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ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』:イギリスは多人種・多民族の「社会」だ!また「カネのある者」の地区と「カネのない者」の地区への分断!

2023-05-17 12:45:19 | 日記
※ブレイディみかこ(1965-)『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(2019、54歳)
(1)
イギリスに住むブレイディみかこ氏。彼女の中学生(7年生)の息子を中心とするノンフィクション的な話。母親は日本人(イエロー)、父親は白人(ホワイト、アイルランド人)。息子の通う中学校は、「元底辺中学校」(地域にミドルクラスが流入してきて、また校長が進学校にしたいとの方針により学校のランクがあがった)で親の多くが白人だ。(ただし「貧しい白人」と「豊かな白人」に分断されている。)カトリックの進学校的小学校・中学校は多人種だ。(半分が)「イエロー」な息子は白人から差別を受ける。
(1)-2
息子はカトリックの小学校に通っていたが、カトリックの中学校に行かず、地元の「荒れた」元底辺中学校に行く。それを、息子and母親は選択した。
(2)
地区は分断されている。「カネのある者」の地区と「カネのない者」の地区。「カネのない者」の地区出身の中学生がラップで「万国の万引きたちよ、団結せよ」とラップを歌う。《感想1》「万国の労働者、団結せよ」と宣言したコミュニズムは、結局、独裁政治を生み出した。Cf. George Orwell『Animal Farm(動物農場)』(1945)!《感想2》プラトンの「哲人政治」は、「前衛」である「共産党」の独裁国家として歴史的に実現した。(Ex. 旧ソ連、現在の中華人民共和国)恐るべき「哲人政治」!
(3)
金のない家出身の同級生を「貧乏人」と差別する金持ちの中学生。他方で、その金持ちの中学生が「ファッキン・ハンキー」(※東欧の臭い移民野郎)と差別される。《感想》多人種or他民族のイギリス社会では、貧富の差別と民族差別が混在する。
(4)
「エンパシー」は、異なる意見の者の立場を理解するor理解しようとする「能力」。これに対し「シンパシー」は困った者への同情など「感情」のことだ。《感想》「エンパシー」とは、言いかえれば「異なる意見の者の立場を理解する」能力だ。つまり「寛容」であることだ。だが今の「非寛容」な日本!
(4)-2
イギリスでは「善意」が多くの人々に共有されているように思える。Ex. ホームレスへの支援。《感想》①誰でも「ホームレス」になる可能性がありうるとの認識が英国では人々に相当程度、共有されている。日本ではホームレスは「落伍者」「怠け者」「劣等者」とみなされるのが普通だ。(もちろんイギリスでもそう思う者は多い。)②日本は「慈善」(チャリティ)の伝統がない。ただし「炊き出し」の伝統はある。
(5)
イギリスは多人種・多民族の「国」or「社会」だ。《感想》①英語による相互のコミュニケーションが可能であることが「社会」(or「国」)の成立の重要な基礎だと言える。同時に②人々が相互に「人間」であると認め合えるということが「社会」(or「国」)の成立を可能とする。
(6)
イギリスは階級社会だ。カネのない者たちの「公立校」、カネ持ちの「私立校」。《感想1》日本も階級社会になりつつある。「カネ持ち」の成功者あるいはまた東大等卒業者等が、「カネのない者」を公然と「貧乏人」「怠け者」とさげすみ誹謗中傷する。《感想2》日本では「下層上等!下品上等!」と、「カネのない者」が公然と発言することはまずない。
(7)
2010年保守党政権の悪名高き「緊縮財政」政策。(サッチャーの時よりひどい!)食事を食べられない子、制服が古くなり擦り切れた子などを救うのに、教員が自分のカネをだして助ける。あるいは古い制服の修繕・再利用のため、ボランティア作業を組織する。
(7)-2
