ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

言葉のうらがわ

2010-01-25 14:01:28 | Weblog
含みのある言葉というのは、いろいろとあるけれど、
最近、聞くたびにニヤリとしてしまう言葉がある。
それは、「ないわけじゃないよね」という、他人の能力に対する評価の言葉だ。

基本的にセンスというか、技術というか、能力をもってはいるけど、
超級のプロではないし、なれないだろう、という評価。
「持っているものをうまく組み合わせれば、まあそこそこ食べて行けるんじゃない」
ということだろう。
言い方にもよるけど、もしプロから言われた場合は、
若干の侮蔑が込められているような気がする言葉。

確かにこのレベルだと社会的には代替可能だし、先行きは不安かもしれない。
でも、私はこれでいいと思っている。
上を見たらキリがない。
それに、いったいどこに上があるのだろう。どの尺度で比べればいい?

1993年に北京に留学していたころ、
同世代の中国人学生に何かの意見をきくと、「まあまあいい」「悪いわけではない」という、
非常にあいまいな回答が返ってくることが多かった。
私は、「これ好き」「これいいね」とハッキリ言うので、
あるとき中国人の友人から、
「あなたは日本人だねえ。好きと嫌い、いいと悪いをはっきりと言える。
私たちは、いつ足もとをすくわれるかわからないから、
何かに対する評価をストレートに述べることはこわいし、
そういった表現はしないようになってる」と言われた。

もちろん個人差はあるだろうけど、超エリートが言ったこの一言には、非常に驚いた。
そして、確かに中国人は、自分の要求をハッキリと言う人たちだけれど、
何かに対する評価を人前で言うときは、日本人とは少し違った独特の言い回しをすると思った。
発言者という個人を、なるべく希薄にした表現にするというか。
いまの中国では、だんだんに変わりつつあると思うけど。

「ないわけじゃないよね」という表現を聞くと、
その言葉が出てくる根っこは、それぞれの時、人において、
まったく違うところにあるのだけど、中国の友人とのその会話を思い出す。


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