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糸井重里(1948-)「くじらにのまれて」『詩なんか知らないけど』(2000年)大日本図書:「でっかい『ほら話』みたいな詩」とは何か?

2017-12-13 23:51:38 | 日記
 くじらにのまれて Swallowed by a Whale

くじらにのまれて どこへいく Where do you go while you are swalled by a whale?
くじらにのまれて うみをゆく You go forward in the sea while you are swalled by a whale.

いわしや さんまや こざかなどもを A whale draws in sardines, sauries, and little fishes
なみごと うみごと すいこんで together with waves and the sea itself.
もぐって うかんで ねむって おきて It dives into and floats on the sea, and it sleeps and awakes.
こいをしながら みなみへすすむ It advances to the south while it falls in love.

くじらにのまれて たびをする You go on a trip while you are swalled by a whale.
くじらにのまれて うみをゆく You go forward in the sea while you are swalled by a whale.

ぼくは くじらになってゆく You gradually become a whale.
ぼくは くじらは うみをゆく You, that is, a whale goes forward in the sea.

《感想1》
「でっかい『ほら話』みたいな詩を書くと、気持ちいいっす。」と糸井氏が、自己解説する。
ありえない話で《空想》、そして《スケールが大きい》、《愉快》が、「ほら話」の3要素だろう。
くじらに飲まれたら、それが事実なら死ぬのが普通だが、死なないから、この詩は《空想》だ。
クジラは大きいから、この詩は《スケールが大きい》。
そして、人々も、糸井氏も、《愉快》と感じる。
かくて、この「くじらにのまれて」の詩は、「ほら話」だ。

《感想2》
この詩の問いは、「どこへいく」だ。
くじらにのまれて《なにになる》とは問わない。
「くじらにのまれて/なにになる/くじらにのまれて/火星になる」。
このような「ほら話」も可能。

《感想2-2》
君は火星となり、クジラは木っ端みじんに破裂する。
そして地球は、火星と重力で引き合い、一つの星に合体する。
これによって地球は破滅し、地球人類は滅亡する。

《感想2-3》
海は干上がり、「いわしや/さんまや/こざかなども」は、生きたまま干物となる。
「なみ」も「うみ」も、もはや消滅し、クジラが「もぐって/うかんで」泳ぐ海がない。
「ねむって/おきて/こいをしながら/みなみへすすむ」クジラは今や破裂し去り、死んで細かな断片となった。

《感想2-4》
君は、今や巨大な火星だが、星(=物)に意識はなく、君は死体だ。
火星は、君の死体だ。
君にとって、今や君は死んで虚無なのに、同時に、君は火星だ。
かくて火星は虚無だ。

《感想2-5》
《虚無の火星》が、地球を破滅させ、その生命を絶滅したが、だが虚無は、何もないので、「たびをする」こともない。
「うみ」は消滅したので、「うみをゆく」こともできない。

《感想2-6》
火星は有(=存在)だから、《虚無の火星》なるものは、矛盾だ。
火星のように莫大で巨大な矛盾に、しかも死体である虚無に、「ぼくは/なってゆく」。
そして矛盾であり、死体であり、虚無である「ぼく」は、破滅した地球と絶滅した生命を蔽い、一切を虚無にする。

《感想3》
この「クジラにのまれて」火星になる話が、《空想》、《スケールが大きい》、《愉快》の3要素を満たせば、「ほら話」だ。
《空想》(妄想!)で、また《スケールが大きい》(火星!)のは間違いない。
その上で、この話は、人々が《愉快》と思えば、「ほら話」となる。
しかし《くだらない》と人々が思えば、話が書かれた紙の無用物への変質である《ヘドロ》を生み出すだけだ。
たぶん、この話は、《ヘドロ》を生み出した。
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