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論文)オーキシンの不活性化経路

2022-01-07 22:08:54 | 読んだ論文備忘録

The main oxidative inactivation pathway of the plant hormone auxin
Hayashiet al.  Nature Communications (2021) 12:6752.

doi:10.1038/s41467-021-27020-1

シロイヌナズナでは4種類のインドール-3-酢酸(IAA)の不活性化経路[DIOXYGENASE FOR AUXIN OXIDATION1(DAO1)による酸化、IAA CARBOXYL METHYLTRANSFERASE1(IAMT1)によるメチルエステル化、UDP-グルコシルトランスフェラーゼUGT84B1による配糖体化、GH3によるアミノ酸付加]が報告されている。IAAの代謝産物として2-オキソインドール-3-酢酸(oxIAA)が最も多いことから、IAAの酸化が主要な不活性化経路であると考えられている。in vitroの解析では、DAO1がIAAをoxIAAに転換することが確認されているが、シロイヌナズナDAO1 過剰発現系統はオーキシン欠損型のような表現型を示さない。岡山理科大学らは、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術を用いてシロイヌナズナIAA不活性化経路の各種変異体を作出して解析を行なった。その結果、dao1 dao2 二重変異体、iamt1 ugt84b1 dao1 dao2 四重変異体の芽生えに形態異常は見られなかったが、gh3.1 2 3 4 5 6 17 七重変異体(gh3-sept )は主根が短くなり不定根が多く発生するオーキシン過剰蓄積型の表現型を示した。また、GH3阻害剤kakeimide(KKI)処理をすることによっても同様の形態異常が生じた。gh3-sept 変異体では内生IAA量が増加し、IAA-Asp、IAA-Gluは検出されなかった。一方で、iamt1 ugt84b1 dao1 dao2 四重変異体の内生IAA量は野生型と同等であった。これらの結果から、IAAの不活性化においてGH3経路が中心的役割を演じていると考えられる。gh3-sept 変異体ではoxIAAが蓄積しているのではないかと推測したが、意外にもoxIAA量は野生型植物よりも減少した。[13C6]IAAを添加した実験から、dao1 dao2 二重変異体やgh3-sept 変異体ではoxIAAやoxIAA酸化産物のdioxIAAが生成されないことが判った。これらの結果から、oxIAAの生成はGH3の存在に依存しており、AtDAO1はGH3と同一経路の下流において機能していることが推測される。AtDAO1やイネOsDAOの基質特異性解析や結晶構造解析から、DAOは従来考えられていたIAAを基質としてoxIAAに変換する酸化酵素ではなく、IAA-アミノ酸オキシダーゼとしてoxIAA-アミノ酸結合体を生成する酵素であることが判明し、そのような活性が生体内においても確認された。IAA-AspやIAA-Gluは植物体に添加してもオーキシン活性を示さないことから不可逆的な代謝産物であると考えられていたが、細胞膜透過型のIAA-Asp-ジメチルエステル(IAA-Asp-DM)やIAA-Glu-DMを用いた解析の結果、細胞内に取り込まれたIAA-アミノ酸結合体はIAA-Leu-Resistant1(ILR1)/ILR1-like(ILL)によって遊離IAAに転換されることが判った。したがって、IAA-アミノ酸結合体は植物体において貯蔵型IAAとして機能していることが示唆される。ilr1/ill 変異体はIAA-Glu-DM処理による一次根の伸長阻害に対して抵抗性を示した。また、ilr1/ill 変異体は胚軸伸長や側根形成においてオーキシン欠損型の表現型を示した。dao1 変異体は根毛の伸長、側根の増加、子葉の拡大、稔実低下といった高オーキシン型の表現型を示すが、ilr1/ill 変異を導入することで改善された。ilr1 変異体では内生のoxIAA、dioxIAA量が大きく減少し、oxIAA-Gluが蓄積していた。野生型植物にIAAもしくはIAA-Glu-DMを添加するとoxIAA、dioxIAA量が増加するが、ilr1 変異体ではoxIAA-Glu量が増加し、oxIAA、dioxIAA量は変化しなかった。したがって、oxIAA-ApsやoxIAA-GluはILR1 によってoxIAAに転換されることが示唆される。以上の結果から、IAAの不活性化は、GH3-ILR1-DAOを介したIAAのリサイクルと分解により協調的に制御され、オーキシンのホメオスタシスが維持されていると考えられる。

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