最初はねえ・・・・・美談かも? と、想った。
あの、中島みゆきが、自分の卒業した高校である、「北海道帯広柏葉高校」の卒業式で、自分のかつての名曲「時代」が歌われることに対して、祝辞も盛り込んだメッセージを送り、それが読み上げられたという。
それを報じた、テレビニュースのなかでは、高校生時代の「中島美雪」(本名)も入れ込んだ、集合写真も流れた(写真左下)。
(「TBSニュースバード」より)
ただ・・・・・あれっ!?と、首を傾げる映像も出てきた。
肝心の「メッセージ」の文章はともかく、文字が、私の知る限りの「中島みゆき」の自筆文字では無かったのだ。
仕事場には、彼女の自筆が書き込まれた原稿用紙も残されている。

彼女の熱心な、プロ・デビュー時からのファンならば、気付くであろう。
コレ、美雪の文字じゃ、無い!と。
おそらく、この催しを率先リードした、中島みゆきファンでもあると報じられている田口耕平教諭も、卒業式前日のあわただしい時ではあるものの、少なくとも「自筆」ではないことは、気付いたはず。
当時、LPの歌詞カードは、極めて特徴のある自筆の文字で書きつづっていたから。持っているのなら、見返して戴きたい。
一見して、女文字。
確かに、この「メッセージ」。どちらかと言うと、こちらも女文字。
しかし、明らかに違う。筆跡鑑定するまでも無い。
素直に信じられなかったのは、その文面の書き出しが、おかしかったのもある。
<中島みゆきさんからの、メッセージ>
えっ? はあ?
本人からの「伝言」で、書いたってことかいな?
それならば、理解出来なくもない。
が、しかし・・・・・。
ニュースには、再現フイルムのごとく、図書室らしき一室の片隅の机に向かって、まっさらな便箋に、「中島みゆきさま」と書き出す男子高校生が映っていた。
書いたであろう生徒は、桑田敦基クン。
この彼女の母校。昨年の6月から「時代 プロジェクト」と銘打って、来春の卒業式後のセレモニーで歌い上げる合唱に向けて、「時代」を合唱曲風にアレンジ。
全クラスで、クラス対抗で競いあって「時代」を練習。昨年の9月に開かれた学園祭で、そのコンクールまで行ない、話題となった。
そして、3月1日(日)に、卒業式が行われた。
さて、「メッセージ」が届いたということは、先の手紙に一体何を書いて、どこに送ったのであろうか?
「メッセージ」を、読み上げたのは、真鍋光輔クン。
当の卒業生たちは、母校を巣立ち、もう高校に問いあわせてもいない。
さらに、この「時代 プロジェクト」の起案者でもある、田口耕平教諭は、何度か電話を入れたが、つかまらない。
ならば、このニュースを取材した、HBC(北海道放送)帯広放送局へと聞いてみた。
「書いたのは、昨年の秋と聞いています。内容ですか? 「時代プロジェクト」の経緯のことと、出来れば後輩たちの歌う「時代」を聴きに、卒業式に来て頂けないものだろうか? という文面だったとのことです」
断って置くが、この騒動の責任を問うための記事では無い。曲解されると、困る。
その手紙なんですが、どこあてに出したんでしょうか?
