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がれき視察まとめ2 最終回(K)

2012-06-03 | がれき処理
どれくらいの広域処理が求められているか
 東日本大震災によって、膨大なガレキが発生した。ガレキの発生量5月21日の環境省の「見直し」によって、より現状に近くなった。それによると、以下のようである。

岩手県・宮城県の沿岸市町全体における災害廃棄物推計量
(5月21日。環境省の「災害廃棄物推計量の見直し及びこれを踏まえた広域処理の推進について」)


 1年以上も経っているのに約20%のガレキが仮置場へさえ搬入されていないように見える。岩手県復興実施計画における主な取組の進捗状況(平成24年5月)で見ると、「生活環境に支障が出る災害廃棄物は平成23年7月末までに、おおむね移動を完了しました。平成24年3月末現在の撤去率は77.9%となっています。」となっている。22.1%残っているが、生活に支障のない、ということなのだ。生活に支障があるという報道もあるので、どんなところでどのように生活に支障をきたしているのか、具体的なところを知りたい。

「見直し」による広域処理対象量は次の通りである
合計129万tの不燃物のうち、岩手県の津波堆積物を大量に含む90万tについて岩手県は
・  大幅増の不燃物については、可能な限り県内処理、復興資材化等に努める
・  これにより広域処理をお願いする量を可能な限り縮減する
(岩手県災害廃棄物対策協議会資料「23年度の進捗状況・計画の改訂」より)
と地元での努力を表明している。復興のためには地元での仕事が必要なので、この努力を応援すべきだ。

 他の不燃物については基本的に埋立処分を想定している。全国各地で埋立地難の中で、自区内で埋立地を持ち、余裕のあるところはほとんどない。
 さらに、放射能も検出されているところ、されていないところがある(詳細は、環境省HP>広域処理情報サイト>(上部の帯にある)現地の状況>岩手県沿岸市町村の災害廃棄物の放射能濃度測定結果を見る 及び 宮城県沿岸市町村の災害廃棄物の放射能濃度測定結果を見る)。放射能汚染は東京電力の責任である。スウェーデン政府はチェルノブイリ事故の教訓から、放射性物質は拡散しないことを目指している。拡散してはいけない。

 木くずの62万tは基本的にリサイクルである。しかも、処理期限は厳密ではない。地元の木質燃料への加工、発電事業等への復興に役立てるべきである。木くずの処理についてマスタープランでは次のように処理方法を提供している。
• 木くずについては、木質ボードやボイラー燃料、発電等への利用が期待される。
• 一方、受入側との間で、受入が可能である木くずの形状や塩分など不純物等に関する条件について事前に調整を行うことが必要。(利用用途を決めないまま木くずを全てチップにすると、引取り業者の確保が困難となる)
• 降雨により塩分を除去しつつ、需要に応じて利用していくことも一案。その際、腐敗や火災防止の観点から、木くずを木材チップに加工しない状態としておくことが必要。
• コンクリートくずについては、復興の資材等として被災地で活用。木くずについては、広域での活用も検討。これらの廃棄物については、再生利用の需要量(受け入れ可能量)等を踏まえた、時間をかけた処理の検討も必要。
• 木くず、コンクリートくずで再生利用を予定しているもの:劣化、腐敗等が生じない期間で再生利用の需要を踏まえつつ適切な期間を設定
 大量の木くずは何年間も賄える燃料だ。リサイクルして復興に役立てる環境は整っている。地元でこそ復興になる。

 可燃物は43万t、可燃物は腐敗性もあり、できるだけ早い処理が必要だ。いま、両県では31基、合計6,195t/日の処理能力を持つ仮設焼却炉が建設あるいは予定されている。しかも、2年後のH26年3月31日には解体撤去される。何千億円もかけて作り、また高額な費用をかけて撤去する。一般の自治体の焼却炉は約20年間は使用する。大規模な仮設焼却炉をつくることは本当に、合理的な方法なのだろうか。

ガレキ視察及び調査から見えたこと
 以下の5点に要約してみた
1. 地元の雇用と産業が復興にとって不可欠という視点の重視を
2. 再生可能エネルギー社会、持続可能な社会への転換という視点の欠如。旧態然の処理一辺倒になっている
3. ブロック処理体制・一括発注が、処理・リサイクルの形態を画一的なものにし、地域に応じたきめ細かな処理・リサイクルができなくなった。それがリサイクルでも、迅速さでもマイナスの要素となった。特に石巻は混合物が多くなった。同時に地域の業者を締め出し、地元の産業と雇用の機会を縮小した
4. 災害廃棄物の形体が一般廃棄物ではなく建築廃棄物だということ、建築廃棄物については自治体が技術を持っていた経験もなく、専門の産業廃棄物業者がノウハウを持っているという事実。従って、災害廃棄物処理の責任母体の自治体が産業廃棄物業者の力を借り、協力しあう以外方法がなかったのに、建設業者ゼネコンに丸投げいう誤った選択をしたことも処理を遅らせた
5. 東松島市のように、過去の災害を教訓とし備えておいたことがスタートを早くし、地元でかなりの量を処理し、それだけ早期に処理でき、リサイクルの量も増やした。今回の災害を教訓に、対策を改善すべきだ。
これを、活かすことが本当の「絆」だと思う。

