人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2000年 ブダペストのコンサート JOSE CURA in concert Budapest 2000

2016-03-06 | コンサート


ホセ・クーラはハンガリーのブダペストで、これまで何回もコンサートを行っています。しかし、正規の映像が発売されているのは、この2000年のオペラコンサートだけです。
2008年に発売されたDVDには、特典映像として、"Star Without Cult"と題するインタビューがついています。家族のこと、音楽をはじめたきっかけ、音楽に対する姿勢・・など、さまざまな話とともに、ブダペストでのオーケストラと指揮のリハーサル、劇場やハンガリーの市街地で趣味のカメラを構える様子など、魅力的な映像も挿入されていました。

コンサートの曲目は、主にプッチーニとヴェルディのオペラアリアで、クーラが指揮したヴェルディ「運命の力」序曲や、プッチーニ「マノン・レスコー」間奏曲なども入っています。
アンコールも3曲歌い、まだ拍手がなりやまず、汗だくの額をタオルで拭きながら、観客の声援にこたえています。

クーラHPのDVD紹介


現在、アマゾンでは、DVDは在庫切れで入手が難しくなっているようです。画質はよくありませんが、Youtubeにあがっている何曲かを紹介します。

ホセ・クーラ コンサート in ブダペスト 2000
ファイローニ・ハンガリー国立歌劇場室内管弦楽団
JOSÉ CURA IN CONCERT BUDAPEST 2000
Artists: José Cura.
Conductor: José Cura, Janos Acs
Failoni Orchestra of the Hungarian State Opera




プッチーニのトスカから「星は光りぬ」
José Cura E lucevan le stelle Cavaradossi Tosca Budapest




レオンカヴァッロのラ・ボエームから "Testa adorata!"
José Cura Marcello (from La Boheme by Leoncavallo) Budapest


プッチーニの西部の娘から「やがて来る自由の日」
José Cura Puccini La fanciulla del West Ramerrez-2 Budapest


ヴェルディのマクベスから"Ah,la paterna mano"
José Cura Macbeth Verdi Macduff Oh figli, miei... Budapest




特典映像の一部をYoutubeから。インタビュアーにこたえて、7歳でピアノをはじめたが教師に「他の趣味をやったほうがいい」とすすめられたこと、指揮を学んでいたが、なぜ歌を始めたかなど、語っています。「運命の力」序曲のリハーサルの様子も。
Interview JOSE CURA in concert Budapest 2000


           

最後に、DVDには収録されていない、「アヴェ・マリア」を。
José Cura Bach - Gounod: Ave Maria Budapest 2000




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2008年 プッチーニのエドガール 4幕版 世界初演 Puccini / Edgar / World premiere

2016-03-04 | オペラの舞台―プッチーニ


ホセ・クーラは2008年、トリノのレージョ劇場で、プッチーニのオペラ「エドガール」(Edgar)の4幕版の世界初演に主演しました。
エドガールはプッチーニの2作目のオペラ。1889年4月21日にミラノ・スカラ座で初演されたそうですが、脚本が荒唐無稽であるなどのため不評で、その後3幕版に改訂されました。4幕版は失われたと考えられていたそうです。
エドガール自体が、あまり上演されないうえに、この時は、復活した4幕版のはじめての上演でした。

この公演はDVDになり、現在も購入可能です。日本でも一度、NHKで放送されました。ぜひ、このユニークで美しいオペラに多くの人に接していただきたいと思います。
この時の思いやクーラの解釈などについて、2015年9月にスロバキア国立歌劇場に出演した時に、インタビューにこたえて語っています。そこから興味深い内容を抜粋しました。また、YouTubeからいくつかの場面を紹介します。



出演:ホセ・クーラ、アマリッリ・ニッツァ、マルコ・ヴラトーニャ
トリノ・レージョ劇場 2008年世界初演
World premiere with act IV
Artists: José Cura, Amarilli Nizza, Julia Gertseva, Marco Vratogna, Carlo Cigni
Conductor: Yoram David
Direction: Lorenzo Mariani
Orchestra e Coro del Teatro Regio di Torino



