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論文)青色光受容体による胚軸伸長制御

2019-05-30 05:25:47 | 読んだ論文備忘録

The Blue-Light Receptor CRY1 Interacts with BZR1 and BIN2 to Modulate the Phosphorylation and Nuclear Function of BZR1 in Repressing BR Signaling in Arabidopsis
He et al. Molecular Plant (2019) 12:689-703.

doi:10.1016/j.molp.2019.02.001

シロイヌナズナ青色光受容体のクリプトクロム1(CRY1)は、青色シグナルに応答した胚軸伸長阻害の主要因子となっており、cry1 変異体は野生型よりも胚軸が伸長する。一方で、ブラシノステロイド(BR)は、暗所、日陰、高温に応答した胚軸伸長を促進するホルモンとして機能しており、Paclobutrazol Resistance(PRE)ファミリー転写因子がこの応答の正の制御因子として機能している。中国農業科学院 作物科学研究所のSun らは、cry1 変異体でPRE1/5 の転写産物量が増加し、CRY1 過剰発現個体では減少していることを見出した。よって、CRY1は青色光下でBR応答遺伝子の発現を負に制御していることが示唆される。cry1 変異体はBR処理に対する応答性が野生型よりも強く、CRY1 過剰発現個体は弱くなっていた。したがって、CRY1はBRに対する応答性を負に制御している。RNA-seq解析の結果、cry1 変異体ではBR応答遺伝子の発現量が増加し、CRY1 過剰発現個体では減少しており、CRY1はBR応答遺伝子の発現を負に制御していると思われる。BR応答を正に制御しているBRASSINAZOLE-RESISTANT 1(BZR1)の機能獲得変異体bzr1-1D は青色光下での胚軸伸長が抑制されるが、bzr1-1D/cry1 二重変異体は胚軸伸長が促進された。このことから、CRY1はBZR1の機能を制限していると考えられる。各種アッセイから、CRY1およびCRY2はBZR1のN末端領域にあるDNA結合ドメインと物理的に相互作用をして、BZR1のターゲット遺伝子プロモーター領域への結合能を低下させることが確認された。BRによる胚軸伸長はBZR1/2のリン酸化/脱リン酸化によって制御されており、リン酸化されたBZR1は細胞質に局在し、脱リン酸化されたBZR1は核へ移行してターゲット遺伝子の発現を促進する。CRY1はBZR1のリン酸化を促進しており、青色光照射はBZR1の核蓄積を阻害していた。CRY1はBZR1をリン酸化するGSK3-likeキナーゼのBRASSINOSTEROID-INSENSITIVE2(BIN2)と青色光照射下で相互作用をすることが確認された。そして、青色光によって活性化されたCRY1はBZR1とBIN2の物理的相互作用を促進することがわかった。また、BIN2はCRY1とBZR1の相互作用を妨げることがわかった。以上の結果から、青色光受容体CRY1はBZR1と直接相互作用をしてBZR1のDNA結合を阻害することと、BIN2とBZR1の相互作用を促進してBZR1のリン酸化、細胞質局在を誘導することで、BRに応答した胚軸伸長を負に制御していると考えられる。

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