「さあ・・・・そこまでは、知りませんが」
そう聞いたのは、彼女あてに、例えばファンレターを出すとしたら、3か所あるから。
まず、ヤマハのレコード会社の宣伝部気付け。次に、彼女が、「所属」というカタチをとっているヤマハのプロダクション。
そして、彼女の自宅に所在地も置く、有限会社の、節税対策も兼ねた個人事務所。
その3通りがある。
まさに「今」はどうか調べていないが、歌手であり、作詞・作曲家でもある中島みゆきは、ヤマハのアーチストが多くいるプロダクションに「所属」こそしているが、「契約」はしていない。
なので、辞めようと思えば、彼女はいつでも、自分の意思で辞められる。
逆に、プロダクション側が、もう商品価値は無い。カネにならない。そう判断すれが、いつでもサヨナラ出来る。
だから、常に創り出されるモノには、真剣勝負が付きまとう。なあなあは、皆無。
レコーディングは、行きつけの、馴染みのアメリカ、ロスアンジェルスにあるスタジオで、行なわれていると、マネージメント担当者。
創り終えて、発売すれば、その殆んどが、すぐさま発売チャート1位に、何週か立ち続ける。
ファンは、ほぼ必ず購入してくれる。根強いと言って良い、不動の人気。
恒例の「夜会」は、常に当日までに完売。高額の、年末のディナーショー並みに料金を上げても、ファンは必ず付いてきている。喰いついてくる。
「縁会」と題したコンサート、及びツアーも、常に満席。創り上げられる質は、常に驚くほど高い。
だから、ヤマハの方が、絶対に手放したくない。
女帝のわがままも、仕方が無い。無理が通れば、常識と替わる。
コンサート・縁会や、夜会、そして、プロモーションビデオの製作スタッフには、常に完璧を求められ、それを突きつけられる。
そのせいか、スタッフや監督に話しを聞くと、「自分たちは、まるで奴隷ですよ。彼女は、いわば女帝です。何でも、我々が言うコトを聞かないと、機嫌をそこねる」
そういう感想を、多く耳にした。
飛びっきり明るくはじけまくるディスクジョッキー・中島みゆき様のしゃべりは、創り上げた別人格。「中島美雪」という、先月の23日で63歳になった女性が、大衆向け「中島みゆき」という人物像を仕立て、創り上げ、演じているに過ぎない。
その混ぜ合わさった人物像は、コンサートで垣間見ることが出来る。
で、どこに手紙を送ったのか? 本当に送ったのかは、今となっては、疑問が少し残る。
報道によれば、卒業式の前日の2月28日に、その「メッセージ」が、高校の事務室に届いたという。
それも、手紙の返礼ではなく、A4サイズのファックス1枚(写真上、3枚)。
差出人の名前も、送ったヒトのファックス番号も書かれていなかった。
しかし、高校も生徒も、それを疑わなかった。それは、流れから言って、無理も無い。確認しようにも、届いたのは土曜日。卒業式は、翌日の日曜日。
事務所3つには、電話連絡がつかない。45年前に卒業していった大先輩の「中島美雪」の、携帯電話の番号を知る者は、誰もいない。
なにしろ、かつて親しかった松山千春が、呼ばれて、勇んで中島みゆきの自宅(写真下)に行ったものの、正面玄関のインターフォンを押すと、ぬあんと!彼女自身の声で「悪いけどさ、裏口に回って入ってきて!」と言われ、ガックリきた、と語っていたほど、ガードが異様に堅い。身を固くして、守る性格。

親しく何でも打ち明ける”真友”は、皆無に等しい。
裏返せば、だからこそ、あのような繊細で、且つ、鋭い切っ先を手にしたかのような歌詞が、書ける、とも言えるのだが・・・・・・。
HBC帯広放送局には、さらに記憶を確認する意味で、次のことを聞いた。
---確か、彼女。柏葉高校卒業以来、1度も学校主催や、卒業学年次の同窓会に出席してなかったですよねえ?
「そのようですね」
そう。そ~ゆう性格だった。
そ~ゆう女性が、果たして45年ぶりに、例え、後輩に懇願されたとしても、ハイハイと、遠路、卒業式に顔を出すであろうか?
確率ゼロ、と言っていい。
この時点では、HBC帯広放送局。その「メッセージ」が、実は中島みゆき本人が、まったく知らない、関わり合いの無い所から、送られた祝辞文面だったことは、知っていない。
私もまた、疑問を払しょくしたいがために聞きまくっている段階。そんなことになっているとは、知らなかった。
ただ、やはり紙面でこのことを報じていた、地元紙、「十勝毎日新聞」は、電話を掛けると、なにやらあわてふためいていて、長い間待たされた挙句、こちらの方からしびれを切らして切った。
翌日の、同紙のネット記事を見ると、前日の記事を、ばっさりと大幅削減。そのメッセージはまったく本人からのモノでは無かったむね、短く報じられていた。
では、「中島みゆき」サイドは、どうだったのであろうか?
自分で、直接確認取材。それが、極力基本。
すでに、「メッセージ騒動」は、一夜明けて、ネット上でも、火事場見物の野次馬のつぶやきも含めて、アレコレと報じられていた。
考えた末、「所属」とされる事務所へ連絡。担当者に聞く。
---改めて、今回のいきさつを、教えて戴けますか?
