朱野帰子『対岸の家事』
★★★★★
【Amazonの内容紹介】
家族のために「家事をすること」を仕事に選んだ、専業主婦の詩穂。
娘とたった二人だけの、途方もなく繰り返される毎日。
幸せなはずなのに、自分の選択が正しかったのか迷う彼女のまわりには、
性別や立場が違っても、同じく現実に苦しむ人たちがいた。
二児を抱え、自分に熱があっても休めない多忙なワーキングマザー。
医者の夫との間に子どもができず、姑や患者にプレッシャーをかけられる主婦。
外資系企業で働く妻の代わりに、二年間の育休をとり、
1歳の娘を育てるエリート公務員。
誰にも頼れず、いつしか限界を迎える彼らに、
詩穂は優しく寄り添い、自分にできることを考え始める――。
手を抜いたっていい。休んだっていい。
手を抜いたっていい。休んだっていい。
でも、誰もが考えなければいけないこと。
『わたし、定時で帰ります。』の著者が描く、もう一つの長時間労働。
終わりのない「仕事」と戦う人たちをめぐる、優しさと元気にあふれた傑作長編!
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とてもよかった。
専業主婦も、共働き主婦も、育休中の主夫も、
誰もがいっぱいいっぱいで、追い詰められている。
その閉塞感が身に迫ってきたし、
意外なことに「犯人は誰か?」というミステリー的な要素もあって
先が気になり、引き込まれた。
私が仕事で関わっている相手は富裕層なので
専業主婦率が結構高いの だけど、
日本社会全体で見たら、専業主婦は本当に絶滅寸前なのだろう。
社会のシステムのほうは改善されないし、
根本的なところは解決しないのだけども、
誰かと繋がりを持つことで 解消される苦難もある、
という救いの見える着地点に落ち着いていた。
最初は「なんだこいつ……」と思っていた登場人物にも
徐々に愛着が湧いてきて、最後には好きになっている。
中谷なんか、近くにいたら絶対腹を立てっぱなしになるし関わりたくないが、
彼に対して志穂が割と辛辣に言い返しているのと、
奥さんが手厳しいのとで、だんだん可愛く見えてきてしまった。