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論文)2つのE3リガーゼによるタイプ2 ACC合成酵素の安定性制御

2021-09-17 06:44:49 | 読んだ論文備忘録

Reciprocal antagonistic regulation of E3 ligases controls ACC synthase stability and responses to stress
Lee et al.  PNAS (2021) 118:e2011900118.

doi:10.1073/pnas.2011900118

米国 パデュー大学Yoon らは、シロイヌナズナのエチレン生合成制御機構の解析を目的に、エチレン生合成の律速酵素であるACC合成酵素(ACS)のACS5と相互作用をするタンパク質を酵母two hybrid(Y2H)スクリーニングで探索した。その結果、RINGタイプE3リガーゼのSeven-in-Absentia of Arabidopsis 2(SINAT2)が見出された。SINAT2はACS5および他のタイプ2 ACS(ACS4、8、9、11)とも相互作用を示したが、タイプ1 ACS(ACS2、6)やタイプ3 ACS(ACS7)とは相互作用をしなかった。また、ACS5はSINAT1とも強い相互作用を示した。SINATはブラシノステロイド(BR)を介したストレス応答に関与していることが報告されている。暗所で育成した芽生えはBR処理をするとエチレン生産量が増加するが、sinat1sinat2 二重変異体ではBRに応答したエチレン生産が減少し、SINAT2 過剰発現個体では増加していた。よって、SINAT2はBRが誘導するエチレン生産を正に制御していることが示唆される。一方で、SINAT2とACS5との相互作用にBRは関与していなかった。CULLIN3 E3リガーゼアダプターのETHYLENE OVERPRODUCER 1(ETO1)/ETO1-like(EOL)は、タイプ2 ACSをターゲットとしていることから、SINATとの関係を調査したところ、SINAT2とEOL2はACS5存在下でのみ相互作用をすることが判った。そしてこの相互作用はオートファゴソームにおいて生じていた。プロトプラストを用いた一過的発現解析から、SINAT2 を過剰発現させることでACS5量が減少すること、この減少はBR添加によって抑制されることが判った。よって、BRはSINAT2を介したACS5の分解を抑制していることが示唆される。一方で、SINAT2はBR存在下でEOL2の分解を促進した。したがって、SINAT2はBRに依存してACS5の安定性を高め、EOL2の安定性を低下させていると考えられる。また、ACS5とEOL2はSINAT2によってユビキチン化されることが判った。BRは暗所でのSINAT2とEOL2の分解を促進したが、明所では分解促進効果は見られなかった。BRは光条件に関係なくACS5の安定性を高めた。BRによるSINAT2安定性の低下は、26Sプロテアソーム系を介してなされていた。また、SINAT2とEOL2の安定性はオートファジー経路によっても制御されていると考えられる。BR処理によるSINAT2の分解促進は、タイプ2 ACSの変異体では緩和された。よって、タイプ2 ACSはSINAT2とEOL2をつないで複合体を形成することでBRによるSINAT2の分解に関与していることが示唆される。BR処理によるEOL2の安定性の低下はsinat1sinat2 変異体では見られなかった。同様に、BR処理によるSINAT2の安定性の低下もeto1eol1eol2 変異体では見られなかった。SINAT2とEOL2のポリユビキチン化は相互に依存しており、ACS5の存在とBR処理によって促進された。これらの結果から、それぞれのE3リガーゼは、BRによる他のE3リガーゼの分解に必要であり、ACS5は2つのE3リガーゼ間の相互分解を促進する役割を果たしていると考えられる。SINAT2には14-3-3タンパク質の結合モチーフがあり、14-3-3のタンパク質-タンパク質間相互作用を阻害するR18ペプチド処理は、BRによるACS5の安定化やエチレン生産量の増加を低下させた。また、14-3-3ωの過剰発現個体は野生型よりもBRによるエチレン生産量が増加した。よって、14-3-3ωはBRによるACS5の安定化とエチレン生合成に関与している。BRは14-3-ωのSINAT2への結合を促進した。SINAT2は、オートファジー受容体DSK2を介してBR応答性転写因子BES1の分解を促進することで、乾燥や固定炭素飢餓への応答に関与していることが知れらており、sinat1sinat2 変異体は固定炭素飢餓(8日間暗期)処理によって枯死した。芽生えを暗処理するとエチレン生産量が増加し、sinat1sinat2 変異体での増加量は野生型よりも少なく、SINAT2 過剰発現個体では多くなるが、各種解析の結果、固定炭素飢餓に対する感受性にエチレンは関連していないことが判った。以上の結果から、タイプ2 ACSタンパク質の量は、ブラシノステロイド依存的にSINAT2とEOL2の2つのE3リガーゼが相互に拮抗して分解することで調節されていると考えられる。

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