TCP1 Modulates Brassinosteroid Biosynthesis by Regulating the Expression of the Key Biosynthetic Gene DWARF4 in Arabidopsis thaliana
Guo et al. The Plant Cell (2010) 22:1161‐1173.
doi:10.1105/tpc.109.069203
ブラシノステロイド(BR)は、他の植物ホルモンと異なり、植物体内を長距離輸送されない。したがって、組織もしくは細胞単位で成長に必要とするBR量の維持がなされていると考えられる。そのような制御機構としては、BR分子の修飾による不活性化やBR生合成のフィードバック制御が知られているが、BR生合成を正に制御している機構についてはあまり解っていない。米国 オクラホマ大学のLi (中国 蘭州大学)らは、シロイヌナズナのBR受容体の1アミノ酸の置換によって生じた弱い変異体bri1-5 のT-DNAアクティベーションタギング集団の中からbri1-5 の半わい性の表現型が部分的に回復したtcp1-1D 変異体を得た。bri1-5 tcp1-1D 二重変異体は、葉の形はbri1-5 単独変異体と変わりはないが、bri1-5 単独変異体よりも葉柄が長い、花成が遅れ花序が大きいといった特徴が見られる。この変異体において、T-DNAは塩基性HLH型転写因子TCP1 (At1g67260)遺伝子の転写開始点から2281塩基上流に挿入されおり、TCP1 の発現量が増加していた。tcp1-1D 単独変異体は葉身が長くなり、これはBR受容体をコードするBRI1 やBR生合成酵素をコードするDWARF4 (DWF4 )を過剰発現させた個体と表現型が類似していた。BR生合成の変異体det2 とtcp1-1D との二重変異体はdet2 の表現型が部分的に回復したが、BR受容体の機能喪失変異体bri1-4 との二重変異体ではbri1-4 の表現型の回復は起こらなかった。TCP1のC末端にEARモチーフを付加したキメラリプレッサー(TCP1-SRDX)を発現させた形質転換シロイヌナズナは、BR生合成/シグナル伝達変異体のように、わい化・脱黄化した表現型を示した。TCP1-SRDX 発現個体にBRを与えるとわい化した表現型が回復すること、tcp1-1D 単独変異体にBR生合成阻害剤のブラシナゾール(BRZ)を与えるとわい化することから、TCP1はBR生合成経路に関与する因子であると考えられる。そこで、TCP1がBR生合成をどのように制御しているかを調べたところ、DWF4の活性とDWF4 遺伝子の発現量がtcp1-1D 変異体で高く、TCP1-SRDX 発現個体で低いことがわかった。さらに、クロマチン免疫沈降試験により、TCP1タンパク質がDWF4 遺伝子プロモーター配列と相互作用を示すことがわかった。よって、TCP1はBR生合成経路の鍵酵素をコードするDWF4 の発現を正に制御する因子として機能していると考えられる。また、TCP1 の発現がBRによって誘導されることがわかった。
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