Blue-light-mediated shade avoidance requires combined auxin and brassinosteroid action in Arabidopsis seedlings
Keuskamp et al. The Plant Journal (2011) 67:208?217.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04597.x
避陰反応(SAS)はフィトクロムを介して赤色/遠赤色光受容比の低下が感知されて誘導されるが、クリプトクロムやフォトトロピンによって受容される青色光量の低下も、胚軸、節間、茎、葉柄の伸長や葉の下偏成長といったSASを引き起こす。しかしながら、青色光量低下によるSASがどのような機構によって誘導されるのかは明らかではない。オランダ ユトレヒト大学のPierik らは、シロイヌナズナ芽生えを低青色光下で育成すると細胞伸長が促進されることによって胚軸が対照よりも約3倍長くなることを見出した。この伸長促進はオーキシン輸送阻害剤1-ナフチルフタラミン酸(NPA)処理によって阻害されることから、オーキシン極性輸送が関与していると考え、胚軸において発現しているオーキシン排出キャリアPIN-FORMED(PIN)の機能喪失変異体の低青色光下での胚軸伸長を調べたところ、pin3-3 およびpin7 変異体では胚軸伸長量が減少したが、伸長が完全に失われてはいなかった。pin3-3 pin7 二重変異体の伸長量はpin3-3 単独変異体と同程度であり、PIN3とPIN7は冗長的に作用しているのではないと思われる。PIN3 とPIN7 の発現は低青色光下において胚軸全体で増加しており、特に中心柱での発現が強くなっていた。TAA1経路によるオーキシン生合成の変異体wei8-1 やオーキシン受容体ファミリーTIR1/AFBの機能喪失変異体、オーキシン受容体阻害剤PEO-IAA処理は低青色光下での胚軸伸長が抑制されたが、完全には抑制されなかった。よって、オーキシンは低青色光下での胚軸伸長促進に貢献はしているが、他にも制御因子が存在するためにオーキシンの生産、輸送、シグナル伝達を阻害しても完全には低青色光応答を抑制できないと考えられる。そこで、成長促進に関与しているブラシノステロイド(BR)に着目し、BR受容体変異体bri1-1 、BR生合成変異体rot3-1 、BR生合成阻害剤ブラシナゾール(Brz)処理をした芽生えの低青色光下での胚軸伸長を見たところ、これらはすべて低青色光応答が低下していることがわかった。しかも、オーキシンの場合と同様に、どれも胚軸伸長促進を完全には抑制しなかった。通常の栽培条件で芽生えにオーキシンもしくはBRを与えるとある濃度で胚軸の伸長促進が飽和するが、このときの伸長量は低青色光に応答した時の伸長量には達していない。しかしオーキシンとBRを同時に与えると、それぞれのホルモンを単独で与えた場合よりも胚軸が伸長し、低青色光応答による伸長量と同程度になった。よって、低青色光に応答した胚軸伸長はオーキシンとBRの協同作用によるものであることが示唆される。そこで、PEO-IAAもしくはNPAとBrzとの同時処理、オーキシン変異体へのBrz処理、BR変異体へのPEO-IAA処理をしたところ、いずれの処理も低青色光下での胚軸伸長促進が完全に抑制された。したがって、オーキシンとBRの協同作用は低青色光に応答した胚軸伸長にとって必要十分であると考えられる。さらに低青色光下では細胞壁修飾に関与しているキシログルカンエンドトランスグルコシラーゼ/ヒドロラーゼ(XTH)活性が増加していることがわかった。シロイヌナズナには低青色光下で発現量が変化するXTH 遺伝子が11あり、それぞれオーキシン、BRに対する応答性が異なっていた。以上の結果から、オーキシンとBRはそれぞれが非冗長的、非相乗的に特異的なXTH 遺伝子ファミリーの発現を制御して低青色光下での胚軸伸長を引き起こしており、このことが低青色光応答に両方のホルモンが必要であることの理由となっていると考えられる。
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