしまう。
 だが、これが、こんなに矛盾だらけなのが本当に人として生きるという事なのだろうなと思うキースだった。

 ブルーの眠る「黄昏の海」が遠ざかってゆく。
 二人は月を後にした。


   続く