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松尾正(1954-)「『デカルト的省察』(E・フッサール)と精神分裂病者――他者の〈二重の二重性〉と分裂病者の現出に関する一試論――」(その2):「分裂病者の事物様現出」と「他者」把握の誤謬!

2021-10-28 16:49:04 | 日記
※新田義弘・宇野昌人編『他者の現象学Ⅱ:哲学と精神医学のあいだ』北斗出版、1992年所収

第2節「現象学的精神病理学の根本的な誤謬」
(2)「他者現象の第1の二重性」を見落とす:現象学的精神病理学においては、「他者」が「知覚可能な事物的存在者」に還元されてしまっている!これは「分裂病者の事物様現出」に由来する!
B 現象学的精神病理学は「他者現象の第1の二重性」、つまり「物体としての他者の身体」と「他者によって生きられる身体」がないかのように扱う。これは「根本的な誤謬」だ。
B-2 例えば(ア)ビンスワンガーが「フッサールの意味での本質直観によって、他者の心に生じる出来事の本質を直接的に捉えることができる」と主張する。
(イ)ブランケンブルグは「現象学的還元、つまりエポケーを通じ、原本的な直観によって、他者に固有な超越論的存在様式がわれわれに直接的に現前されうる」と説く。
さらに(ウ)西田哲学に依拠する木村敏は「『気』という自他未分化な領域を通じて、外部知覚される身体という壁を超え、他者における内的現象がそのまま私の内的現象へと翻って自覚的に把握されうる」と「自覚的現象学」を主張する。(65-66頁)
B-2-2  つまり「他者」が「知覚可能な事物的存在者」に還元されてしまっている。これは「他者の他者性」を踏みにじる「独我論的かつ神秘主義的主張」だ。(66頁)
B-2-3  現象学的精神病理学がこうした誤謬に陥った根拠は、「分裂病者の事物様現出」に由来する。(67-68頁)B-2-3-2 「分裂病者の事物様現出」とは、「感情移入しえない」(ビンスワンガー)、「生き生きした接触性の障害」(ミンコフスキー)、「気を通じさせることができない」(木村)などだ。(68頁)

(2)-2 「他者現象の第2の二重性」を見落とす:現象学的精神病理学は、誤って、「匿名的な接触性」を「他者知覚の一般的手段」としてしまった!
B-3 「分裂病者の事物様現出」は「他者現象の第2の二重性」の欠落である。
B-3-2 「他者現象の第2の二重性」とは、「他者は決して明証的には私に与えられぬものとして、私になんらかの仕方で明証的に与えられる」ということ、すなわち「他者とは、新田のいう『原初的差異』(Urdifferenz)として、私自身の究極的な超越論的媒体として、私によって『生きられるアノニミテート』(新田)である」ということだ。(68頁)
B-3-3 「分裂病者の事物様現出」において、普段は「匿名的に生きる」だけの、「匿名的な接触性」、「匿名的な媒体機能」が、「障害態という特別な形で意識に浮上する」。
B-3-3-2  現象学的精神病理学は、誤って、この「匿名的な接触性」を「他者知覚の一般的手段」としてしまった。Ex. 「生き生きした接触性という手段を用いて、分裂病者をその生き生きした接触性の障害として知る」(ミンコフスキー)。「気という手段を用いて、分裂病者とは気が通じないことを知る」(木村)。(68-69頁)
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