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再演「AKURO」

2008-11-30 23:52:10 | Weblog
神戸公演を観てきました。サエコさんは出ないのに、昼夜連チャンで(爆)。
まぁストーリーは初演と同じですから、ネタバレ気にせずどんどん書きます(笑)。

まず、舞台装置と演出の大幅な変更。
舞台は、真ん中に回転式の八百屋舞台。それも、結構高さがあります。そして、剣の形をしたセット。エミシのシーンでは、いかにも戦闘でボロボロになった剣が、錆付き折れて風化しているような形。田村麻呂のシーンでは、鋭く真っ直ぐな剣。
それらのセットが、上がったり下がったりして場面転換し、舞台が回転することで、場面が動いていきます。
あと、初演でも使った、ねぶたの絵が緞帳代わり。スライド画像などは、今回は使いませんでした。
背景は一切なく、初演での岩屋のセットや森の風景を表すような緑の垂れ布などもなし。
全体的に、照明が暗い感じでしたね。初演の時は、白鹿のシーンなどはまばゆいほど清らかなライティングだったと記憶してるのですけど、今回は、暗い舞台にスポットで白鹿が踊る、という感じ。
そういったセットや照明、そして演出のせいか、東北の大地の広がりよりも、むしろその地で起こる凄惨な戦いの記憶、その重苦しさを感じるようになってるかと。
ただ、大地の若々しさや無垢さ、そして大らかさと厳しさを象徴する白鹿が、広い舞台空間ではなく、スポットに当てられた薄暗い舞台で踊るので、却ってその象徴性が薄くなったのではないかと思います。
それよりも、登場人物たちの個々の人間性を描くことに焦点が置かれて、北の大地そのものの存在が希薄になってるかな、と。だから、白鹿の存在が、初演の時ほど浮き上がってこないような・・・。
初演の時に私が大いに気に入った、若々しい大地の息吹、あふれる命の輝き、空間がどこまでも広がっていくような鮮やかさが、今回はすっかり違っていたのは、ちょっと残念ですね。どれほど物語が重くても、切ないくらい優しくて光に満ちた大地が変わらずにあるからこそ、なおいっそう哀しみと希望が募る・・・あの空気が大好きだったので。
今日の舞台では、照明が暗めだったせいか、どうもそういった空間の広がりに欠けました。それと、大地の風景を表すシーンで、必ずといっていいほど風の音が入る。それも、なぜか荒野を渡るような乾いた風の音(苦笑)。
う~ん、いくら東北の寒い地方だからって、吹雪でもないのにあの音は・・・微妙。イメージとしてはもっと、深い森を渡る風のざわめきとか、濃密な命の息吹を宿した風の音のほうが、東北らしい気がするのに。あれは、北の大地の風の音じゃない(爆)。

脚本の変更としては、ところどころ、細かく説明するような台詞や歌のフレーズが増えてましたね。あと、台詞だったところがそのまま歌になってたり、歌だったところを台詞でしゃべるようになってたり。
主なナンバーはほぼそのままですけど、微妙にアレンジが違ったり、使う楽器の音が違ったり、というのはあったと思います。
大きな脚本変更はなかったので、ええ!?と思うような展開の変更もなし。
セットがすべて初演とは違う分、それぞれの立ち位置や動きはほとんど新しくなってます。

高麿の坂元さんは、いい意味で初演のまま。真っ直ぐで、新鮮で、真っ白な役。伸びやかな歌声もそのまま。・・・だからこそ、演出面でもっと空間の広がりを作って欲しかった気がする。私が一番大好きな、1幕のラストシーンが、夜明けの清々しさではなく、どこか夕暮れのようなライティングなんだもん(溜息)。
アケシが、初演のサエコさんから神田沙也加ちゃんになったことが、周囲のメンバーにはかなり役作りにおいて影響しているとは思いました。
サエコさんが、どこまでも無垢で清らかで、巫女のような神秘性と深い哀しみに満ちたアケシだったとすれば、沙也加ちゃんは生身の女性としての強さと弱さ、そして激しさを、心の奥にしっかりと持っている、そんなアケシ。
それに、沙也加ちゃんは小柄だというだけでなく、やはり舞台上での存在感がまだまだ。周囲の男優陣が、とくにオーラの強いメンバー揃いというのもあるでしょうけど、それに負けないだけのオーラが、やはりアケシには必要なんだな、と。
高麿が、出会う前から鈴鹿御前に憧憬を抱き、実際にアケシと出会うことで彼女の美しさと哀しさに惹かれて行く、という過程(私は初演ではそう解釈した)が、沙也加ちゃんだと当てはまらない(苦笑)。ん~・・・ただでさえ脚本では、高麿がなぜアケシと結ばれることになるかが唐突に思えるのに、過程を想像できるだけのお互いの心の通い合いが、まだよく見えてこないのがあるのかも。
それは、今さんの田村麻呂にも言えるかも。田村麻呂が、最初になぜアケシを連れて行ってしまったかが、いまいち見えてこない。最初から利用するためだけだったのかと、ますます田村麻呂悪人説が深くなる(苦笑)。サエコさんアケシが相手だと、最初は本当にお互いに惹かれあったのかもしれない、と思えるんですけどね。
田村麻呂も、舞台セットの変更と、立ち位置の変更のせいか、アテルイと対峙した時、高麿と対峙した時などの表情が、見えにくくなったので、却って田村麻呂の心の弱さや慙愧の念など、今さんのお芝居が見えなくなってしまいましたね。いまのままだと、田村麻呂は‘ただの悪人’になっちゃう(汗)。アテルイを裏切ったことへの恐れや後悔、地位と権力への執着とその心弱さ、アケシとその娘を捨てたことへの良心の呵責、そういった揺らぎのあった初演は、ものすごく面白い役だったのに・・・。
平澤さんのオタケ兄さんは、相変わらずカッコいい。けど、あの切れのいいシャープさが、初演ほどではないような?
舞台装置の変更と、あとエミシたちのアクションが高いジャンプなどの上下の動きが多いため、オタケ兄のあの狼のようにすばやく走り抜けていく鋭さが、若干削がれている感がなきにしもあらず。
それと、沙也加ちゃんアケシと兄妹というには、やっぱりちょっと差がありすぎ?(爆)よっぽど歳の離れた妹で、親代わりで育ててきたのね~ってくらい(苦笑)。サエコさんアケシだと、双子といってもいいくらいで、だからこそ目に入れても痛くないくらい大切だったのに~という無念さがにじみ出てた気がする(笑)。
捕らえた高麿の処遇でエミシたちがもめてる時、一人陰に座って皆から離れてるのは初演と同じだけど、その位置がほんとにセットの陰なの!そこじゃあ見えない~!と思わずジタバタしました(爆)。あのクールな座り方が超素敵なのに~。
ヒトカは、今回は友石竜也さん。オタケ兄よりだいぶ年下の弟分、という風情。沙也加ちゃんアケシに合わせた配役ですね。なにせ初演の藤本さんは、体も大きく、その分包容力も大きかったので、サエコさんアケシでもすっぽり収まったくらい。オタケ兄とも対等だったし。
友石さんヒトカも、アケシちゃんをとっても大事にしてるけど、優しいというよりは、ちょっと恐る恐る気味?そういうところに、若さの見えるヒトカです(笑)。

長くなりました・・・。まだまだ書きたいことはあるけど、ひとまず今夜はここまで。
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