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少年H

2013-08-15 | 劇場映画れびゅー
水谷豊&伊藤蘭夫妻が夫婦役で大戦前後の神戸を描いた『少年H』を観てきました。
★★★★

神戸のほのぼの一家の下にも等しく時代の荒波がやってくる。
主人公は子供時代の妹尾河童(本名肇)、お父ちゃんは洋服の仕立屋、お母ちゃんが特に熱心なクリスチャンで、妹が一人。
お母ちゃん手製の毛編みのセーターに大きく頭文字の“H”と書かれていた事から、その当時ハイカラ過ぎるデザインをからかわれて少年のアダ名は“H”。
神戸に住んでいた外国人達との交流が有る仕立屋の父を持ち、一家はクリスチャンって、このまま戦争に突入したらろくな事が起きなさそう…というプロット。

国家に先導されて戦争の狂乱に妄信的になって行く当時の日本人と、表には出さなくても「おかしい」と感じながら暮らしていた人達の対比が、「おかしい」と感じていた側の少年の視点で描かれ、改めてあの戦争は私達日本人にとって一体何だったんだろうと総括する。

しかしこれ妹尾河童の自叙伝なんですよね。
実話だと感じながら観ると、より感慨深い映画なのです。
舞台は神戸という事で、つい十数年前にテレビで見た焼け野原になってしまった姿よりも、さらにずっと前にもっと酷く一面焼け野原となった神戸を見せ付けられ、戦争を知らない世代でも復興というキーワードで日本人の底力を思い出させられる。

見どころはこの一家を演じる4人全員。
H役の少年は戦前の素朴な少年像が良いと思いながら観ていたら、そのままの姿で戦争を挟んで成長をしていくところを6年分幅広く演じ分けている。
6年ってのにはちょっと無理が有るかな?と思う程背が伸びないところが不自然では有るけど、無理は言えないし、代役を使わなくて逆に良かった。

妹役の少女も見た目が成長しないのはご愛嬌として、物語の花として可愛らしい美味しいところを上手く担ってる。

そして、水谷豊&伊藤蘭のリアル夫婦演じる夫婦の仲睦まじい様子が本当に良い。
特に知らない人が見たら関西弁ネイティブかと勘違いしてしまう程に仕上げてきた神戸弁を自在に操り、それで尚且つ芝居は自然。
あ、いやぶっちゃけ水谷豊は喋り口調を区切るようにして方言のボロが出ない施策をしていたけど、あんな喋りの人実際居るし、長台詞もボロを出さずにこなしてたから全然アリ。

戦争を知らない世代なのでクリスチャンが迫害されたという事は想像の範囲内で実際何が有ったのか知らなかったのですが、同盟国だったイタリアにはカトリック意外にも多くのキリスト教宗派の総本山が集中していると言えば通用しなかったのかなぁなんて思いながら観ていました。



少年H(上) (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社
少年H(下) (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社

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