少々、うんざりしたクチぶり。自分たちが、あずかり知らぬ、遠いところで巻き起こった騒動とはいえ、答えないと、また疑惑を呼びかねない。
「最初はね、ウチのレコード会社の宣伝マンの方に、問い合わせがあったんですよ。NHKの札幌放送局の方から」
なるほど、そんな詳しい記事の書かれ方は、どこもしていない。
「帯広柏葉高校の卒業式でのこと、ニュースで流したいんですが、よろしいですか?という」
「何のことですか? と聞いたら、実は・・・・と。それで、こちらの方に、確認の連絡と、問い合わせがきまして。調べて、そんな、メッセージはまったく出していません、と答えたというわけです」
なるほど。
「もともと、ウチの中島みゆきは、そういう依頼が例えあったとしても、100%、今までお断りしていますので。基本的に、御受けすることは、ありえない」
やっぱり、か・・・・・・。そうだろうなあ・・・・・。
---で、一応、念のために、お聞きしたいのですが。そちらに、帯広柏葉高校の生徒さんから手紙の類いが、レコード会社も含めて届いていなかったでしょうか?
「ファンレターなど、ものすごい数が届いてますンでねえ・・・。スタッフで手分けして、全部まとめてチェックしているんですが、それ、記憶に無いんですよ。ですから、こちらとしては、届いていませんと言うほかありませんね」
---昨年の秋ごろに、出したらしいんですが・・・
「そうですか・・・・」
---そのメッセージには、ただいま海外の方でレコーディングをしており、卒業式には残念ながらうかがえませんと、あるのですが
「確かに、みゆきはアメリカのロスアンジェルスで、1年に1回ぐらいの間隔でレコーディングはしております。でもそのことは、熱心なファンならば、どなたでも知っていることですよ。アルバムを見れば、ロスアンジェルスのレコーディング・スタジオがクレジットされているほどですから」
とすると・・・・帯広にいる生徒も含めた柏葉高校関係者で、女性の中島みゆきの熱心なファンが、ファックスでギリギリ、良かれと思って、書き送ったか・・・・。
最初は、手紙を見はしたものの、迷い、ちゅうちょして手紙を置きっぱなしにしておいて、4か月。
なにしろ、同窓会に出てない、すっかり疎遠になったヒト。
それも、有りかな、と。
で、気付いた時には卒業式が明日に迫っている。あわてて急いで、彼女からの伝言をスタッフが書き送ったのかも? と想った。かなり、無理があるけれど。
---すいません。もうひとつ確認。3月1日、みゆきさんは、ロスアンジェルスで、レコーデイングしてましたか?
「いえ、行ってませんし、レコーディングもしておりません」
---では、東京の御自宅にいらした?
「さあ、そこまでは、お答えしかねますが・・・・」
---このお話しや、騒動。3月15日でしたか、出演される「オールナイトニッポン」で、取り上げますかねえ?
「まったくしないと、思いますよ~」
---最後にもうひとつ。とあるネット上に出ていた記事らしきもので、NHKの朝の連続ドラマ「マッサン」の最終回に、チラッと、ハプニング的に出るかも?という
「ありえませんねえ。だって、アレ、もう最終回の収録。とっくに終わっているじゃありませんか! 絶対に、ありませんと断定しておきます。もう、いいですか?」
ネット記事のデタラメさ。踊らされる気は無いが、いつも嫌になってくる。飛ばし記事過ぎる。
帯広柏葉高校。道立ではあるが、名称に道立は入っていないのに、入れ込んでいる記事も、目に付いた。
この高校。多くの人が知っている有名人が、卒業している。少し挙げるだけでも、”ドリカム”の吉田美和。TBSのアナウンサー。安住紳一郎。その実の姉で、チアリーディングの、元日本チャンピオン柏倉早智子。
柏倉のブログ等を検索してゆくと、幼い時の姉弟が、広大な原野に立って並んでいる、微笑ましい写真を見ることが出来る。
その安住にしても、吉田にしても、仕事の都合もあるのだろうが、ついぞ同窓会には顔を出してはいない。
だから、極めて、卒業生・中島美雪が疎遠・特殊というわけではない。
自ら「天邪鬼(あまのじゃく)」な性格と公言している、安住紳一郎であるし、おそらく母校で巻き起こったこの騒動を、話すだろうと思っていたら、アレレのレ~??
その「時代」を、生放送のラジオ番組中で流した。さあ!次は、母校のお話しを、と想ったら、それだけで終わってしまった。
中島美雪の、在学時や、その後の逸話など、ファンにすら知られていないことをつづる前に、そんな安住の、おかしくも哀しく切ない在学時の想い出を書いて置く。
当時彼は、「あず」と同級生から呼ばれており、帯広市内ではなく、通うには遠い芽室町から通学していた。
<前篇 完>