中国農業科学院のWang らは、イネRNAiライブラリーから草丈の低い矮化変異体を単離した。この変異体はLOC_Os05g45280 がサイレンシングされており、BLAST検索の結果、この遺伝子はシロイヌナズナAtCOV1 (At2g20120)のホモログであることが示されたので、OsCOV-LIKE 1 (OsCOLE1 )と命名した。この遺伝子の発現抑制個体OsCOLE1-RNAi および過剰発現個体OsCOLE1-OE の実生にオーキシン(NAA)処理をしたところ、対照と過剰発現個体では葉鞘と根の接合部にカルスが形成されたが、発現抑制個体では形成されなかった。また、登熟期の植物体を比較すると、発現抑制個体は対照よりも第2、第3節間が短いために草丈が低く、過剰発現個体は第1、第2節間が対照よりも長く、草丈が高くなっていた。成熟期の第2節間の細胞の長さを比較すると、発現抑制個体は対照よりも短く、過剰発現個体は対照よりも長くなっていた。よって、OsCOLE1は細胞の大きさに関与することでイネの幹長を制御していると考えられる。登熟期の幹基部のオーキシン量を見ると、発現抑制個体は対照よりも減少しており、過剰発現個体では増加していた。よって、OsCOLE1 は幹基部のオーキシン含量の制御に関与しており、基部のオーキシン含量が細胞の大きさを制御していることが示唆される。OsCOLE1 をタバコで過剰発現させたところ、茎頂の成長が強く抑制され、茎頂近傍で側枝が発達した。よって、OsCOLE1 はオーキシン関連経路に関与して植物の成長を制御していると考えられる。解析ツール(TMHMM、PROTTER)によると、OsCOLE1タンパク質は2つの膜貫通ヘリックスを含んでおり、N末端とC末端は細胞質側にあると推測された。そこで、OsCOLE1にmCherryを付加した融合タンパク質を発現させて細胞内局在を確認したところ、OsCOLE1はトノプラストに局在していることがわかった。OsCOLE1 は様々な組織で発現しており、特に成熟した細胞での発現が強くなっていた。COV1の機能は不明だが、他のタンパク質と相互作用をするのではないかと考え、酵母two-hybridスクリーニングを行ったところ、LOC_Os07g34110がOsCOLE1のN末端側と相互作用をすることが判った。LOC_Os07g34110 はEamA-likeトランスポーターファミリーに属する2つのドメインを含んだ膜内在性タンパク質をコードしていると考えられることから、本遺伝子をOsCOLE1-INTERACTING PROTEIN (OsCLIP )と命名した。バイオインフォマティックス解析から、OsCLIPは膜局在タンパク質で10個の膜貫通ドメインを含み、シロイヌナズナAtWAT1と類似性があった。AtWAT1はトノプラストに局在するオーキシントランスポーターで、二次細胞壁形成や病原菌に対する抵抗性に関与していることが報告されている。OsCLIPとOsCOLE1は、お互いのN末端側を介して相互作用をしており、トノプラストに局在することが確認された。OsCLIP およびOsCOLE1 を発現させた酵母を用いた試験から、OsCLIPは外部環境から酵母細胞内への標識されたインドール-3-酢酸(IAA)の取込みを促進することが確認された。よって、OsCLIPはトノプラストに局在するオーキシントランスポーターであると考えられる。また、OsCLIP とOsCOLE1 を同時に発現させると、単独で発現させた場合よりもIAAの取込みが増加した。したがって、OsCOLE1はOsCLIPによるIAA輸送を促進していると考えられる。標識されたIAAの取込みは、標識していないIAA、インドール-3-酪酸(IBA)、NAAを添加することによって減少したが、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)の添加では阻害されなかった。以上の結果から、トノプラストに局在するOsCOLE1はOsCLIPと相互作用をしてOsCLIPによるIAA輸送を促進していると考えられる。
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