Cytokinin Regulation of Auxin Synthesis in Arabidopsis Involves a Homeostatic Feedback Loop Regulated via Auxin and Cytokinin Signal Transduction
Jones et al. The Plant Cell (2010) 22:2956-2969.
doi:10.1105/tpc.110.074856
オーキシンとサイトカイニンは植物の様々な成長過程を制御している。両者は相互に作用しあうことが知られており、生合成に関して言えば、オーキシンがサイトカイニン合成を抑制することが報告されている。スウェーデン農業大学のLjung らは、サイトカイニンがオーキシン合成に与える影響を調査するために、サイトカイニン生合成の鍵酵素をコードするISOPENTENYLTRANSFERASE 8 (IPT8 )/plant growth activator 22 (pga22 )を発現させた形質転換シロイヌナズナにおけるインドール-3-酢酸(IAA)生合成を解析し、この形質転換体の茎頂、若い葉、根系のような成長過程にある組織ではサイトカイニン量に応じてIAA生合成が高まることを見出した。この現象は、野生型植物の芽生えにサイトカイニンを添加することでも再現された。サイトカイニンシグナルの負の制御因子として機能するレスポンスレギュレーターの四重変異体arr3 arr4 arr5 arr6 はサイトカイニンを添加しなくても野生型よりIAA生合成能が高く、サイトカイニン添加によってIAA生合成がさらに高まった。しかしながら、根端部のIAA含量は大きな変化を示さなかった。また、サイトカイニンシグナルの正の制御因子として機能するリン酸基転移メディエーターの四重変異体ahp1 ahp2 ahp3 ahp4 もサイトカイニン無処理で野生型よりも根のIAA生合成が高くなっていた。しかしながら、この変異体ではサイトカイニン処理によってIAA生合成が低下した。また、サイトカイニンオキシダーゼ(CKX)を発現させた形質転換体やIPTの機能喪失変異体のように内生サイトカイニン量を低下させた個体ではIAA生合成が低下していることが示され、サイトカイニンはオーキシンの恒常性を制御する因子として機能していることが示唆される。サイトカイニン処理は、Trp生合成経路の遺伝子(ASA1 /WEI2 、PAT /TRP1 、IGPS )や、CYP79B2 、CYP79B3 、YUCCA6 、NIT3 といったTrpからIAAを合成する経路の遺伝子の発現量を上昇させ、AMI1 、YUCCA5 、YUCCA5-like といった一部のオーキシン生合成経路の遺伝子の発現を抑制した。また、IAAの縮合(GH3.17 、GH3.9 )や脱縮合(ILL6 )に関与する酵素の遺伝子、インドールグルコシノレート(IG)生合成に関与する酵素の遺伝子の発現を上昇させた。さらに、オーキシンのシグナル伝達(ABP1 、AXR1 、IAA13 、IAA17 /AXR3 、IAA29 、IAA30 、IAA32 、IAA33 )や輸送(PIN1 、PIN2 、PIN5 、PIN6 、PIN7 )に関与する遺伝子の発現もサイトカイニンによる制御を受けていた。以上の結果から、サイトカイニンはオーキシン生合成の正の制御因子として機能し、成長過程にある組織のオーキシン量を高める作用があると考えられる。オーキシンはサイトカイニン合成を抑制することから、両者はフィードバックループを形成して組織内での相対的なホルモン量の調節を行なっていると思われる。
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