Role of AUX1 in the control of organ identity during in vitro organogenesis and in mediating tissue specific auxin and cytokinin interaction in Arabidopsis
Kakani et al. Planta (2009) 229:645-657.
doi: 10.1007/s00425-008-0846-6
植物組織培養の古典的な実験から、オーキシンとサイトカイニンのバランスがカルスの再分化の方向を決定することが知られており、オーキシンの割合が高いと根に分化し、低いとシュートに分化する。しかしながら、シュート分裂組織には高濃度のオーキシンが存在することから、なぜオーキシンの割合が低いとシュートが分化するのかは不明である。組織分化における植物ホルモンの機能を明らかにするために、シロイヌナズナのT-DNAタグラインの種子50,000粒以上をスクリーニングし、発芽種子の根からカルスを誘導するために高濃度のオーキシンを必要とする変異体を得た。誘導されたカルスを野生型ではシュートが分化してくるホルモン組成の培地に移植すると、変異体由来のカルスはシュートではなく根を分化させた。また、変異体の芽生えは、根の成長を抑制する濃度のオーキシンやサイトカイニンを添加した培地での成長抑制の程度が野生型よりも弱かった。よって、この変異をもたらす原因遺伝子はオーキシン応答とサイトカイニン応答の両方に関与していると考えられる。プラスミドレスキューによって原因遺伝子をクローニングしたところ、オーキシン取込みキャリアのAUX1 が同定された。そこで、組織分化とオーキシンとの関係を見るために、オーキシンにより発現が誘導されるプロモーターDR5にレポーター遺伝子を繋いだコンストラクトを導入して組織内のオーキシン分布を調査したところ、サイトカイニンはカルスや芽生えの一部の組織(根の伸長領域、下胚軸と子葉の結合部、茎頂部)でのオーキシンの蓄積と再分配をもたらし、これにAUX1が関与していることが明らかとなった。通常、オーキシンのみで誘導したカルスは軟らかく水っぽいが、ここにサイトカイニンを加えるとコンパクトな塊のカルスとなる。よって、サイトカイニンによるオーキシンの蓄積は、外部からオーキシンを与えることによるオーキシン蓄積とは意味合いが異なり、サイトカイニンにはオーキシン蓄積に加えて他の何らかの機能があると考えられる。この時のカルス内のAUX1タンパク質の分布を見ると、オーキシン単独で誘導したカルスでは全体的に平坦に分布しているのに対して、サイトカイニンを添加するとカルスの形態変化に呼応して小さな顆粒状に分布するようになった。以上の結果から、サイトカイニンによって引き起こされるAUX1を介したオーキシンの局所的な蓄積と他の未知の変化がシュートの分化を引き起こしていると考えられる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます