どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

新むかしの詩集(12) 「雪国」

2011-11-18 05:51:47 | ポエム

   




     「雪国」



  あさだ

  かがやく雪嶺の朝だ

  三国峠の新雪をきしきしと踏めば

  脚絆の足首がここちよく引き締まる

  断崖から無数に垂れさがる氷柱を

  なににたとえよう

  石の手摺に寄りかかり地獄谷を覗きこむ

  ーーめまいの奥で

  放射状の枝は何を呼びかけようとしたのか

  隧道を風とともにくぐり抜ける

  国境の雪の下に

  せせらぎが音をたてていた

  林道を横ぎる野うさぎの雪跡

  くっきりと刻んだ僕の足あと

  挨拶をかわして過ぎた若者たちの道筋も

  すべて躍動する命のしるしだ

  淡いひかりの中を

  風花が舞っている

  時の流れを量るように

  ゆっくりと落ちてくる

  見上げる山脈の向こうには

  ぼくの心の雪国がある

  駒子は風花となってなおも降りかかり

  無心に唄う葉子の澄んだ声は

  白い尾根を越えて

  ひがしの空へ吹きわたっている





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