Abscisic acid accumulation modulates auxin transport in the root tip to enhance proton secretion for maintaining root growth under moderate water stress
Xu et al. New Phytologist (2013) 197:139-150.
doi: 10.1111/nph.12004
根は水分の欠乏を根端部で感知すると、主根の伸長や根毛の発達を促進させる。この過程には、ストレス応答に関与するアブシジン酸(ABA)や根の伸長に関与するオーキシンが関わっていると考えられる。香港中文大學のZhang らは、イネおよびシロイヌナズナの水耕栽培液にポリエチレングリコール8000(PEG)を加えて水ストレスを与えたりABAを添加したりすると、主根の伸長が促進され、細胞膜プロトンATPアーゼの活性が上昇してプロトン放出量が増加し、根毛密度が高まり、内生ABA量が増加すること、ABA生合成阻害剤のフルリドンを添加するとこれらの応答が抑制されることを見出した。シロイヌナズナのABA生合成変異体aba3-1 をPEGもしくはABA処理した際の主根の伸長速度、プロトンATPアーゼ活性、根毛密度、プロトン放出は、野生型よりも低くなっていた。PEGやABA処理をする際にオーキシン輸送阻害剤であるCHPAAやNPAを同時に添加したところ、主根の伸長等の水ストレス応答が抑制された。更に、シロイヌナズナをPEGやABA処理をするとオーキシンキャリアをコードするAUX1 やPIN2 の転写産物量が増加すること、AUX1 やPIN2 の機能喪失変異体は野生型と比較して水ストレス応答が低下していることがわかった。シロイヌナズナ細胞膜プロトンATPアーゼに欠損が見られるaha2 変異体の水ストレス応答は野生型よりも低下しているが、CHPAAやNPAを添加した際には野生型との有意差は見られなくなった。PEGやABA処理をしたシロイヌナズナ根端部のオーキシン含量は野生型と同等であったが、これらの処理をすることで、オーキシンの分布が根端部から表皮細胞や皮層細胞へと広がり、求基的なオーキシン輸送量が増加しした。以上の結果から、水分欠乏によって引き起こされた根端分でのABA蓄積がオーキシン輸送を増加させ、その結果、細胞膜プロトンATPアーゼの活性化とプロトン放出、根の伸長、根毛発達が起こると考えられる。
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