日本各地で公務員の自衛隊体験入隊が相次いでいる。
自治体の仕事は住民の声を聞き実現すること
自治体は、「住民の福祉の増進を図ることを基本」としています。福祉とは「安定した生活環境」という意味です。従って、仕事を実施するにあたっては、法律・国や県の指針、場合によっては近隣の状況という条件もありますが、何よりも福祉の目標である住民の声に耳を傾けなければなりません。それを踏まえて、住民の声に基づき、実施する方法や時期を決める、というのが原点です。
公務員に求められる資質は、住民の声を聞き、考えること
住民は主権者です。住民にとっては住民の意見を聞いてくれるのか、まじめに考えてくれるのかが大切なのです。いわゆる民主主義であり、住民主権や自治の前提です。主権者の意見を理解し、ともに考えることこそ公務員としての大前提と思います。
たびたび、上司の指示をそのまま執行することが公務員のようにも言われます。それは、住民の意思である首長が決め、議会が承認し、それを上司が指示しているのだから、上司の指示=住民の意思になる、という論理です。
しかし、案の段階では、担当者は当然、住民の声を聞かなければなりません。首長が多くの住民の意見を直接聞くことは不可能ですから、担当の職員が住民との対話を行うことになります。住民の声がどれだけ反映されるかが、住民にとっての自治体の良し悪しになるように思えます。
自衛隊に求められるのは考えることではなく無条件に従うこと
自衛隊はどうでしょうか。自衛隊にとっては規律がなによりも重要です。アメリカの元海兵隊員ダグラス・ラミス氏は、以前に行った講演の中で、軍隊の訓練は「上官の命令に疑問があっても従う、むしろ疑問を持たずに忠実に従うことが求められます。考えずに従うことが訓練の目的」と言っていました。自衛隊でも戦うことを目的としている以上、考えることよりも従うことが最も大事というのは当然でしょう。
自衛隊と公務員は正反対
住民の意見を聞いて考え、住民の立場で仕事を進める公務員と、考えずに上官の命令に従うことを資質とする自衛隊とは正反対です。一体何のための体験入隊なのでしょうか。
災害時の訓練を目的とするなら、災害救助やそれを目的とする消防の方が適しているのではないでしょうか。アメリカの9・11の消防の活動を見て消防職員になった人もいます。
自衛隊への公務員の体験には、自民党の改憲草案の国防軍化への地ならし、露払いではないのか。最近の動きにきな臭さを感じます。