Auxin and Ethylene Regulate Elongation Responses to Neighbor Proximity Signals Independent of Gibberellin and DELLA Proteins in Arabidopsis
Pierik et al. Plant Physiology (2009)149:1701-1712
doi:10.1104/pp.108.133496
植物が周囲の植物の接近に応答して成長を変化させる避陰反応は、フィトクロムやクリプトクロムといった光受容体が光スペクトルの変化を検知することでシグナルが発せられる。著者らは以前に避陰反応の際にジベレリン(GA)シグナル伝達を抑制するDELLAタンパク質の分解が起こることを報告[Plant Journal (2007) 51:117-126、DOI: 10.1111/j.1365-313X.2007.03122.x]しているが、これは避陰反応機構の一部でしかない。過去の知見から、避陰反応にはオーキシンやエチレンも関与していることが知られているので、それらの植物ホルモンとGAシグナルとの関係について調査した。シロイヌナズナを赤色/遠赤色光の比を下げたり青色光の照射量を減らした光環境下で育成すると避陰反応を再現することができる。その際のオーキシンの作用について幾つかの実験により解析したところ、避陰反応を誘導する光環境下で葉柄や下胚軸でのオーキシンの作用が強まり、オーキシンがこれらの器官の伸長に関与していることが確かめられた。また、ナフチルフタラミン酸(NPA)でオーキシン輸送を阻害すると避陰反応を誘導する光条件下でのDELLAタンパク質RGAの減少量が低下した。よって、オーキシンは避陰反応条件下でDELLAタンパク質の分解を促進することでGAシグナル伝達に関与し、器官の成長をもたらしていると考えられる。しかしながら、4つあるDELLA タンパク質遺伝子をノックアウトした四重突然変異体においてもNPAによる避陰反応の阻害が見られること、オーキシンシグナル伝達の突然変異体axr2-1 にGAを投与しても避陰反応を起こさないことから、オーキシンによる避陰反応はGAシグナル伝達経路以外の別の経路にも関与していると考えられる。エチレン非感受性突然変異体やエチレン作用阻害剤の1-メチルシクロプロパン(1-MCP)で前処理した植物体では避陰反応(葉柄の伸長)が見られないことから、エチレンも避陰反応の正の制御因子として機能している。しかし、DELLA 四重突然変異体を1-MCP処理しても葉柄の伸長が阻害されること、GA欠損突然変異体ga1-3 やDELLAタンパク質機能獲得突然変異体gai もエチレン(ACC)による下胚軸の伸長促進が見られることから、エチレンによる避陰反応はDELLAタンパク質とは関係がないと考えられる。避陰反応におけるオーキシンとエチレンの関係について、それぞれの非感受性突然変異体をホルモン処理することによる下胚軸伸長の変化を見たところ、オーキシン非感受性変異体をACC処理しても下胚軸の伸長は促進されないが、エチレン非感受性変異体のオーキシン処理ではされることから、エチレンの誘導する避陰反応はオーキシンシグナル伝達経路を介してなされていると考えられる。以上、植物の避陰反応にはDELLAタンパク質を介した制御に加えて、オーキシンやエチレンを介した制御が存在すると考えられる。
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