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『サキ短編集』⑥蛇の催眠術にかからなかった「七番目の若鶏」のような「ほら話」ばかりしていたので、「ほら話のような奇なる事実」が「事実」と思われなかった!

2020-08-11 16:46:10 | 日記
※サキ(Saki)、本名ヘクター・ヒュー・マンロー(Hector Hugh Munro)(1870-1916)、『サキ短編集』新潮文庫、1958年。

(6)「七番目の若鶏」
(a)ブレキンスロプは、「汽車通勤仲間に感心され評判となる話をしたい」といつも思っていた。最近、「2ポンド以上の重さのジャガイモ」の話をしたが、さっぱり評判にならなかった。
(b)そこで彼は話を「創作」した。「1匹の蛇がうちの鶏小屋にはいった。7羽いた鶏に、眼で催眠術をかけぼんやりしているところを噛みつき殺した。ところが『七番目の若鶏』はフランス種で眼に羽が垂れかかっていて、催眠術を免れた。そこでその若鶏が蛇を嘴(クチバシ)で殺した。」
(c)彼の話は、汽車通勤仲間に感心され大評判となった。しかし、そのうちに、別のスミス=バトンと言う男の「事故を免れた愛娘」の話が全盛となった。ブレキンスロプは、再び灰色の後景に押し込められてしまった。
(d) ブレキンスロプは、また新しい話を創作した。「伯母の側を通りかかった紳士が、若い男に仕込み杖で2度、刺され血が飛び散ったのに、平気でまた歩いて行った。2週間後、伯母が同じ場所を通りかかった時、ある銀行の支配人が、仕込み杖で刺し殺された。」この話は「ほら話」として評判になった。
(e)この時以来、ブレキンスロプは汽車通勤仲間の「ほら男爵」と目されるようになった。彼は自分を一座の花形に留めるため、次々と驚異事件を創作した。
(f)そんなある日、彼が勤めから帰ると、細君がトランプで「死神の首」という独り遊びをしていた。「とっても難しいのよ」と細君が言った。「お母さんの大伯母さんがやって、出来た時、興奮して死んだわ。」「お母さんは出来た晩に死んだ。病気だったのは確かだけど、不思議な偶然の一致だったわ。」
(g)細君は、なかなか出来ない。ブレキンスロプが見ると「だってできるじゃないか」と教えた。細君は「死神の首」がついに出来た。だがその晩、細君は亡くなった。
(h) ブレキンスロプは愛する妻を失った悲しみの内にあったが、彼はこのセンセイショナルな事件を新聞に載せてもらおうと考えた。彼は記事を書いた。ところが「作り話の名人」と言う噂が立っていたので新聞社は、彼の記事を事実とみなさなかった。記事は掲載されなかった。
(e) ブレキンスロプの友人たちは、「女房が死んだというのに、『ほら男爵』の真似ごとをするなんてけしからん」と彼を非難した。彼はこれまでの通勤仲間の交際から身を引いた。そして今、彼自身、かつて「七番目の若鶏」の話で評判となった男であったことも忘れてしまった。

《感想1》「事実は小説(ほら話)より奇なり」だ。
《感想2》羊飼いの少年が「狼が来たぞー」と嘘をつき、村人を驚かせるうち、ある日、本当に狼がやってきて食べられてしまうという話に似る。
《感想2-2》蛇の催眠術にかからなかった「七番目の若鶏」のような「ほら話」ばかりしていたので、「ほら話のような奇なる事実」が「事実」と思われなかったという話だ。
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安部悦生『文化と営利』「第5章」(その3):「集団主義」と「個人主義」の単純な比較では、中国人と日本人の行動パターンを説明できない!「家族主義」を入れるべきだ! 

