金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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121:葉室麟 『実朝の首』

2019-07-23 08:47:01 | 19 本の感想
葉室麟『実朝の首』(角川文庫)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

将軍・源実朝が鶴岡八幡宮で殺され、
討った公暁は三浦義村に斬られた。
公暁の従者で、実朝の首級を託された弥源太が一人逃れるが、
「首」奪還をめぐる駆け引きが始まっていた。
鎌倉幕府最大の謎を描く、新鋭の力作!

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鎌倉幕府関係の小説は昔、結構たくさん読んだのだけど、
「実朝が公暁に殺された」という点だけに
スポットをあてたものがほとんどで、
実朝の首の行方を問題にしているものには出会わなかった気がする。

首を探す政子・義時・義村たち鎌倉幕府側、
首を奪われた弥源太に奪った一味、
源頼茂、上皇の意を受けた交野八郎たち。
三つ巴の争いだけれども、
鎌倉と朝廷側は一枚岩ではなくそれぞれの思惑があり、
それぞれの関係も単純にはいかない。
どう着地するのか予想がつかず、最後まで楽しく読めた。

弥源太と交野八郎はオリキャラだと思って読んでたんだけど、
前者は吾妻鏡に、後者は説話に登場しているようで、
史実の織り込み方も見事。
単巻完結のわりに登場人物が非常に多いので、
ある程度、前提となる知識が固まっていないと
ついていけないんだけど、
「あ、この人出てきた」「この人も来た」
といううれしさがある。

ただ、最後の「すべては〇〇の思い通りだった」っていうのが、
なんか腑に落ちないんだよな~。
これは先日読んだ『承久の乱』もそう。
従来のイメージ通りではなかったとも思うんだけど、
そこまで先を見通していたとも思えない。
それくらい、吾妻鏡の彼に関する記述が
不自然だってことなんだろうけども。

コメント
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