金木犀、薔薇、白木蓮

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96-98:里中満智子『長屋王残照記〈1〉~〈3〉』

2023-04-27 13:05:27 | 23 本の感想
里中満智子『長屋王残照記〈1〉~〈3〉』
★★★☆☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
天皇の権力が不安定になる中で、娘を天皇に嫁がせ、
天皇家の外威という立場から権力の拡大を図る藤原不比等。
その不比等とは一線を画しながらも、
その高貴な血筋と政治家としての才気ゆえに周囲に疎まれる長屋王、
その運命は?
古代史を彩る華麗なる一族の命運を描いた里中歴史ロマンの名作がここに蘇る。
 
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『美貌の女帝』を読んで、この時期についての解像度が上がっていたので
ストーリーや血縁関係をすんなりと理解できた。
 
主人公は、理想主義的で頭の固い長屋王なのだけれども、
彼に惹かれつつもコンプレックスを抱き、また彼を殺さねばならなくなった
藤原の兄弟のほうにもドラマを設定することで、感情移入をしやすくしている。
不比等も悪役ではあるんだけども、完全な悪ではなく、
多面性のある人物として描かれている。
人間関係や権力争いだけでなく、
政策とその結果をしっかり描いているところもよい。
 
権力者が邪魔になった帝やその血縁者をないがしろにすることは
この後の歴史にもたびたび起こっているのだけども、
後世のそれが「圧力をかけて退位に追い込む」とか
「大事なイベントに他のイベントをぶつけて面目をつぶし、嫌がらせをする」とか
心理的な圧迫を加えて追いやっている印象があるのに対し、
この時代もそれ以前も、ストレートに「暗殺する」「謀反の疑いをかけて殺す」を
連発していてびっくりしてしまう。
(後世にも暗殺疑惑はあるけど、ここまであからさまにはやってないよね……)
古代氏族は天皇家と同じように、それぞれに神々の子孫として設定されているし、
「それぞれに力を持った氏族がいて、その中でたまたま頂点に立ったのが天皇家」であって
「天皇家が別格」という意識は後世よりも薄かったのかな。
 

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