昨日申し上げましたように、今の世界の株式市場は海外要因と国内要因の合体で、ある時は海外要因で動き、ある時は国内要因で動くというように、非常に複雑になってきており、投資家が相場感で投資をしますと「ひどい目に会う」ことになります。
つまり、昨日の延長が今日にあり、今日の延長が明日にあるというのが、経済を反映した株式市場の動きなのですが、ここに「突然、海外から悪材料や好材料が出る」と、それまでの経済を反映した株式市場は消えて、海外要因で上がったり下がったりしますので、20世紀型の流れについていく投資をしますと「いくらお金があっても足りない」ことになります。
海外要因と国内要因が複雑になっているというのは、簡単にいって外部環境に「方向感がない」ということです。良くなるか悪くなるかどちらかのコンセンサスがあれば、株式市場にいずれかのトレンドができますので、20世紀型の流れについていく投資で対応できます。
しかし、今の環境は外部環境にトレンドがないのですから、流れについていく投資では対応できず、「買えば高値、売れば安値」という投資家の思惑と反対に株式市場が動いてしまうといえます。
■では、どうすればよいのか?
株式投資で安全性を重視する場合には転換点投資がベストです。ここでいう転換点投資とは、「買ってからすぐに反発するタイミングを狙う投資法」という意味です。いつもいっている転換点投資は、株式市場が大きく下がったあとに大きく反発する転換点に限定しているので混乱するかもしれませんが、株の動きは「上がったり下がったり」を繰り返すので、たくさんの転換タイミングがあります。
この転換点を判断する方法として、4つのレベルがあります。
(1)年間1~2回の株式市場の大きな転換点(「ドナブ」レベル)
(2)年間4~5回の株式市場の小さな転換点(「カエサル」レベル)
(3)株式市場の押し目程度の転換点(割安株投資レベル)
(4)個別銘柄の転換点(自分流投資レベル)
転換点とは、「下げきってから戻る」必要があるので、なるべく大きく下がった方がよいといえます。ただし、日経平均が3日続落で反発したりなど、小さな小さな転換点も日常的にあるということです。
そして、転換点のレベルを判断するモノサシは、「下げの大きさ」と言い換えることができます。この下げの大きさには、日経平均などの目安になる指数の下げ幅だけではなくて、「銘柄の数」もポイントになります。上場している銘柄のほとんどが大きく下がっているタイミングはめったにないタイミングで、「一番大きな転換点」となります。
つまり、
(1)は、上場しているほとんどの銘柄が大きく下がった転換点で、年間1~2回。
(2)は、上場している銘柄の一部はまだ下げきっていない転換点で、年間4~5回。
(3)は、株式市場の短期的な押し目で、日常的によくある転換点。
(4)は、株式市場全体とは別に、個別銘柄が下がったあとの転換を買う自分流投資の転換点。
となります。
ただし、いずれの転換点を狙って買おうと思えば、「流れと反対のこと」をしなくてはいけません。いいかえれば、「買いにくいときに買い、売りにくいときに売る」という「投資家の心理に逆らう」方法ですので、投資家心理どおりに売買する「流れに乗る」投資法で勝てないときにあっている投資手法ということになります。
大きな転換点になればなるほど、心理的には怖くて買いにくくなります。今の株式市場は、一定以上下って、さらに一定以上上がった後の「押し目水準」にありますので、割安株投資と自分流投資のタイミングになります。
一方で、株式市場の大きな下げを待つ転換点投資では、まだまだ下げが足りませんので、タイミングになっていないといえます。また、森田式スイングトレード(超短期の転換点)も「相場がもみ合う=割高でも割安でもない」ので動けません。スイングトレードの場合の理想形は「相場の悪材料が海外から、どこかのタイミングで出てくる」ことになりますので、まずは国内の好材料か、米国の好材料で一旦日経平均が上昇したオーバーバリューで先物を売るということです。
■第一のシナリオ
イタリアがIMFの監視下に置かれたのは、米国とドイツとフランスの強力な圧力があったからです。イタリアはギリシャのGDPの6.5倍の経済規模を持っていると言われていますので、米国やドイツにとっては「イタリアのデフォルトは対岸の火事」ではなく、自国の経済を直撃するダメージを持っていますので、内政干渉であっても「イタリアの政治を信用できず、IMFが客観的に監視しなければ安心できない」という段階にまでイタリアが追い込まれているということです。
したがって、イタリアの悪材料が出てくるのは時間の問題だと思われます。そして、イタリアの悪材料が出れば世界同時株安が再び始まることになります。このイタリア問題はすぐにスペイン問題、ポルトガル問題、アイルランド問題に発展すると思われますので、イタリア政治が後手にまわりますと「世界同時株安」が起こるというのが第一のシナリオです。
■第二のシナリオ
今の世界の株式市場は昔のように「ヘッジファンドがその国を壊す」という余裕はなくなっていますので、どちらかというと「適当な好材料であっても、その材料を好感して買う」という性格が出てきています。したがって、先進国の首脳VS世界の投資家の戦いになるわけですが、この世界の投資家の心理をコントロールできるような政策を次々と発表できれば、第一のシナリオはすぐに起こる可能性は低くなります。
つまり、市場が求める方向の政策を先進国首脳が発表すれば、その内容が実効あるものでなくても株式市場は下がらずに上がる可能性があります。第二のシナリオとは政治が市場をコントロールできるような環境を作ることです。
これができれば、日本は景気対策によって経済が一時的に復活します。そして、一時的であっても経済の復活は株式市場の上昇につながりますので、第二のシナリオになった場合は「日本の株式市場は10000円を突破するような相場」になる可能性があります。
レポート担当:ケンミレ株式情報 森田 謙一