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論文)葉の向背軸性を制御するDof転写因子

2010-11-09 06:08:36 | 読んだ論文備忘録

The DOF transcription factor Dof5.1 influences leaf axial patterning by promoting Revoluta transcription in Arabidopsis
Kim et al.  The Plant Journal (2010) 64:524-535.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2010.04346.x

韓国 明知大学校のChoi らは、シロイヌナズナのT-DNA挿入アクティベーションタギング集団の中から葉が上向きにカールする変異体を得た。T-DNAの挿入部位とその近傍に位置する遺伝子の発現から、Dof転写因子ファミリーのDof5.1 (At5g02460)の発現量が増加いていることがわかった。Dof5.1 を薬剤誘導プロモーター制御下で発現させた植物体は、薬剤処理後に展開した葉が上向きにカールした。また、C末端側活性化ドメインを欠いたDof5.1タンパク質を恒常的に発現させた植物体は、葉が細くなり、下向きにカールした。T-DNA挿入によりDof5.1 の発現量が増加したDof5.1-D 変異体の葉の表皮細胞は表裏とも細胞の大きさが同じとなり、向軸側の表皮細胞は背軸側に比べて細胞の並びが不規則になっていた。Dof5.1-D 変異体の葉の断面を見ると、向軸側の細胞は不規則に分布し、背軸側の細胞は密に詰まっていた。このような異常な表現型は、葉柄断片においても観察され、木部細胞が中央部に集中していた。よって、Dof5.1-D 変異体の葉が上向きにカールする表現型は葉の極性が変化したことによって生じたと考えられ、これがさらに維管束形成層の発達にも影響を及ぼしているものと思われる。このような、葉や維管束の形態変化は局所的なオーキシンの生合成や分布の影響を受けていることが考えられたので、Dof5.1-D 変異体でのオーキシン輸送や応答に関与している遺伝子の発現を見たところ、IAA6 およびIAA19 の発現量が低下しており、Dof5.1-D 変異体でオーキシン応答プロモーターDR5 によりレポーター遺伝子(GFPGUS )を発現させてもレポーターの発現量は野生型よりも低いことがわかった。Dof5.1-D 変異体をオーキシン処理するとIAA6IAA19 や導入したレポーターの発現量が増加することから、Dof5.1-D 変異体では内生オーキシン量が低下していると考えられる。Dof5.1 の発現はオーキシンやオーキシン輸送阻害剤N -1-ナフチルフタラミン酸(NPA)で処理をしても変化せず、野生型と各種オーキシン関連変異体(massugu1arf7nph4arx6 )で発現量に差が見られなかった。Dof5.1 はすべての組織で恒常的に発現しており、維管束組織で強い発現が見られた。Dof5.1 の発現と葉の極性の制御との関係を調査するために、葉の向背軸極性を制御しているクラスⅢホメオドメイン/ロイシンジッパー(HD-ZIPⅢ)遺伝子群の発現を見たところ、Dof5.1-D 変異体およびDof5.1 を薬剤誘導プロモーター制御下で発現させた植物体でREVOLUTAREV )/IFL1 の発現量が増加していた。REV 遺伝子のプロモーター領域にはDof転写因子の結合することが推測される逆方向反復配列(TAAAGTとACTTTA)が存在し、Dof5.1タンパク質がこの配列と結合することが確認された。また、Dof5.1は生体内において核に局在し、REV プロモーターに結合して転写を活性化することが確認された。REVの機能はmiR165 /166 によって転写後に、ZPRタンパク質によって翻訳後に負の制御を受けることが知られており、miR165 もしくはZPR4Dof5.1-D 変異体で恒常的に発現させると葉が上向きにカールする表現型が消失した。以上の結果から、Dof5.1はREV の発現を活性化してmiR165 やZPRタンパク質とは別の経路によって葉の向背軸性を制御していることが示唆される。

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