●出演のきっかけ
2008年に、トリノ・レージョ劇場が私に「ジャコモの最後の後継者シモネッタ・プッチーニがエドガールの4幕版の公表を決めた」と語った。
私はすぐに、ぜひ、この「ワールド・プリミエ」のエドガールになりたいと言った。

     

●4幕版の意義
実際には、エドガールは、第1、2、3幕では、決して素晴らしいオペラではない。しかし、第4幕は、信じられないほどの発見だ。
ほぼすべてのプッチーニのオペラの萌芽が、このエドガールの第4幕のなかにある。私はおそらく、プッチーニ自身が、この驚くべき違いを認識していたために、このスコアを「隠す」ことにしたのだと思う。
エドガールの音楽は、彼の30にのぼるその後の作品の大部分に影響を与えている。プッチーニはこのことを秘密にしておこうと考えたのだろう。4幕版のエドガール世界初演へ出演は、偉大な歴史的な特権だった。



●DVDについて
私はこのDVDのカットの方法には満足していない。画像と音楽の両方の面でだ。
このレコーディングの品質は非常に良好だ。しかしこの歴史的イベントとしては、より丁寧な仕事が必要だったと思う。

クーラのHPのDVD紹介
 

●音楽業界の変化
私はまた、1994年に、プッチーニのオペラ「つばめ」の最終バージョンの世界初演に、テノールとして参加する偉大な歴史的機会があった。14年の間に、2回の大きな栄誉だった。
しかし今日では、私は、業界がこうした偉大な文化的イベント(初演版の発掘など)に興味があるとは、もはや感じることはできない。「時と金」(ミニット&マネー)、これが今日の世界を動かす唯一のものだ...。



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第2幕エドガールのアリア「快楽の宴、ガラスのような目をしたキメラ」
Puccini Edgar. José Cura


エドガールのアリアはコンサートでも歌っています。2000年ブダペストのコンサートより。
José Cura Puccini: Edgar Budapest 2000


クーラが「プッチーニのオペラの萌芽のすべて」があると絶賛するエドガールの第4幕から、本当に美しいデュエット。
トスカの最後のデュエットにそっくりという指摘もありますが・・。いかがでしょうか?
ホセ・クーラとアマリッリ・ニッツァ Jose Cura , Amarilli Nizza Edgar last duo




初演の際のリハーサルの様子やインタビューが見られるメイキング動画。おすすめです!
Puccini - Edgar - Prima Della Prima





*写真はクーラのHPなどからお借りしました。
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2010年 カールスルーエのサムソンとデリラ Samson et Dalila / Saint-Saëns / José Cura

2016-03-02 | 演出――その他


ホセ・クーラは、2010年に、ドイツのカールスルーエ・バーデン州立劇場で、サンサーンスのオペラ「サムソンとデリラ」を演出しました。舞台セットのデザインとあわせて、タイトルロールのサムソンも歌いました。サムソンは1996年のロールデビュー以来、20年間演じてきた役柄ですが、サムソンの演出はこの時がはじめてです。
この舞台は、クーラ自らが編集してDVDも発売されています。客席やカーテンコールを写さず、アップも多用した映画のような美しい映像です。ただしどういうわけか日本語字幕はありません。このあたり、来日も10年間ないことと同様に、残念でなりません。

Samson: José Cura, Dalila: Julia Gertsheva
Stefan Stoll, Lukas Scmid, Ulrich Schneider
Conductor: Jochem Hochstenbach
Direction: José Cura
Badishes Staatstheater, 22 / 24 October 2010


 

この時のプロダクションへの思いや作品の解釈などについて、インタビューから抜粋してみました。また、主な場面がYoutubeに17に分割されてアップされています。そのいくつかも紹介します。

クーラのサムソンの解釈はまた独特で、「歴史上の自爆テロリストの1人」であり「負のヒーロー」であるというもの。
インタビューでは、演出するにあたっての、このオペラ独自の難しさについても語っています。

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●多く出演したので良い演出ができるのか?
そうは思わない。しかし、もちろん私は、自分のパートだけでなく、このオペラの全てのテキストとすべての音を知っている。そして何より、このオペラの固有の複雑さ、困難や課題を認識している。

●「サムソンとデリラ」の危険
大きな危険は、ヘブライの紛争との関わりだ。もちろん中東での戦争と関連している。
ある者は今日のイスラエルとパレスチナの状況を説明しようと試みる。一方、歴史的な演出は、まるで1950年代のハリウッド映画になってしまう。

第1幕サムソンが群衆の中から歩み出て「止めよ、兄弟たちよ!」と歌う場面
Samson et Dalila, con José Cura. Fragmento 2.


