金木犀、薔薇、白木蓮

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45:デュマ・フィス 『椿姫』

2009-10-23 11:56:59 | 09 本の感想
デュマ・フィス『椿姫』(光文社古典新訳文庫)
★★★★★

社交界の花・高級娼婦のマルグリットは椿の花を好み、
「椿姫」と呼ばれていた。
彼女に出会い、一目で恋に落ちてしまった青年アルマンは、
彼女の恋人となるが、
パトロンからの援助で豪奢な生活を送り、奔放に振舞う彼女と
つきあうことは、嫉妬に悩まされ続けることでもあり、
彼女との時間のために財産を失ってゆくことでもあった。
マルグリットはアルマンの純粋さに惹かれ、
彼を本当に愛するようになる。
マルグリットはパトロンを遠ざけて贅沢な暮らしを捨て、
アルマンとの質素な暮らしを選ぼうとするが、
二人の噂を聞きつけたアルマンの父が、アルマンを尋ねて
パリへやってくる。

*************************************************

訳は西永良成。

マルグリットとアルマンの父とのやり取りに涙が……
泣かせどころのこのセリフ、

「それでは、一度だけでいいですから、
 お嬢様になさるような口づけをあたしにしていただけませんか。
 そうしていただけるなら、その口づけ、
 あたしが受ける本当に清純な唯一の口づけのおかげで、
 じぶんの愛にさからう力があたえられることでしょう」

↑この訳は、ちょっと……。
新潮文庫の訳のほうが自然な口語で好きだなあ。

しかしアルマンは泣き虫すぎるし、幼稚すぎて、
失笑するしかない。
それだからこそ、世間というものをよくわかって
先を見通しているマルグリットが痛々しい。

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2 コメント

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>narkejpさん (晶子)
2009-10-24 22:04:10
マルグリットがアルマンの父の要請を受け入れたのは、いずれ容色が衰えて愛を失うであろうことを踏まえたうえでの「別れることで、美しい思い出のままアルマンの記憶に残りたい」という女心なのだと思ってました。
アルマンの妹とマルグリットの妹の人物描写がなんとなく似ているから、アルマンの妹とマルグリットにも共通するところがあったのかもしれませんね

ヴェルディのオペラは見たことがありませんが、小説には出てこない登場人物もいて、小説とはずいぶん話が変わっているようですね。
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小デュマとヴェルディ (narkejp)
2009-10-23 20:40:07
デュマ・フィスの「椿姫」、学生時代に読みました。なぜ、アルマンの父親の勝手な依頼を受け入れてしまうのかが、当時は理解できませんでした。今になって思うと、たぶんマルグリット自身が、かつてアルマンの妹の立場をよく理解できる境遇にあったのだろう、もしかすると、没落した旧家の娘だったのかも、などと思ってしまいます。
これを題材に、マルグリットをヴィオレッタ、アルマンをアルフレードに変え、ヴェルディは「ラ・トラヴィアータ」という歌劇に作り替えますが、両者の違いを調べると、ヴェルディの意図が、よくわかります。ヴィオレッタ(マルグリット)が、より自尊心と自立心を持った女性に再造型されています。大好きなオペラです。フランコ・ゼフィレッリ監督で映画にもなっています。
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