3750号富貴綿でええのんわ(有吉佐和子『香華』)

夫が自力でクーラーを設置した
和室八畳は普段使っていない
強いて言えば
故人になった姑が写真になり
小さな仏壇の後ろにいる

昨年夏、夫の退院前に
独力で　居間にあった本棚や
書類他もろもろを
段ボール箱&平板で
壁際に積み上げた
居間は食卓と隅に椅子数脚
TV のみ
がらんとなり、やっと
新カーペットと新冷蔵庫に交換

居間にどうしても必要な雑貨は
ミニマムになり
当面　手が回らない
『いつか何かをつくる材料』的
古着・端切・紙類は
なるべく自室へ運ぶ
『つくる』のはたいてい
居間でTV を視ながらですが
「今つくっているもの」以外
置かないように…それでも
手紙のための材料にひと箱余
思い切って裁縫道具も自室へ
座る定位置のまわりにどうしても
英和・漢和・地図帳(北海道・世界)
カッターや鋏、糊

透明なジッパー付小物入れに
本当に小さな端切を詰めこんで
なんとなく集まった
キャラクタークリアファイルの箱は
自室机の下へ
古着のデニムな綿シャツ、ほどいた古布
ハンガーラックへ

つくりたいものは、たとえば
古パジャマをほどいて部屋着
真夏のショートパンツ
寝巻のようなざっかけない浴衣
着物の妄想はとめどなく
クロスステッチをあしらった
帯や半襟、紐様々
テディベア模様、片身変わりチェック柄
クレイジーパッチワーク帯
布製の封筒

手が回らず退職後の夢となるか
またはシンプルに夢なのか
新品のノートを使うことさえ
贅沢ではと言いつつ
牽制してきた父の呪縛
縫いたいなら最初から布地を買って
縫えば楽に決まっています
いや、かえって高いと躊躇が働くのか
安いファストファッションや
サイズ大きめのメンズ古着を買う

古着から取り外した
ジッパー・釦・小さな装飾・レースも
仕分けて保管して
いよいよの時、さあどれが
一番似合い色サイズ適合なのか
選ぶのはとても楽しい

再々就職から十年余
それなりに肥えて、着られない古物を
なんとかと考える時
実はそこから裁断までは
実際縫って仕上げる時間より
濃密な慈味に満ちています