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論文)根端分裂組織におけるA型レスポンスレギュレーターの役割

2011-10-15 17:44:14 | 読んだ論文備忘録

Type-A response regulators are required for proper root apical meristem function through post-transcriptional regulation of PIN auxin efflux carriers
Zhang et al.  The Plant Journal (2011) 68:1-10.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04668.x

シロイヌナズナのサイトカイニンシグナル伝達に関与しているレスポンスレギュレーター(ARR)にはA型とB型があり、A型はサイトカイニンシグナルの負の制御因子として機能いている。系統樹解析から、10のA型ARRは5つの遺伝子ペア(ARR3 /ARR4ARR5 /ARR6ARR7 /ARR15ARR8 /ARR9ARR16 /ARR17 )に分類され、このうち3つのペア(ARR3 /ARR4ARR5 /ARR6ARR8 /ARR9 )については根で発現し、サイトカイニンに対する根の応答に対して機能重複して負の制御を行なっていることが知られている。米国 ノースカロライナ大学Kieber らは、未調査のペアの1つであるARR7ARR15 も根端で強く発現し、T-DNA挿入変異体を用いた解析から機能喪失したA型ARR の数が増えるにつれてサイトカイニンに対する感受性が高まり根の成長抑制を引き起こすことを明らかにした(ARR16ARR17 についてはT-DNA挿入変異体が得られなかったので解析を行なわなかった)。A型ARR の変異体における根の表現型にオーキシン輸送が関与しているか、オーキシン輸送阻害剤のN -1-ナフチルフタラミン酸(NPA)による側根形成阻害を指標として調査したところ、A型ARR の変異が増えるにつれてNPAに対する感受性が高まり、arr345678915 八重変異体で最も感受性が高くなった。arr 八重変異体の根でのオーキシン排出キャリアの発現をGFPとの融合タンパク質を用いてみたところ、根端でのPIN4のタンパク質量が大きく減少し、中心柱でのPIN1、PIN3も僅かに減少していた。PIN7は中心柱で僅かに減少していたが、根冠部での発現は増加していた。サイトカイニンによるPIN1、PIN3量の減少はarr 八重変異体では野生型よりも強く現れた。しかしながら、根冠コルメラ細胞で発現しているPIN3はサイトカイニンに対する感受性が見られなかった。PIN7の発現は野生型ではサイトカイニン処理によって僅かに増加するが、arr 八重変異体ではサイトカイニン処理による発現量変化は見られなかった。以上の結果から、A型ARR の機能喪失はPINの基底レベルのタンパク質量とサイトカイニン処理による変化を改変させることがわかった。サイトカイニンはオーキシンシグナルの抑制因子をコードするSHY2 の発現を介してPIN 遺伝子の転写を負に制御している。そこで、arr 八重変異体の根端部でのPINSHY2 の発現を見たところ、PIN2 の発現は減少していたが、他のPIN 遺伝子やSHY2 の発現は野生型との違いが見られなかった。野生型植物においてPIN1-GFPタンパク質量はサイトカイニン処理によって減少したが、PIN1 転写産物量のサイトカイニン処理による変化は見られなかった。arr 八重変異体ではサイトカイニン処理によってPIN1 転写産物量が減少した。内生PIN4 転写産物量は野生型、arr 八重変異体ともにサイトカイニン処理によって増加し、PIN4-GFP 転写産物量はサイトカイニン処理による変化は受けなかった。サイトカイニンによるSHY2 の発現誘導は、arr 八重変異体で発現誘導量が増加するといったことはなく、野生型と変異体で同じように見られた。したがって、野生型植物やarr 八重変異体でのサイトカイニンによるPIN1、PIN3、PIN4タンパク質量の減少は転写後になされており、変異体のサイトカイニン感受性の増加はSHY2 発現量増加によるものではないことが示唆される。arr 八重変異体ではPIN4タンパク質量が減少しているために根端部でのオーキシン分布が変化し、通常は細胞分裂をしない静止中心細胞が分裂をし、コルメラ幹細胞の一部がコルメラ細胞へと分化していた。以上の結果から、A型ARRは根端部におけるサイトカイニンによるPINタンパク質量の負の制御に関与しており、このPINタンパク質量の制御は転写後になされること、A型ARRはPINタンパク質量を制御することで根端部幹細胞の維持に貢献していることが明らかとなった。

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