おわりに
 くどくどと長い報告にお付き合いいただきありがとうございました。重複や前後したものもあり、読みづらかったことがあったかと思いますがお許しください。
 東日本大震災、原発事故は世界に衝撃を与えた大災害です。大山鳴動してネズミ一匹、結局何も変わらず、原発は動き、被災者は見捨てられる、そんな予感を感じているのは私一人ではないと思います。その日本が変わらなくてどうする、との思いで調べ発信してしまいましたが、今も気持ちは変わりません。ご意見をお待ちしています。(K)

ガレキ視察まとめ1(K)

2012-06-02 | がれき処理
復興とは地元に仕事を復活させ、つくること
 復興とは命、住居、そして所得を得るための就業が確保されることである。人間らしく生きること、住居も、十分とはいえないが、ここでは生きる基となる、仕事、事業の再建と雇用についてガレキとの関係で考える。
 仕事のどの分野に力を入れるのか。将来性のあるもの、必要とされるものでないと需要はなくなり、行き詰まってしまう。原発事故を経験して、日本のエネルギー産業は再生可能エネルギーに転換するしかない。ガレキにある廃木材は、バイオマス発電のエネルギー源として活用できるし、発電施設・木材加工施設は、木くずを焼却するため仮設焼却炉の運転費用・全国に依頼する際の運搬費や受託焼却炉の運転費用を振り替え、復興予算から支出すればいい。将来、東北の森林の間伐材を燃料とすれば、森の管理・林業の活性化になるのではないか。
 復興事業を契機に、地元で持っているものを基盤に、地元の産業を起こす、これが本当の復興になる。それが具体化できるか、これまでの事実からまとめたい。

ブロック処理はゼネコンのための手法だった
 これまで見てきたように、宮城県はブロックに分けて大規模にし、それを一括発注する方式をとった。これによって、地元のh廃棄物処理業者が入札に参加できなくなり、ゼネコンが受託した。地元の業者は、分離発注をして仕事を地元に回せと要求している。
 新聞によると、宮城県内の大手の廃棄物処理業者は「廃棄物処理を迅速のやるコツは、こまめに集めてこまめに燃やすことなのに」と指摘しているという。実際、仙台市には3つの仮置場をつくり、3業者が丁寧に分別・処理をしている。焼却炉建設はゼネコンだが分別は地元業者だ。そうように仕分けをして分離発注すれば地元業者でも仕事はできるし、むしろ、その方がスタートも早く、分別も細かく非飛散性の石綿建築材も分けられていた。膨大な量なので、この際なんでも破砕して処理するという方法がとられ、カドミウムやアスベスト汚染など災害公害が心配される中、仙台では地元の専門業者が適正に処理していることを見てきた。地元業者であればノウハウも機材も、売却ルートも持っている。廃棄物業者が専門でないゼネコンが取り仕切るとしても、全体も地域も見えていない。生活環境への安全の方法も慣れていない。そんなゼネコンが困って日本全国に依頼する前に、まず、地元に仕事を回す方ことを優先すべきだ。

広域処理ではなく、設備を提供することで地元に仕事と雇用をつくる
 日本全国に、広域処理に協力を、のキャンペーンが張られている。これに反対するのが非国民であるかのようで、恐ろしい。
将来の東北の産業を見据えた復興を考えると、脱原発から再生可能エネルギー社会へという、この大きな転換期の中で、木材を有効利用した発電、燃料化などエネルギー分野への需要が高まり、主要な産業になり得るものと思う。その時、数十万tの木くずやコンクリートがらなどは、有効な燃料や原料である。
 木くずには除塩や洗浄の処理が必要だろう。結果をきちんと検証して、新たな資源化に挑戦してみる価値はある。木くずや、不燃物について下のようにチャレンジされている。設備は移動可能で、東北の現地で行えるものだ。広域で仕事を外に出すのではなく、地元に機材とノウハウを提供して、雇用と産業を起こす、それが復興への支援だ。

木くずの除塩と洗浄はこんな設備
宮城県山元町での木くず資源化方式(業務概要より)

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