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ゼロエネ住宅で原発不要(K)

2012-06-13 | 震災と原発
 5月14日に当研究所の「葛巻・住田見学ツアー」で葛巻の高原牧場で見学したゼロエネ住宅、なんと、埼玉の建設業者が作っていたのだ。

葛巻のゼロエネ住宅


ゼロエネ住宅の仕様


 大飯原発再稼働策動の中、ゼロエネ住宅は果たして原発なしでの現実的方法となりうるのか。住宅は省エネの大きな効果が期待できる分野。詳細を知ろうと思い、この建設会社を訪問することにした。会社は快諾してくれて、6月8日に訪問が実現した。

ゼロエネ住宅には、地中熱も利用 LCCM住宅にはさらに蓄熱も利用
 会社は川口の藤島建設、展示場はさいたま市内にあり、模型とパネルで説明してくれた。

ゼロエネ住宅は3つのタイプがある。
1 光熱費を半分に省エネし、売電価格と電気料金との差額を電気料金として支払い、電気代ゼロにする「光熱費ゼロ住宅」
2 断熱性と高気密性を向上させて、生活のすべてを再生可能エネルギーで賄う「ゼロエネルギー住宅」 売電収入約15万円/年
3 さらに、通気性、蓄熱暖房を推進し、売電収入を確保する「LCCM住宅(Life Cycle Carbon Minusの略称で、住宅の建設から、居住、改築、廃棄まで、住宅のライフサイクル全体でのC02の収支をマイナスにする住宅)」 売電収入約20万円/年

 藤島建設は、パッシブデザインを取り入れている。パッシブデザインとは、太陽の光や熱、風といった自然にあるものを最大限利用して快適な暮らしをつくること。
具体的には、太陽光発電、太陽熱利用、地中熱利用、風の流れの利用、蓄熱利用、夏は涼しく、冬は暖かくの設計、雨水利用など。上記のモデルでは太陽熱温水器は重量があるため、使用しないこととして算入されていない。



ゼロエネモデル住宅の仕組み

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モデルハウスの仕様

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 説明の中で
・ 太陽熱は屋根は無理でも、ベランダの手すりを水のパイプにすることも一案。
・ 蓄熱媒体は顕熱・潜熱を利用
   顕熱:温度が上昇下降する時に変化する熱
   潜熱:蒸発、融解、凝縮、凝固など、状態が変化するだけで温度が変わらない熱
・ 太陽光発電のセルは直列なので、葉が一枚乗っても発電効率が落ちるので、設置場所の選定が重要

ゼロエネ住宅で原発は不要になるか
 発電は電力使用時の容量で必要容量が決まる。特にピーク時の使用容量が重要になる。それは次の通りだ。

夏期最大電力使用日の需要構造推計(東京電力管内) (平成23年5月 資源エネルギー庁)より

産業用 28.3%、業務用41.7%、家庭用30%になる。全国の電力会社でも同じと想定する。

ここで、いま問題の関西電力に当てはめてみる。
 環境エネルギー政策研究所 ブリーフィングペーパー2012年4月17日(火)は次のように試算している。
 関西電力の発電容量は原発を除いて、2675万kw
 昨年並みの他社からの融通で121万kw
 昨年は10%の節電だったが、暑い夏を想定して5%だったとしても150万kwの節電。
 計 発電容量は、2946万kwは供給と算定できる。

 ピーク時電力は2010年の最高時で3095万kwだったので、その差は149万kw、約5%節電すれば、ピーク時も乗り越えられる。その30%を住宅が占めるので、ゼロエネ住宅になれば、ピーク時も余裕をもってのり越えられることになる。

 さらに6月11日、NHKクローズアップ現代では「日本を変える“節電革命”」を放送した。
 “電力不足”そして“電気料金の値上げ”、対応を迫られる現場で、いま新たな試みが始まっている。従来の“生産効率”最優先から転換、消費電力の50%削減を目標に掲げ、生産ラインの徹底した見直しに取り組む建設機械メーカー「コマツ」。急場しのぎの「守り」の節電ではなく、長期的な戦略に基づく「攻め」の節電の道を模索している。
 がテーマだった。

 藤島建設は言った。固定価格買取り制度が今年7月から始まる予定になっているが、太陽光は42円/kwhだが、地中熱利用を加えると34円/kwhになってしまう。これでは地中熱利用に不公平だ。同じ、再生可能エネルギーの利用なのに、なぜ差をつけるのか。どちらも普及した方がいいのに、なぜ、太陽光は高いのか。
 葛巻の風力発電といい、どうも太陽光発電を優先しようとしているようだ。太陽光発電のメーカーは日立、シャープなど大企業である。一方、地中熱建設に必要なのは土木工事の職人と設計の技術だ。風力発電のメーカーはデンマークだ。

ゼロエネ住宅を支えるのは現場力
 説明してくれた藤島建設の営業部長の話は原理と現場をよく知っていて、経験を踏まえ納得のいく話だった。因みに、彼をはじめ、営業部長は全員、現場監督上がりだった。現場の大工も仕事がないということをつくらないように、分譲住宅など様々な分野にも仕事をつくっているそうだ。現場を大切にする職場は創意工夫が生かされると感じた。
 仕事は川口、さいたま市などで、顔の見える範囲だ。お客さんはその7割が建てたお客さんからの紹介という。こうした会社が将来は伸びてほしい。(K)