援助を受ける「貧しい子」にもプライドがあり、彼らを「貧乏」「貧しい」とみんなの前にさらしてはいけない。
(8)
民族に対する差別語:①「チンク」「チンキー」東洋人(Cf. Chinese)。②「パキ」パキスタン人、さらにインド、バングラデシュなど南アジア諸国出身の人々。彼らと外見が似ている中東の人々も指す。③「ニーハオ」中国人への侮蔑。
(9)
女性器切除(FGM)はアフリカ、中東、アジアの一部の国で行われている慣習だ。中学校に転入してきたアフリカ出身の少女は「夏休みにアフリカに帰省してFGMを受けるかもしれない」と思われている。
(10)
「日本経済をバカにしとる!いまは何でも英語と中国語。それさえ喋れたらあとはいらんと思っとう。」日本語を喋れず英語のみ喋る「息子」を育てた母親(ブレイディみかこ)に対し、飲み屋(福岡)にいた管理職の酔客が偉そうに非難する。《感想》偏狭で傲慢なナショナリズム。上から目線の説教調。救われるのは、その管理職の部下たちも、飲み屋の主人も、困った酔客だと思っていることだ。
(11)
息子は体外受精で、母親(ブレイディみかこ)が40歳代の時に生まれた。その事実を息子が小学生高学年の時に告げると、息子は「クールだ。うちの家庭も本物だ(オーセンティック)と思っちゃった」と言った。その理由は「いろいろあるのが当たり前だから」とのこと。《感想》よくできた息子だ!家庭の形態も様々、民族or人種も様々、経済状態も様々、イギリスは「多様性」の国だ。
(12)
ミドルクラスの里親(フォスター・ファミリー)に引き取ってもらい、幸せに育つ里子の女の子!彼女は「下層」階級に属し、父親はDVで母親にひどい怪我をさせる。二人目の父親もDVで母親の連れ子であるその女の子にも暴力をふるい、女の子は施設に保護された。その後、彼女は里子として引き取られた。
(13)
ポリティカル・コレクトネス(PC)の時代には、すでに古めかしくなった差別的言動:〈例1〉ダンスの得意でない黒人の女の子を「ダンスが下手なジャングルのモンキー」と嘲笑すること。〈例2〉母親が日本人で父親が白人であるブレイディみかこの息子について「スリティー・アイズ(吊り上がった目)の母親を持つ半東洋人」と呼ぶこと。
(14)
①息子が「元底辺中学校」に入学して2年目、8年生になった時、中国人が生徒会長になった。これは白人が多い「元底辺中学校」ではすごい出来事だ。②労働者(倉庫・工場・建設現場など)は黄色いベストを着るので、玄関などに黄色いベストが吊るしてあれば、それは労働者の家だ。
(15)
「カトリックの中学校」は公立校でも進学校だ。「元底辺中学校」(公立校)は地元の「荒れている」中学校だ。《感想1》進学校(カトリックの中学校)を選ばないブレイディみかこ氏の「自信」!(小学校はカトリック校だったので)息子はカトリック校に行けるのに、「勢いがある」(生きていく情熱にあふれている)からと息子(子供)を地元の「荒れている」中学校に行かせるとは、生活に苦労しているまわりの下層階級の親からは、「子供の将来を考えないとんでもない選択だ」と思われている。(※評者もそう思う。子供を世の中で成功させるには「孟母三遷」が普通だ。)ブレイディみかこ氏(&その「息子」)は自分を暗黙のうちに「優秀」と思っているのだろう。「優秀」でないor「平凡」と思っている者は、ブレイディみかこ氏のような選択はできない。《感想2》しかし人生1回限り!「やりたいことをやる」のは素晴しい!ブレイディみかこ氏&「息子」にエールを送りたいとも思う。だが「息子」は失敗を覚悟しなければならない。(老人になって、そのような類の選択をして「失敗」したと思うこともありうる。「優秀」でないor「平凡」な者はそうなる可能性が高い。)
(16)
「緑の党」の支持者は「意識高い」系だ。そして「環境問題デモ」に行ける生徒たちは「リッチ・キッズ」、「グッド・キッズ」!「プアでガラの悪いガキ」、「アホで手の付けられないガキ」はデモに参加できない。(中学校がデモ参加を禁止する。)
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