2020-08-11 14:08:25 | 日記
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅰ部 経営文化の理論的解明」「第5章 組織文化のミクロ分析」(66-80頁)(その3)

(3)ミクロ組織論(その3):「組織文化」(「企業文化」)についてのフランシス・フクヤマ(政治学者)の視角:信頼&家族主義!(78頁)
L 安部悦生氏の議論を整理すると、「個人主義」・「家族主義」・経営者企業への信頼(「集団主義(a)」)・国有企業への信頼(「集団主義(b)」)が区別される。(※評者が「集団主義(a)」、「同(b)」を区別した。)①個人への信頼:「個人主義」、②家族への信頼:「家族主義」、③中間組織(Ex. 経営者企業)への信頼:「集団主義(a)」、④国家(国有企業)への信頼:「集団主義(b)」。
L-2 「集団主義」(grupizm)と「個人主義」(individualism)の単純な比較(※ホフステード)では、中国人と日本人の行動パターンを説明できない。もう一つの比較座標として「家族主義」を入れるべきだと安部氏が言う。
L-3 「信頼」の概念は、フランシス・フクヤマによるものだ。

(3)-2ミクロ組織論(その3-2):中国人の経営者企業における「個人主義」、「家族主義」、国有企業への信頼(「集団主義(b)」)(78頁)
M 中国人は、経営者企業や他家族が所有する家族企業では、容易にジョブホップし、忠誠心も少ない。「個人主義」だ。(「集団主義(a)」でない。)
M-2 中国人は家族への信頼が厚い。自らの家族が所有し経営する家族企業に対する信頼・忠誠心は圧倒的に強い。「家族主義」だ。イタリアも同様だ。
M-3 中国人は、国有企業への信頼は相対的に高い。「集団主義(b)」だ。

(3)-3ミクロ組織論(その3-3):日本人の経営者企業への忠誠心(信頼)!「集団主義(a)」!(78-80頁)
N 相対的に日本人は家庭での「家族主義」が弱い。
N-2 日本人は企業における忠誠心(信頼)が高い。家庭よりも企業重視の「会社人間」も少なくない。「集団主義(a)」だ。(これは「孝よりも忠を重視する儒教理解」の影響でもある。)
N-3 日本人は他家族の所有・経営の家族企業でも、企業への信頼(忠誠心)が強い。
N-4 日本人の場合、会社において「個人主義」よりも「集団主義(a)」が優越する。
N-5 日本人は国有企業に対する信頼は低い。(「集団主義(b)」は弱い。)ゲゼルシャフト的企業=中間組織に対する信頼は強い。(「集団主義(a)」は強い。)
N-6 日本で「集団主義(a)」が強いのは、「村八分」を避けようとする「ムラへの同調」という歴史的起源も考えられる。

(3)-4ミクロ組織論(その3-4):アメリカにおける「家族主義」・「集団主義」(組織人)の弱まりと「個人主義」化!(80頁)
O  アメリカの家庭における「家族主義」は弱くなり、「個人主義」が強くなった。
O-2 また企業(職場)においても、かつては中間組織である経営者企業の隆盛を見たが、「集団主義(a)」(組織人)から、より「個人主義」の方向に進んでいる。
O-2-2 これはサラリーマン型の所得(税率35%)より、キャピタルゲインの報酬(税率16%)の方が税制上、優遇されていることも一因だ。
O-3 アメリカでは国有企業への信頼(「集団主義(b)」)は極めて低い。
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①中国は「中台統一」のため、米軍に対する接近阻止/領域拒否をめざす!②米国は北朝鮮の中距離ミサイル開発に関心を持たない!③ロシアにとって日本は「協力対象」だ!

2020-08-11 12:15:37 | 日記
(1)中国:中距離核ミサイルを開発してきた中国の目的は、「中台統一」のため、米軍に対する接近阻止/領域拒否をめざすことだ!
(ア)中国は、米国による中距離弾道ミサイルの日本配備を警戒する。(イ)米国のINF(中距離核戦力)全廃条約からの離脱の目的は、条約の縛りを受けず中距離核ミサイルを開発してきた中国の抑え込みだ。中距離核ミサイルを開発してきた中国の目的は、「中台統一」のため、米軍に対する接近阻止/領域拒否をめざすことだ。(ウ)中国は「我々のミサイルは日本を標的にしない」と発言。(2019/12/18国防相)

