さっちゃん 空を飛ぶ

認知症で要介護5の妻との楽しい日常を 日記に書き留めたいと思います

さっちゃん、ほぼ1年ぶりの留守番。戻って来てから意外な展開に

2020-02-19 23:46:27 | 留守番
午後の3時半ころ、スーパーまで買い物に行こうとさっちゃんに声を掛けました。
今日は言語リハビリの日で、さっちゃんは疲れたせいか布団の中。
でも、たいがい起き出してくるか、僕が「じゃあ、さっちゃんは留守番ね」と言うと、「私も行く」となるものです。
ところが今日は、「行かない、寝てる」と言います。
「留守番するんだね」と追い打ちをかけるように言っても「うん」としか言いません。
一人残すのは心配なんですが、「行かない」と言ってるのを無理矢理起こすわけにもいきません。

鍵を掛けても、鍵だけならさっちゃんも中から開けることが出来ます。
チェーンを外すことは出来ませんが、僕自身が出かけるわけですから、チェーンは掛けられません。
そこで僕は突っ張り棒を使うことにしました。
以前から使えそうだとは考えていたのですが、脱衣場の天井近くでごくたま~に使っている突っ張り棒があるんです。
その突っ張り棒を玄関の外に玄関のドアに引っ付けるように横に置くんです。
ドアを押さえるような感じで横に渡すんです。
普通の力があれば、内側からドアを押せば突っ張り棒なんかすぐに外れてしまうんですけど、非力なさっちゃんなら・・・・

買い物は自転車に乗って行きますし、さっちゃんと二人で行けばかかる時間の半分ほど、40分で戻って来ました。
心配しながら玄関まで来ると、突っ張り棒は残っています。
ホッとしました、さっちゃんは中にいます。
突っ張り棒を外して、ドアに手を掛けると、ドアが開きます!
さっちゃんは内側から鍵は開けて外に出ようとはしたんですね。
玄関の中は靴と一緒に僕のスリッパとさっちゃんのスリッパが置かれていました。

中に入ると、さっちゃんが何やら大きな声で喋りながら僕に向かってきます。
そして、玄関へ僕を引っ張って行こうとします。
買ってきたものを冷蔵庫に仕舞ったりしないといけませんから、さっちゃんの手を振りほどきました。
何度かそんなことを繰り返し、買い物の整理は終了。
さっちゃんはまだ強い口調でまくし立てています。

さっちゃんは玄関まで行って、靴を履いて外に出ようとします。
その靴を履いたまま、今度は部屋の中に上がってきて、僕の手を引きます。
「どこに行くのよ?」と聞いても「知らない」との返事。
「誰かに会いに行くの?」と聞いても「知らない」との返事。
留守番をしていても、留守番だということを忘れてしまうでしょうから、
さっちゃんは「なぜ自分は一人なんだろう?」「他の人はどこに行ったんだろう?」と強烈に思うはずです。
とにかく外に出て探したい気持ちになるはずです。
そんな強烈な感情が僕が戻って来ているにもかかわらず残り続けているのだろうと、僕は思います。
僕はもう部屋着に着替えていましたが、さっちゃんの勢いには抗しきれず、さっちゃんと外に出ることにしました。

僕が先に出てしばらく待っていましたが、さっちゃん出て来ません。
僕は数メートル先まで行って、姿を隠すような感じで待っていましたが、さっちゃんは出て来ません。
しばらくして音がするので見てみると、やっとさっちゃんが出て来たようです。

さっちゃんが階段を降りて行くので僕も後から付いて行きます。
棟の玄関を左に歩いて行きます。
僕もさっちゃんの尾行をする感じで、身を隠しながら付いて行きます。
でも、50mも行かないうちに、さっちゃんは向こうから歩いてきたおじさんに話しかけています。
そのおじさんも優しい表情でさっちゃんの全然意味不明な喋りを聞いてくれていました。
僕もすぐにその場へ行き、おじさんに「認知症なんですよ」と告げました。

そこからです。
その場で30分くらいだったでしょうか? 寒い夕暮れ時の立ち話が始まりました。
そのおじさんは2ヶ月ほど前に引っ越ししてきたばっかりで、同じ棟の住人です。
おじさんの奥さんも認知症だそうで、今は他の病気も抱えているので入院しているとのこと。
奥さんのいろいろな症状のことや、身内なんて当てにならないこと、
自分の職業や怪我で仕事が出来なくなったこと、自分の今の経済状況なども話してくれるんです。
今は孤独で寂しさが身に染みると話してくれました。

奥さんの認知症の症状はさっちゃんとはかなり異なっていて、激しい感情の爆発や幻覚などがあるようです。
「怒っちゃいけないんですってね」「何でも好きにやらせた方がいいそうですよ」とも。
「一番いいことってなんだか知ってます?」と聞くと、「手をつないで歩くことですって」と自分で答えてくれました。
僕にとっては初耳な内容。
これは昔から認知症になる以前から僕とさっちゃんの間では自然なことでしたから、少しはプラスに働いてるんでしょうかね?

ここでは書ききれないほど、いろいろ話してくれました。
最後に互いの部屋番号を教え合って、「お部屋に伺ってもいいですか?」「いいですよ」と言って別れました。

さっちゃんはこの間じゅう、普通に人の話しに耳を傾ける表情で静かに立っていました。
時折、さっちゃんに話題が及ぶときちんとそれに答え(もちろん意味不明ですが)、笑顔も浮かべていました。
さっちゃんが家を飛び出して外に出た元々の動機や情動はいつの間にか忘れられてしまったようです。
おじさんとの話が終わると、僕の「部屋に戻ろうか」の言葉に穏やかな表情で頷いてくれました。

おじさんも言ってましたが、「これが何かのいい縁ならいいね」と思います。
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