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論文)サイトカイニンによる複葉形成の制御

2010-12-13 23:29:31 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin Regulates Compound Leaf Development in Tomato
Shani et al.  The Plant Cell (2010) 22:3206-3217.
doi:10.1105/tpc.110.078253

葉の形態は、1つの葉身からなる単葉と複数の小葉で構成された複葉に大きく分類される。複葉は葉の一次形態形成の際に周縁部未分化領域(marginal blastozone)の活性が維持されることによって形成され、複葉形成の制御にはサイトカイニンとKnotted1 like homeobox(KNOX1)転写因子が関与していることが知られている。イスラエル ヘブライ大学のOri らは、シロイヌナズナのサイトカイニン合成酵素イソペンテニルトランスフェラーゼ7(AtIPT7)およびサイトカイニン分解酵素サイトカイニンオキシダーゼ3(AtCKX3)をFILAMENTOUS FLOWERFIL )遺伝子プロモーター制御下で側生器官特異的に発現させた形質転換トマトを作出し、複葉の形態を観察した。AtIPT7 を発現させたトマトは、小葉が最大で4回全裂(野生型では2回)して超複葉(super-compound leaves)となった。また、小葉が野生型よりも丸くなり、葉軸の向軸側に異所的に分裂組織や花が形成された。AtCKX3 を発現させたトマトは、葉身の全裂が1回のみの小葉で構成された葉となり、葉縁に切れ込みのない全縁となった。このような小葉の全裂の違いは小葉形成の初期段階から観察され、サイトカイニンは葉縁部での形態形成活性を持続させて葉を複葉化させる作用がある。オーキシンも小葉形成の制御に関与していることが知られており、トマトのオーキシン応答抑制因子AUX/IAAをコードするSlIAA9 遺伝子の欠損変異体entiree )は複葉が単葉化する。e 変異体でAtIPT7 を発現させると超複葉形成が抑制され、野生型やAtIPT7 発現個体の葉原器に局所的にオーキシンを与えると複葉形成が抑制された。したがって、サイトカイニンによる複葉形成にはオーキシンシグナルの適切な分布が必要であると考えられる。また、AtCKX3KNOX1 を恒常的に発現させた形質転換体で発現させると、KNOX1 を発現させることによって生じる超複葉となる形質が抑制され、KNOX1にリプレッションドメインを付加することによってKNOX1活性を抑制した形質転換体でAtIPT7 を過剰発現させると、KNOX1活性の抑制によって生じる異常な単葉が形成される表現型が打ち消されて小葉が形成された。よって、サイトカイニンは複葉形成においてKNOX1転写因子の下流に位置していることが示唆される。

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