アメリカアサガオ
古い家から出てきた老女が
向かいの家のブロック塀に向かって
いきなり落ち葉を撒き散らした
「だらしのないジジイだ」
塀越しに枝を伸べるハナミズキの葉が
道路に散らばるのを掃いているのだ
「一度だって掃いたことがないんだから」
老女はよほど腹に据えかねているらしい
しかも塀ぎわに捨てた落ち葉が風に舞い戻る
北からの風が老女の側に吹き寄せるのだ
自然の営みは人の思惑を斟酌しない
それがまた老女の神経を逆なでする
通りがかりに覗くと老女の家の横は竹の植え込み
昼なお暗い玄関には幸運が訪れる気配がない
まして北風の季節はすでにやって来ている
向かいの主人とどんな因縁があったのか
姿の見えない相手に老女の怒りはエンドレスだ
内戦の兵士も抗争のヤクザも恨みの色は赤黒い
落ち葉に混じって転がるハナミズキの実はどうだ
華やぐ思い出のように赤く艶々と輝いている
恨みを捨てて残りの日々を数えた方がいいのだが
(おばあちゃん、もういい加減にしたら?)
よく見ると竹林の中に風車のようなアメリカ朝顔
忍び込む北風を迎えてブンブン回る
なんだなんだこの光景は?
こんな古家に手品のタネが・・・・
この世はまんざら捨てたものではないようだ
北風に吹かれてぶんぶん回るアメリカ朝顔
鮮烈なイメージを楽しませてもらいました。
アメリカ朝顔の画像、たまたまでしょうが風に回っているように見えました。
円くこじんまりとした花は非植物的で、それが風車のイメージを補強しているのかもしれません。