●セックスと権力、宗教の名による殺りく
セックスと権力との関係は、このオペラの心理的な構造だ。サムソンは全男性と同様に、本能に従い、動物のように行動する。これが全体を非常に普遍的にしている。彼がなんらかの内省を示す唯一の場所は、第3幕冒頭のアリアだけだ。

サムソンは内省するが、しかし回復した後、再び強くなる。そして彼は、自分が神の代理として行動していることを信じて、他の人々を殺す。この点において、世界は、残念ながら今日も何ら変わっていない。



第2幕第3場 デリラに誘惑されてしまうサムソン 「あなたの声に心は開く」
Samson et Dalila, con José Cura. Fragmento 11


第3幕 目をつぶされ拘束されたサムソンの自省のアリア
Samson et Dalila, con José Cura. Fragmento 12


●強欲さと富への渇望の象徴
演出にあたって、私は放棄された油田のキャンプに全体の舞台を置いた。現在は留置施設として使用されている。オイルは強欲さと富への渇望を示す。これらは現実に、民族間の紛争の背後にあるものだ。人々は特定せずに、単に2つの民族としてのみ示した。

サムソンは「旧新約聖書」の言葉によるために、台本にはいくつか仰々しい場所がある。また低予算のハリウッド映画で使用されてきたために、サン=サーンスの壮大な音楽が浅薄な作品に見なされる恐れがある。

●子どもたちに希望を
課題はメッセージをもたらすことだ。神の名による殺人――特定の宗教に関わりなく、野蛮な時代錯誤だ。
私は子どもたちに、愛と希望のメッセージを託す。紛争に関与する2つの民族の子どもたち。彼らは、民族や宗教に関係なく、一緒に遊び、そして友人を守る。



●好奇心と夢を実現
Q、カールスルーエでは演出、セット設計、主演をしたが指揮は?
実際には指揮も、私にオファーがあった。しかし必要なリハーサルのための時間を持てなかった。
すべてに関わっているように見えても、十分な準備なしにはそれはやれない。

もしある日あなたが、夢だと思っていたことを実現できる機会を提供されたら、ノーと拒否するだろうか。
私は人生でいつも、好奇心と、まだやったことのないことへの意欲を持っている。いつか映画監督をやりたいと望んでいた。そして機会を得た。サムソンとデリラを劇場で撮影して、DVDにした。



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このプロジェクトを演出中の魅力的なメイキング動画がクーラ自身によってアップされていたのですが、残念ながら、クーラの動画サイトの再編作業中のため、現在は削除されています。
最後に、その一部分、「あなたの声に心は開く」のサムソンとデリラのデュエットの部分をYoutubeから。
Jose Cura duo from Samson et Dalila : Saint-Saëns


映画監督がクーラの夢の1つだったのですね。だからこのサムソンのDVDはほとんど映画を見るような形になっていたわけです。
また指揮もオファーがあったとのことですが、主演しながら指揮をするのは、さすがのクーラも、この時は無理だと判断したようですね。とはいえ、この言い方だと、リハーサルの時間さえとれれば、チャレンジしないこともないような・・。
この先、そんなプロダクションが登場するのかどうか、あるとすればどこの劇場で、どの演目で実現するのか、興味深いです。

またクラシック音楽・オペラを、常に現代の社会とむすびつけて解釈し、演出、演奏するというクーラの立場はいっかんしたものです。
興味がおありの方には、クーラの社会への姿勢と発言をまとめたページ「ホセ・クーラ 平和への思い、公正な社会への発言」をご覧いただけるとうれしいです。



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