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論文)オーキシンと結合する新規F-boxタンパク質

2011-02-03 19:22:35 | 読んだ論文備忘録

The Arabidopsis Cell Cycle F-Box Protein SKP2A Binds to Auxin
Jurado et al.  The Plant Cell (2010) 22:3891-3904.
DOI:10.1105/tpc.110.078972

IN BRIEF
Auxin Binding by SKP2A Activates Proteolysis of Downstream Cell Cycle Regulators and Promotes Cell Division
Jennifer Mach  The Plant Cell (2010) 22:3877.
DOI:10.1105/tpc.110.221210

オーキシンはF-boxタンパク質のTRANSPORT INHIBITOR RESPONSE1(TIR1)が標的タンパク質のAux/IAAと結合する際の分子糊として機能していることが知られており、現在のところ、TIR1とそのホモログが唯一のオーキシン受容体とされている。スペイン マドリード工科大学-国立農業・食品研究所(INIA) 植物バイオテクノロジー・ゲノミックスセンター のdel Pozo らは、以前に、シロイヌナズナにおいて細胞周期を制御している転写因子のE2FCとDPBの分解に関与しているF-boxタンパク質のS-Phase Kinase-Associated Protein 2A(SKP2A)がオーキシン処理によって速やかに分解されることを見出しており、今回、SKP2Aはtir1-1 変異体でも蓄積されないことを明らかにした。このことは、SKP2AはTIR1に受容されて分解されるのではないことを示唆している。プロテアソーム阻害剤のMG132やオーキシンシグナル伝達阻害剤のterfestainA(TerfA)はSKP2Aの蓄積をもたらすことから、SKP2Aの分解はユビキチン-プロテアソーム系によってなされ、オーキシンシグナルによって制御されている。植物体粗抽出液を用いた実験においても、生物活性のあるオーキシンを添加した場合にのみSKP2Aの分解が起こることが示された。よって、オーキシンが直接SKP2Aの分解に関与しているのではないかと考え、プルダウンアッセイによりSKP2Aタンパク質とIAAが結合するかを調べたところ、SKP2Aはオーキシンと結合することが確認された。さらに、C末端側を削ったSKP2Aタンパク質によるプルダウンアッセイ、ヒトSkp2タンパク質やIAA分子の結合したTIR1タンパク質の立体構造を参考にして、SKP2Aのオーキシン結合部位を同定した。そして、オーキシンとの結合にとって重要であると推定されるアミノ酸残基を置換した変異SKP2Aタンパク質ではオーキシン結合能が低下していることを確認した。変異SKP2Aタンパク質は生体内で通常のSKP2Aよりも多く蓄積し、オーキシンを添加しても分解されず、MG132やTerfA処理をしても蓄積量に変化は見られなかった。よって、変異SKP2Aはユビキチン-プロテアソーム系による分解を受けず、オーキシンシグナルによって制御されないことが示唆される。SKP2A を過剰発現させるとE2FCやDPBの量が減少するが、変異SKP2A を過剰発現させた場合にはそのような減少は見られなかった。よって、SKP2Aタンパク質のオーキシン結合部位はE2FCやDPBの分解にとって重要であると考えられる。SKP2A 過剰発現個体では根の分裂組織での皮層細胞数の増加が観察されるが、変異SKP2A の過剰発現ではそのような変化は起こらなかった。SKP2AとDPBの結合はオーキシン添加によって促進されたが、変異SKP2AではDPBとの結合が減少していた。よって、SKP2AとDPBはオーキシン結合部位を介して結合しているものと思われる。skp2a 変異体の根は、オーキシンによる伸長阻害が野生型に比べて僅かに低減しており、tir1-1 skp2a 二重変異体はtir1-1 単独変異体よりもオーキシン抵抗性が増加していた。よって、この2つの遺伝子は協働してオーキシンによる根の伸長阻害に対して作用していることが示唆される。tir1-1 変異体においてSKP2A を過剰発現させることで側根原基の元となる始原細胞の細胞分裂促進がもたらされたが、低濃度オーキシン処理をした際にはtir1-1 変異体以上に側根が形成されることはなかった。以上の結果から、SKP2Aはオーキシンシグナルによる細胞分裂を制御するオーキシン結合タンパク質であることがわかった。オーキシンが低濃度の時には、SKP2AがEF2C-DPBと結合しないためにこれらの転写因子により細胞分裂が抑制されているが、オーキシン存在下ではDPBやEF2CはSKP2Aを介してユビキチン化されてプロテアソーム系によって分解され、細胞分裂・分化が引き起こされる。さらにSKP2Aの機能が行き過ぎとなるのを制限するためにSKP2A自身もユビキチン化されて分解される。SKP2Aがユビキチン化される機構については、現時点では明らかではない。

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