《感想1》中国の第一の目的は「中台統一」だ。「中台統一」以前は、中国は日本を攻撃しない。日本にとって「中台統一」の阻止は、日本の安全のため重要だ。
《感想1-2》中国が「日本との友好が、日本への攻撃より利益がある」と考えれば、日本との「友好」を維持し、日本を「攻撃」しない。
《感想1-3》日米同盟は、中国への牽制として意味がある。
《感想1-4》日本の「専守防衛」は賢い選択だ。相手は日本からの攻撃を想定しない。相手国にとって日本はその限りで友好国だ。日本にとっても安全だ。
《感想1-5》米国の長距離弾道核ミサイルは、中国の都市の大部分を壊滅させることができる。だが中国による核ミサイルの反撃で米国の数都市も壊滅させられる。ともに大量殺戮だ。狂っている。狂っていない正気の指導者なら、米中核戦争の選択はしない。だが狂った指導者が出現することがありうる。

(2)北朝鮮:米国は北朝鮮の中距離ミサイルの開発に関心を持たない!
(エ)オバマ政権の2012年の米朝合意は核と長距離弾道ミサイルの開発停止だけで、日韓を射程に含む中短距離核ミサイルは対象外。これがアメリカのスタンスで今も変わらない。米国は北朝鮮の中距離ミサイル開発に(あまり)関心を持たない。

《感想2》日本が「敵基地攻撃能力」を持つことは愚かな選択だ。相手が日本からの攻撃を想定するので、相手国にとって日本は仮装敵国となる。日本にとって愚かな選択であり危険だ。日本は島国だ。一方で「ハリネズミのように自衛」し、他方で「敵を作らない」のが最も賢い。
《感想2-2》北朝鮮の攻撃を想定して「敵基地攻撃能力」を日本が持てば、北朝鮮が日本を仮想敵国とみなすだけですまない。中国までも日本を仮想敵国とみなすようになる。日本が「専守防衛」なら、中国にとって日本は敵でなく、その限りで友好国だ。北朝鮮にとっても仮想敵国にならない。その方が日本にとって安全であり賢い選択だ。
《感想2-3》北朝鮮のミサイルが心配なら、シェルターを作るべきだ。「机の下に入る」「頭をかばって野原でうずくまる」など、馬鹿げている。
《感想2-4》北朝鮮は米国と全面対決しない。軍事的に北朝鮮指導部が壊滅・絶滅されるからだ。北朝鮮が日本をミサイル攻撃するのは、米軍基地を攻撃する場合だ。だがそれは米国との全面対決に至るから、北朝鮮はその選択はしないはずだ。

(3)ロシア:日本は「地域の安定と安全確保のための協力対象」だ!
(ア)ロシアは、地域の力の均衡(ロ米中日韓北朝鮮)を崩したくない。
(イ)日ロの平和条約交渉停滞に関し「対日関係をこれ以上こじらせたくない」とロシアは考える。(イ)-2ロシアにとって、日本は「地域の安定と安全確保のための協力対象」だ。(イ)-3ロシアの脅威は、第一に米国だ。「日米同盟の矛先をロシアに向けさせない」ことがロシアの意図だ。(日米同盟の対象は中朝であるのがよい!)
(ウ)「外交・安保戦略の多角化」をロシアは目指す。(ソ連時代の盟主の地位は今のロシアにない。)そのためにロシアにとって日本が必要だ。
(エ)親密に見える中国との関係もロシアには微妙だ。(a)南シナ海などでの中国の権益主張に巻き込まれ、関係国との関係を傷つける懸念。(b)経済面で中国依存が進む事への懸念。(c)米国に対抗するため中国との協力が必要だが、「中国が強大化すればロシアの立場は弱まる」というジレンマ。(d)ロシアは「米中による世界の二極化は日本とロシアの利益にならない」と日本に秋波さえ送る。
(オ)日米同盟は「日本と中朝との衝突を防ぐ」点で、「東アジアの安定を支持するロシアの利益に合致する」との意見もロシア国内にある。

《感想3》ロシアの眼は、ソ連時代から、ヨーロッパとアメリカにむいている。日本はロシアにとって地政学的に「敵」になる理由があまりない。今、ロシアにとって、日本は「地域の安定と安全確保のための協力対象」だ
《感想3-2》北方領土問題は日ソ共同宣言の「2島返還」でまとめるべきだ。「4島返還」は、当時、日ソの接近を嫌ったアメリカの主張に日本が従った結果だ。
《感想3-3》なお日露戦争は、日本への攻撃(侵略)でなく、朝鮮半島の支配権をめぐる日ロの衝突だ。

《参考》「日米安保の現在地、周辺国の視線」(『朝日新聞』2020. 7.19)
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