Auxin regulates aquaporin function to facilitate lateral root emergence
Péret et al. Nature Cell Biology (2012) 14:991-998.
DOI: 10.1038/ncb2573
内鞘細胞の分裂によって形成された側根原基は、成長して表皮細胞の間から外へ突き出て側根となる。側根原基は主根の維管束とは独立しているので、分裂・拡張している細胞に水を効率的に透過して供給する必要がある。英国 ノッティンガム大学のBennett らは、水の輸送に関与するアクアポリンに着目して、側根形成との関係を解析した。シロイヌナズナの芽生えを横にすることで重力刺激を変化させ、屈曲した根の凸面に側根が形成される実験系を用いて、側根形成過程におけるアクアポリン遺伝子の発現量変化を見た。原形質膜型アクアポリン(PIP)13遺伝子と液胞膜型アクアポリン(TIP)4遺伝子について発現プロファイルを見たところ、17遺伝子中、14遺伝子の発現が側根発達において抑制されており、PIP1;4 、PIP2;5 は殆ど変化が見られず、PIP2;8 の発現量は増加していた。アクアポリン遺伝子の発現抑制は側根形成の初期に起こっており、この時期は内鞘始原細胞でのオーキシン蓄積時期と一致していた。しかし、発現量の高い4つのPIP 遺伝子の発現抑制は、他に比べてやや遅れて起こってた。根をオーキシン処理するとPIP1;3 、PIP2,4 の発現量は2倍に増加したが、他の遺伝子の発現は抑制された。ただし、PIP2;5 とPIP2;8 は抑制がしばらくして解除され、発現量が処理前の量を超えた。したがって、オーキシンは側根形成過程において多くのアクアポリン遺伝子の発現を抑制していると考えられる。オーキシン応答遺伝子の発現を制御しているオーキシン応答因子(ARF)のうち、ARF7が側根形成に関与していることが知られている。arf7 機能喪失変異体におけるPIP 、TIP の発現を見たところ、PIP1;1 、PIP1;4 、PIP2;1 、PIP2;2 、PIP2;7 はオーキシンによる発現抑制の程度が縮小していた。また、PIP1;3 、PIP2;5 のオーキシンによる誘導はARF7に依存したものであった。オーキシン処理による根での水の透過性の変化を調査したところ、短時間のオーキシン処理では変化は見られなかったが、長時間の処理によって透過性の低下が起こった。また、arf7 変異体ではオーキシン処理による水の透過性の低下が見られなかった。よって、ARF7はオーキシンによるアクアポリンの制御において重要であることが示唆される。長時間のオーキシン処理は根の皮層細胞の膨圧を低下させたが、arf7 変異体ではそのような変化は見られなかった。根で強く発現しているPIP2;1 の発現パターンを見たところ、中心柱での発現が強く、外側の細胞層での発現は弱くなっていた。また、側根原基の形成過程の極初期にはPIP2;1 の発現が見られるが、原基が発達すると発現は消えた。この発現パターンは、オーキシン応答レポーターDR5の発現パターンと逆になっており、オーキシンによりPIP2;1 の発現が抑制されることと一致している。側根発達の後期や長時間のオーキシン処理によって発現量が増加するPIP2;8 は、主に中心柱で発現しており、側根原型形成過程の中期以降に原基の基部や原基が接している中心柱部分で発現が誘導された。またこの発現はオーキシンやオーキシン応答阻害剤の添加によって変化することはなかった。したがって、側根発達の際には、中心柱、側根原基と原基を覆う根表層の細胞層との間での空間的、時間的な水交換の厳密な制御がなされていると考えられる。これらの知見から、以下のモデルが考えられる。側根の出現は、分裂過程にある原基細胞内での浸透圧の増加によって引き起こされ、側根原基への水の流入と膨圧の増加をもたらす。そしてこの圧力は側根原基を覆う細胞層から突き出させる。このモデルでは、オーキシンによるアクアポリンの空間的、時間的発現制御が側根形成にとって重要であることを示唆している。
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